ヒビキの乗る蛮型と、メイアの乗るドレッドが融合合体を遂げてから約一日が経とうとしていた。
あれから敵が再び襲って来ることはなく、一時的ではあるがクルー達につかの間の休息が訪れていた……


そんな最中。
監房に自室をあてがわれていたヒビキは、ベッドに横たわっていた。
なにすることなく、ただぼうっと天井を見つめるだけのヒビキ。
今、彼はある一人の人物に対して考えを巡らせていた。

メイア・ギズボーン

ヒビキの頭の中を占めていたもの、それは彼女のことだった。
ヴァンドレッドへの融合合体に導かれたとき、ペークシスプラグマを通して彼女の想いが確かに伝わってきた。

決して誰の目にも触れられない想いが。
触れることできない深い想いが。

それはまた、ヒビキも同じだった。
彼女の想いが自分に伝わってきたように、恐らく自分の想いも彼女に伝わってしまっていただろう。
その証拠に敵を倒した直後メイアは、
『お前と考えが合うとはな………』
息も途切れ途切れでそう漏らした。ヒビキは、その言葉をはっきりと覚えている。

「くそっ」
忌々しげに吐き捨てる。

自分とは相反している存在だと思っていた彼女。
陰気で嫌味な性格を持った人物で、決して自分とは馬が合うようなことはないと思っていた彼女。

だが、違ったのだ。

自分と彼女は似ている。
そう、それはまるで鏡に映ったもう一人の自分のように。

そんなメイアを見ていると、今まで自己中心的だった自分が急に恥ずかしくなってくる。
「………ったく、ホント嫌な野郎だぜ……」


ヒビキがそう呟いた時、彼の視線の前に突然通信モニターが表示された。
「なんだ、こんなところにいたのかい?」
「アンタ……」
ヒビキは体をベッドから起こすと、そう驚くことなく答える。
彼に話しかけてきた人物、それはガスコーニュだった。

「アンタとは随分なご挨拶だねぇ〜。
 生死を共にしたお仲間に対して、そりゃあないだろう?」
おどけながら、両手を振り上げガスコーニュ。そんな彼女の態度に対して、ヒビキは不機嫌そうに眉を顰めた。
「なにが、お仲間だっ! 胸くそ悪い!!
 おめえら女共と馴れ合ったつもりはねえぞっ!!」
「おおっ、こわっ。
 こりゃまた、かなりのご機嫌斜めと見えるねぇ〜」
ヒビキの射るような睨みをガスコーニュは、しれっとした顔で受け流した。
ただでさえメイアのことで苛ついているのに、このガスコーニュのどこか人をからかうような態度が、ますますヒビキを苛つかせた。
しかし当のガスコーニュは、いつものしたり顔でニコニコとしている。その彼女の表情を見ていると気勢が削がれ、きづくと彼女のペースに巻き込まれてしまう。

「ちっ…………で、いったいこの俺に何の用だ……?」
舌打ちし、苦々しくヒビキ。
彼の言葉にガスコーニュは、何かを思い出したかのように手鼓を打った。
「おおっと、忘れるところだったよ。
 ヒビキ、アンタ、レジのほうまで顔を出しな」
「れじぃ〜?」
途端、ヒビキは嫌そうな顔をする。
「言ったろ? 働かざるもの食うべからずってね。
 アンタには、武器庫の掃除を担当してもらうことにしたから」
「なっにぃーーーっ!!」
「みっちり働いてもらうからね、覚悟しときなよ?」
意地の悪い目でガスコーニュ。
「なんで、この俺が掃除なんかしなきゃなんねえんだっ!?
 だいたい、おめえんところに人はいっぱい居るだろうがよぉ!?」
心底不満そうにヒビキは大声を張る。だがガスコーニュは、
「ほほう?
 そうかい、そうかい。アンタ、断ろうってえのかい?
 別にわたしゃ、構いやしないよ。アンタが断ってもね。
 ……だけど、今後一切の出撃は無しだから」
ガスコーニュは、笑顔でさらりと重大なことを言った。
「な、なんだとぉっ!!」
「そう、お頭に言い聞かされてるんだよ。文句があるなら、直接お頭に言うんだね」
その言葉に、ヒビキはぐっと詰まる。
お頭と言えば、メジェールの海賊「マグノ一家」の長であり、今はこの融合戦艦「ニル・ヴァーナ」の艦長でもあるマグノ・ビバン、その人である。
ヒビキは、マグノのことが大の苦手だった。いや、苦手なのはマグノに限ったわけではないが、彼女の出す雰囲気……貫禄とでも言えばいいのだろうか、彼女から何か圧倒されるものを感じる。
やはり、伊達に海賊の長はやってないということだ。

「さあ、どうする………?」
ガスコーニュの言葉が、ヒビキの耳朶を打つ。そのとき、彼の額から一筋の汗が流れ落ちた。

二者択一。
いや、最初から答えは一つしかなかったのだ。

「ぐっ………わ、わかったよ」
ヒビキは不承不承に頷いた。
「アンタなら、そう言ってくれると思ったよ。
 じゃ、早速レジの方に来てくれ」
「ええっ!? い、今からかっ!?」
「なんだ? 嫌なのかい?」
一瞬、ガスコーニュの眼が険しくなる。
「くそっ。わかった、わかったよ。今行くよ!」
「ははっ。そう、目くじら立てなさんなって。
 掃除が片付いたら、美味いもんでも食わせてやっから」
その言葉にヒビキの眼は大きく見開き、輝いた。
「ホントかっ!?」
「ああ、本当だとも。ただし、ちゃあんと働いたら、だ」
「おっしゃーっ!! まかせとけって!!」
声を張り上げるヒビキの口の端に、涎がこぼれ落ちていた。
そんな彼の様にガスコーニュは苦笑しながら、
「そんじゃ、待ってるよ」
そう言って、通信を切った。そしてヒビキも美味しいものを想像しながら立ち上がると、
意気揚々と監房を後にした。

メイアは一人、旧艦区にある格納庫に居た。
彼女の視線の先には、自分専用のドレッドの姿がある。


(………わからない)

心の中で一人呟く。

なぜ、あのようなことが起こったのか。メイアには知る由もなかった。
ヴァンドレッドへの融合合体のことも理解できることではなかったが、それ以上に理解できない存在が彼女にはあった。

それはメイア本人、自分自身のことだった。

あの合体によって、内に封じ込めてきた想いをさらけ出してしまった自分。
そして、その自分と似た想いを持つ正反対の存在、ヒビキ。
自分と彼は”静と動”の違いこそはあれ、同じ想いを持つ者だった。

強くなりたい

強く、強くなりたかった。何事にも動じない強い心を持ちたかった。
そのためにメイアは、自分の感情を切り捨てた。
感情があると怒りに身を任せ、身をうち滅ぼしてしまうかもしれない。悲しみに、それが打ちひしがれるかもしれない。

だが感情を否定したメイアにとって、ヒビキは、昔自分が切り捨てたそれそのものに見えた。
感情剥き出しにしている彼は、だが決して弱い者ではなかった。
内なる想いをさらけ出し、そしてコインの裏のような存在の彼。
そんな彼に対してメイアはどう振る舞えばいいのか。

「………わからない」
今度は言葉にして表した。

メイアは自分のドレッドに歩み寄り、そっと手に触れる。
そこには、流線型のボディに歪み映し出された彼女の顔があった。
映し出されたそれは、まるで母親からはぐれ迷子になった幼子のような。泣き顔でゆがんだそれに見えた。


その頃、ヒビキはレジの裏にある武器庫でせっせと働いていた。
モップに水をしみ込ませ、それを絞る。そして、床を綺麗に磨き上げる。

最初彼は、この単純極まりない作業を放り投げようとした。しかしガスコーニュの、
『おやおや。
 天下無敵のヒビキ様ともあろうお方が、一度口にしたことを翻そうってえのかい?』
という言葉に、プライドを傷つけられたのだろうか。彼はガスコーニュからモップを半ば奪い取るように手に取ると、黙々と床を磨き始めた。
「うっしゃ、これで終わりだーっ!」
どれほどの時間が経っただろうか。とりあえず、今日の分を終わらせることができたヒビキのどこか嬉しそうな声が上がる。
口では不平は言いつつも、体を動かすことは嫌いではなかった。体を動かしていれば、悩みに捕らわれることはないからだ。

「おらぁー、女ぁーっ!! 終わったぞーっ!!」
ヒビキの声が武器庫に轟き渡る。
その声を聞きつけたのだろうか、どこからともなくガスコーニュの姿が現れた。
「終わったのかい?」
咥えた爪楊枝を上下に振りながらガスコーニュ。
「あったりめえよっ。
 俺はなぁ、やるときはちゃんとやるんだよ!」
顎を突き出し、胸を張りながら持っていたモップをカンと床に打ち鳴らす。
その様は仁王像を想像させなくもないが、如何せんガスコーニュとの体躯に大きな差があるからあまり迫力はなかった。
鼻息の荒いヒビキを横目に、ガスコーニュは辺りを見回した。彼の言葉が本当かどうかを確かめるためだ。

(へえ………)
自信持って言うだけのことはある。ヒビキがモップがけしたところは、床面が鏡のように綺麗に磨き上げられていた。
「ちゃんと仕事はしたからな。
 約束をきっちりと果たしてもらうからなっ!」
「ふふっ。言われなくても、ちゃんと約束は果たすよ」
ヒビキに噛み付くような勢いに、ガスコーニュはゆっくりと嗜める。

「ほらよ」
言いながらガスコーニュは、ヒビキに一枚のカードを手渡した。
「なんだ、これ?
 ……これが美味いもんってえのかっ!?」

ヒビキの声に怒気が含まれた。
彼はてっきりUFO女、つまりディータが持ってきてくれたいわゆる弁当を期待していたのだ。
だが彼の前に差し出されたのは、薄っぺらいカード一枚のみ。彼が怒るのも、ある意味当然と言えた。

「ははっ。これが食いもんなわけないだろう。
 いいかい? それは”トラペザ”で飯を頼むのに必要なものなのさ」

苦笑しながらガスコーニュは説明を始めた。
カフェテリア“トラペザ”は、マグノ一家のクルーが食事をしたり、あるいは身を休め、談笑する憩いの場でもあった。
料理はバイキング形式で好きなものを選べるのだが、そのためには先程ヒビキに渡したカードが必要になってくる。
カードをオーダー機に挿入し、そしてメニューの中から自分の食べたい料理を選んでいく。
言わばカードは食券のようなものだった。
「よくはわかんねぇーが、これがありゃ飯が食えるってわけだな?」
「そういうことだ」
「よっしゃー!!
 んじゃ早速、その“とらぺた”だか、“とらきち”だかなんだかに行ってみるとするかっ!!」
「トラペザだよ………」
ガスコーニュは、冷静にヒビキの間違いを訂正する。
そんな彼女の言葉にも耳を貸さず、ヒビキは掃除用具を持って武器庫を駆け出した。

その彼の後姿を見ながらガスコーニュは、穏やかな笑みを浮かべた。だがそれは一瞬のことで、
「アイツ一人で行っちまいやがったが、大丈夫なんだろうか?」
心配そうに一人ごちた。

「……何をしている」

突然背中から抑揚のない声を投げかけられた。
その声にヒビキの体はびくっと震える。
振り返ってみると、真っ白いパイロット・スーツに身を包み、ブルーの髪に左目を縁取る独特の髪飾り。

メイアであった。

ヒビキはトラペザまで足を運んだのはいいのだが、オーダー機を前にして右往左往していた。
そこに格納庫から戻ってきたメイアと鉢合わせ、ということなのである。

まさか、このような場所で彼女に会うとは夢にも思っていなかった。
「おめぇ………」
一時の沈黙のあと口を開くヒビキだったが、そのあとに続く言葉が出てこない。
それはメイアもまた同じで、お互い口を噤んだままの状態になった。

二人の間に、気まずい沈黙が再び訪れる。
しばらくして、今度それを破ったのはメイアのほうであった。
彼女はヒビキを押しのけるようにオーダー機の前に出ると、慣れた手つきで操作していく。ヒビキはその様子を横でじっと見つめていた。

程なくして、彼女の前には煎れ立てのコーヒーが現れた。
メイアはそれを手に取ると、無言で踵を返した。
「あっ、ちょ、ちょっと待ってくれっ」
去ろうとするメイアの背中に声をかけるヒビキ。メイアは、その声に眉を顰めながら振り返る。
見ると、ヒビキはどこか気まずそうな顔をしていた。彼は、両の指を顔の前で忙しく動かしている。

人とあまり接触したがらないメイアにとって、会話をするという行為自体好きではなかった。
ましてや先程まで悩みの中心に居た人物と、到底会話などできるはずもなかった。

ヒビキが声をかけた理由……それは恐らく自分のことについてだろう。
あまり触れてほしくない話題だった。
いくらお互いがお互いのことを理解したに至ったとしてもだ。

ヒビキが口を開く。
刹那、メイアの体に緊張が駆け抜けた。

「あ、あのよ………
 こ、こいつの使い方………お、教えてくんねえか?
 そ、その………お、女の文字が読めねえんだ………」
オーダー機を指差し、ごにょごにょと呟くヒビキ。

その言葉にメイアの頭の中が一瞬真っ白になった。

見ると、彼は恥ずかしいのだろうか、顔を真っ赤にさせながら頬を掻き、あさっての方向を見つめている。
「………な、何だって?」
メイアはヒビキに問いかける。自分が何を言われたのか、理解できなかったからである。
大きく眼を見開く彼女にからかわれたと思ったのか、ヒビキは、
「お、女文字を、よ、読めないのはあったりめえだろっ! 俺は男なんだからなっ!!」
と、少し癇癪気味の言葉を投げつけた。
今度は別の意味で赤くなっているヒビキ。
彼の態度に、メイアは大きく肩でため息をついた。
そして、大きく深呼吸。

「ふう……
 一回しか教えないからな………」

何を言われるか真剣に悩んだ自分が馬鹿だったと思いながらも、メイアはヒビキにオーダー機の使い方を教え始めた。
それは懇切丁寧とまではいかないものの、それでも以前の二人の間にはなかった光景だった。


オーダーが済み、ヒビキはテーブルに着く。
メイアは彼とは離れたテーブルに腰を下ろしていた。

メジェールの料理にどういうものがあるのかわからない彼は、メイアにどれが美味なのかを尋ねた。
すると彼女は、“カルボナーラ”という料理を勧めてくれた。
……が、ヒビキがオーダーしようとする前に、メイアはこう付け加えた。

『お前の口に合うかどうかはわからんがな………』

この彼女の発言にヒビキは戸惑った。
暗に侮辱にされているのか、はたまた本当に言葉通りの意味なのか。
彼女の表情を伺おうにもすでに身を翻し、テーブルの方へと足を向けていた。
ヒビキはそれ以上の追求を諦め、先程教えてもらった手順を実行していった。

目の前にあるカルボナーラを、ヒビキはじっと見つめる。
湯気がほんのりと立ち上がり、そこからは食欲をそそる良い匂いが漂っていた。

トレイの右隅に置いてあるフォークを手に取り、それを掬い取る。
麺を掬い取ったのはいいのだが、フォークの叉からスルっと零れ落ちてしまった。
もう一度掬い取る。また、零れ落ちる。
それを二、三度繰り返した時、
「ふざんけんなっ!! こんなのどうやって食えばいいんだよっ!!」
ヒビキの堪忍袋の尾が切れてしまった。

その彼の姿を遠巻きに見つめていたメイアは再びため息をつくと、手にしていたコーヒーをテーブルの上に置き、腰を上げた。
「くっそう、あの女めぇ〜! 一杯食わせやがったなぁ〜」
ダンっとテーブルに拳を打ちつけ、ヒビキ。その拳はぷるぷると震え、彼の怒りを表していた。
ヒビキは勢い良く腰を上げると、自分を謀ったであろう人物に鋭い視線を向けた。
「やいっ、女ぁ!! ………って、あ、あれ?」
だが、その張本人は彼の視線の先には居なかった。
ヒビキは、メイアの姿を探そうとキョロキョロと視線を泳がす。

「おいっ」
「のわぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
いきなり後ろから声をかけられたので、ヒビキは素っ頓狂な声を上げた。
「いちいちうるさい奴だな、お前は………」
「お、お前が脅かすからいけないんだろうがっっ!!」
まだ心臓が暴れている状態で怒声を上げるヒビキ。
そんな彼の剣幕に慄きもせず、メイアは彼の前に手を差し出す。
「貸せ………」
「あん?」
ヒビキはメイアの手をまじまじと見つめる。
「………お前が手に持っているものだ」
ヒビキの態度にこめかみを引きつらせながらも、メイアは努めて冷静に答え返した。
「な、なんでだよ………?」
怪訝そうにヒビキ。
なぜ彼女がそのようなことを言ってくるのか、さっぱりわからないからだ。
だが彼のこの態度に、ますますメイアのこめかみが引きつり、そして。
「いいから、さっさと貸せっ!!」
「わ、わかったよっ」
メイアに睨まれ、ヒビキは持っていたフォークを慌てて彼女に手渡した。
メイアはそれをしっかりと受け取ると、彼のテーブルに置かれているカルボナーラの前に進む。
ちょうど、ヒビキの右横隣に立つかたちになる。

「いいか? これは、こうやって食べるものなんだ……」
言いながらメイアは、カルボナーラにフォークを差し込み、それをクルクルと回して麺を絡み取っていく。
ヒビキは腰を曲げ、その様を食い入るように見つめている。

「ほら。こうすれば、麺がフォークから落ちることもないだろう?」
取ってみせたそれをヒビキの前につきつけた。
ここまでされたとき、メイアが食べ方を教えているのだとヒビキは初めて気がついた。
しかしガスコーニュのときと同様、こうやって親身になって教えてもらうような機会が今までなかったので、どうしたらいいかわからず、彼は困惑していた。

一方、ペークシスプラグマの影響なのだろうか、メイアはそのときヒビキの思っていることがなんとなくわかってしまった。
僅かに口の端を上げると、
「……ほら」
言いながら彼女は彼にフォークを差し出した。
ヒビキは、メイアの顔と差し出されたフォークを交互に見つめる。

そして、意を決したように……それに、食いついた。

「なっ!?」
「うっ、うめえっっ!!」
メイアとヒビキの、驚愕と歓喜の声がトラペザに同時に響き渡った。


「ばっ……バカっ!!
 わ、私はフォークを取れって言ったんだぞっ!!
 そ、それを直接食う奴があるかっ!!」
「う、うるせーっ、腹減ってたんだよっ!
 だいたい、おめえはそんなこと一言も言わなかったじゃねーかっ!!」
「だからと言って、直接食う奴があるかっ! この意地汚い奴めっ!!」
「ぬぁんだとっ、この野郎!? もういっぺん言ってみろっ!!」

二人の視線が空中で交わる。それはあたかも火花が空中で散っているかのように見えた。
二人の怒りが、まさに一触即発のそのとき、艦内にけたたましい警報が鳴り響いた。

『敵機接近! その数、六機です!
 ドレット隊各機のパイロットは速やかに戦闘配置についてください!!』

緊張したオペレータの声が、ここトラペザにも響き渡る。
「……どうやら、いがみ合ってる場合じゃなさそうだなっ」
「くっ………!」

ヒビキのどこか余裕めいた表情に苛立つも、敵が近づいてくる事実にメイアは格納庫に向かうために出口へと駆け出した。
そのあとに、もちろんヒビキも続く。

出口まで駆け寄ると、一体いつからそこに居たのだろうか。ドレッドのパイロット、バーネット・オランジェロが立っていた。

「ば、バーネット………」
「………ふぅ〜ん?」
バーネットはニヤニヤとした表情でメイアの顔を見つめ、そして後ろから近づいてくるヒビキと交互に眺める。

「あっ……うっ、こ、これは……………」
メイアはまだ何も問われていないのに、必死になってその言い訳を考えた。
先程からの一連のやり取りを見られていたのだろうかと思うと、居てもたっても居られなくなったのだ。
彼女自身気づいてはいないだろうが、その顔は火を噴き出さんばかりに真っ赤に染まっていた。

だが彼女の動揺をよそにバーネットはニヤニヤとした表情のまま、
「戦闘配置、戦闘配置っと………」
と言いながら、その場を去っていった。
そこに残ったのはメイアと、そして出口まで駆け寄ってきたヒビキだけ。

「何やってんだっ!?
 お前も早くドレッドのところに行けよっ!!」
呆然と立っているメイアに、ヒビキの叱責が飛ぶ。

「………お前のせいだぞ!」
「あん? 何がだよ!?」
「間違いなく誤解されたぞっ!! どうしてくれる!?」
「んなこと知るかっ!!」
ヒビキは声を荒々しく上げると、旧艦区の格納庫目指して全力疾走していった。

「くそっ!」

メイアはその彼の後姿にそう吐き捨てると、彼女もまた格納庫へと走り出した……

to be continued...

後書き

つ、疲れた………(苦笑)

まさかヴァンドレッドのSSを書こうとは、自分でも思いもしなかったです。ハイ。;)
しかもメイアで前後編(爆)。はう〜。
#このあとがきの時点では、後編は1行も書かれていません(ぉ

後編部のネタが本編と重なっていないことを願いつつ。
みなさま、また会いましょう。

BGM: Final Fantasy VIII オーケストラ・バージョンより「Don't be afraid」


作品情報

作者名 KNP
タイトルヴァンドレッド
サブタイトル色褪せない瞬間
タグヴァンドレッド, メイア・ギズボーン, ヒビキ・トカイ, 他
感想投稿数491
感想投稿最終日時2019年04月12日 16時01分24秒

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  • [★★★★★☆] おもしろかった。メイアファンのぼくにはたまらない!!
  • [★★★★★☆] 面白かったです!続きがよみたいです!
  • [★★★★☆☆] ガンバッテください
  • [★★★★★☆] ディータはからまないんすか?
  • [★★★★☆☆] 完成を心待ちにしてます。頑張って! メイアをもっと可愛くするとよりOK
  • [★★★★★☆] すごくおもしろかったです!ぜひとも後編も読みたいです!
  • [★★★★★★] 後編も楽しみにしています。早く後編が見たい!
  • [★★★★★★] ヴァンドレッドのSS、ようやく発見の喜びにプラスして、ヒビキとメイア、しかもガスコーニュもヒビキにかまってるーっ、と大喜びさせてもらいました。男だから女だからではなく互いを意識するヒビキとメイア、続き、楽しみにさせていただきます。
  • [★★★★☆☆] メイアんお
  • [★★★★★☆] ヴァンドレッドサイコ〜
  • [★★★★★☆] 次が速く読みたい
  • [★★★★★☆] ヴァンドレッド 最高です
  • [★★★☆☆☆] もうちょい長く書いてくれ
  • [★★★★★★] スッゲーよかった。早く先が見たい
  • [★★★★★☆] まさか、ヴァンドレッドのSSを読めるとは・・・。しかも、メイア!!嬉しい限りですねっ。ヒビキとのやりとりがいい感じです。お互い相手の事が気になるのに素直になれてない所がらしいです。俺的にはメイアとラヴラヴなのが読みたいですけど、彼女の性格上それは無理でしょうね。 ツラツラとごめんなさい。それでは、後編を心待ちしております。
  • [★★★★★★] ヴァンドレッド最高におもしろいですよね♪
  • [★★★★★☆] メイア可愛い♪
  • [★★★★★★] めっちゃはまりました。がんばってね
  • [★★★★★★] も〜うまいの一言!後編に期待しています!
  • [★★★★★★] 早く次のSSが見たいです・・・頑張ってくださいな
  • [★★★★★★] つづき〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜い!
  • [★★★★★★] 顔を赤くしたメイアがいい! あと、自分もカルボナーラを食べさせてもらいたい(笑)
  • [★★☆☆☆☆] ”間”の取り方をうまくすればもっとよくなると思います
  • [★★★★★☆] 続きが早くよみたいです!!
  • [★★★★★★] メイア最高!!
  • [★★★★★★] 制作に関わった者としSSを書いてくれて嬉しかったッス!!
  • [★★★★☆☆] ぜひとも続き読みたいです
  • [★★★★★☆] バーネットがナイス(笑)
  • [★★★★☆☆] はじめまして。僕としては、あまり戦闘に興味がないもんで、こういった心の微妙な描写をされる、小説を待ってました。願わくば、言葉では表せない気持ちが伝わってくれば最高ですね。あと、ディータとの駆け引きも(爆)
  • [★★★★★★] 雰囲気が出てました。面白かったです。
  • [★★★★★☆] 早く続編を見たいです。がんばってください!
  • [★★★★☆☆] 続きっ
  • [★★★★★☆] メイアは最高ですよね。次回作早く読んでみたいです。
  • [★★★★★★] がんばって下さいね。
  • [★★★★★★] メイアxヒビキLOVE
  • [★★★★☆☆] 結構、気に入りました。次は、もっとラブラブで、お願いします。
  • [★★★★★☆] 二人の行動がなんか微笑ましくってgoodでした。
  • [★★★★★☆] 何かTV版じゃない新鮮味があってGOODでした。
  • [★★★★★★] 話の流れに無理がなく、
  • [★★★★☆☆] 42才のオジサンの僕でも楽しめました。
  • [★★☆☆☆☆] メイアのキャラをもう少し生かした方がいいかもしれません。一応私も書いてますから、一言口を挟みました。申し訳ありません。
  • [★★★★★☆] 出来るだけ早く続編が読みたいですね。
  • [★★★★★☆] 早く次が読みたいです!
  • [★★★★☆☆] 様子の子が抜けていました。
  • [★★★★★★] 心の触れ合いを描くのって、難しいですよね。
  • [★★★★☆☆] メイア、面倒見は良さそうですものね。
  • [★★★★★☆] キャラクターの個性がでていてとてもよかった
  • [★★★★☆☆] おもしろかったで〜
  • [★★★★☆☆] メイア良いッス!続きが気になります〜
  • [★★★★☆☆] 萌えー うおーーーーー
  • [★★★★★☆] メイア、可愛いです
  • [★★★★★★] メイアなんかいいです。こういうの大好きです
  • [★★★★☆☆] 結構いいと思うから次が読みたい
  • [★★★★★☆] がんばって下さい!!
  • [★★★★★☆] バーネットだけでなく、次はジュラも出してメイアをイジメてくれぃ!
  • [★★★★★★] もうさいこー!!!
  • [★☆☆☆☆☆] やめろ
  • [★★★★★☆] メイアッ!
  • [★★★★★★] サイコー
  • [★★★★★★] いやーこういうメイアもいいもんですねー
  • [★★★★★★] やっぱメイヤだよねぇ!!!
  • [★★★★☆☆] おもしぃかった。
  • [★★★★★★] かなり面白かったっす!早く続き読みたいっす!メイア最高っす!
  • [★★★★★★] 面白いです。つづきを早く読みたいです
  • [★★★★★☆] 早く続きが読みたい。期待しています。
  • [★★★★★★] おもしろかったです。
  • [★★★★★★] すごく面白かったです!ヒビキが可愛かったです。
  • [★★★★☆☆] セカンドの小説では、ディータとくっ付きそうなのでメイア押しの自分としては気に入りました。
  • [★★★★★☆] メイアの感情が出ててよかった!
  • [★★★★★★] メイアかわいい
  • [★☆☆☆☆☆] やっぱり、絵があったほうが・・・・・
  • [★★★★☆☆] good!
  • [★★★★☆☆] メイアがかわいい
  • [★★★★☆☆] メイアの意外な一面みたいな感じで良かった。
  • [★★★★☆☆] キャラクターが生き生きしてて実に面白いですね次に期待しています!
  • [★★★★★★] おもしろかったです!ぜひ続編をお願いします。
  • [★★★★★☆] ぜひ!続編を書いてください
  • [★★★★★☆] メイアが一番。
  • [★★★★★☆] メイア良いネ?!
  • [★★★★★★] ヒビキ×メイアの話は好きなのでぜひ、続きを書いてください。
  • [★★★★★★] 早くよみたい!!!!!!!!!!!!!!!!!
  • [★★★★★★] ほかのキャラとの絡みもよろしく
  • [★★★★☆☆] おお!!
  • [★★★★★★] なさそうでありそうなシチュエーションでいいっすねー。
  • [★★★★★☆] 喧嘩するほど仲が良いというけどこれは面白いな〜次もみたい!
  • [★★★★☆☆] 次が早く読みたいです。
  • [★★★★★★] 少し見ただけでおもしろかったです!
  • [★★★☆☆☆] なかなか面白かったです。また機会があったら、お願いします。
  • [★★★★★☆] 好きだ!
  • [★★★★★☆] 字が小さすぎて読みにくかった。
  • [★★★★★★] この2人大好きです。
  • [★★★★★★] こういう話すっごく好きです続きが読みたいです。
  • [★★★★★☆] 早く続きをお願いします!
  • [★★★★★★] ぜひ!続きを
  • [★★★★★★] 見ててすごく面白かったです。
  • [★★★★★☆] 早く続編を書いてください。
  • [★★☆☆☆☆] ディータが出ていたらよかったかな?
  • [★★★★★☆] 絵を添えてほしかったです
  • [★★★★★★] このアニメを見たのはごく最近からでして、いきなり質の良いSSが読めて大変嬉しかったッス
  • [★★★★★★] キャラの性格がよく表現されておりとても面白かったです。
  • [★★★★★☆] 照れるメイアがカワイイ♪
  • [★★★★☆☆] キャラクターの個性がキチンと原作どうりで面白かったです。
  • [★★★★☆☆] ラブラブ希望・・・
  • [★★★★★★] メイア最高ですね!
  • [★★★★★★] キャラクターの個性をよく分かってる
  • [★★★☆☆☆] 続き作って下さい(ぉ
  • [★★★★★★] 早く続きを〜 メイア大好き
  • [★★★★★★] メイア好きの私にとってはたまらなく面白い代物ですな・・・。
  • [★★★★★★] LASTが早く知りたいです
  • [★★★★★★] 普通に面白い
  • [★★★★★★] なんか、2人ともかわいくていいですね。
  • [★★★★★★] おもしろかった!
  • [★★★★☆☆] 後半を早く見たい。
  • [★★★★★★] さりげないバーネットの活躍がいい
  • [★★★☆☆☆] 早く続き書こうよ
  • [★★★★★★] 早く続きを書いてください。メチャ続きが気になります
  • [★★★★★★] ヴァンドレッドのSSha
  • [★★★★★☆] 続きが見たいから早く書いてください
  • [★★★★★★] これをダメとか言うやつの気が知れんな
  • [★★★★★☆] 是非とも続きを^o^
  • [★★★★★★] LOVE・バーネット!!PLITTY・メイア!!好いね二人とも。ディータも出してほしいな〜
  • [★★★☆☆☆] これ、小説かマンガで販売しないんですか?是非販売して(>_<)
  • [★★★★★★] メイアが可愛い(!-!)バーネットもいい味出してますね。vandreadってキャラが特徴的で面白いですね。是非続き書いて下さい。
  • [★★★★★★] メイアも好いけどバーネットも大好き(^^)できることなら「メイア・ディータ・バーネット」&「ヒビキ」の四角関係を読ましてぇ。
  • [★★★★★★] マジで続き書いて下さい(!-!)
  • [★★★★★★] バーネットが、さりげに面白い(^^)
  • [★★★★★★] メイアの反応がメッチャ好い!続き書いて下さい!!!
  • [★★★★★★] これがマンガになって発売されてほしいくらい面白かったさ。
  • [★★★★★☆] どきどきしてしまう
  • [★★★★☆☆] ヒビキがパクつくところは予想外で面白かった♪
  • [★★★★★☆] 個人的にはメイア萌えなのですごくおもしろかったです。
  • [★★★★★★] すっげー読みたい
  • [★★★★☆☆] ヒビキは好きではないがメイヤが好きだ。だからこのやり取りも、どうも持って回ったようで、冗長すぎる。
  • [★★★★★☆] ディータやジュラはいつでるんだろう?
  • [★★★★★★] 続きめっちゃ読みたいです。
  • [★★★★★★] おもしろかったです!!続きに期待してますっ!
  • [★★★★★☆] とても良い作品だと思います
  • [★★★★★★] このままヒビキとメイアのラブストーリーになったら面白いかも
  • [★★★★☆☆] 良かった
  • [★★★★★☆] 場面が目に浮かぶようでした。いいねぇ・・
  • [★★★★★☆] ディータではなくメイアをつかった所がよかった
  • [★★★★★☆] 次回作を楽しみにしています。
  • [★★★★★★] メイアの真っ赤になる姿が見たかったよ〜☆
  • [★★★★★★] 早く続きが見たい
  • [★★★★★★] 自分はこの作品がめっちゃ好きですよ!!!
  • [★★★★★☆] かなり面白かったです。
  • [★★★★☆☆] メイア様LOVE
  • [★★★★☆☆] メイアがいい!
  • [★★★★☆☆] 頑張ってください!!
  • [★★★★★★] サイコーー
  • [★★★★★☆] とても新鮮でした。
  • [★★★★★☆] ・・・・・・・・・早く続きをみせろ〜
  • [★★★★★★] ディータを出してほしい
  • [★★★★★★] メイア最高
  • [★★★★★☆] LOVE!!
  • [★★★★☆☆] 続きはまだかなあ
  • [★★★★★★] 早く続きが読みたい〜〜〜
  • [★★★★★★] 次回作はまだでしょうか?
  • [★★★☆☆☆] 今度の作品もおもしろくしてください。お願いします。
  • [★★★★★★] メイアの慌て具合と、それを必死に取り繕うとする様子がなにか良い感じです。早く続き書いてください。
  • [★★★☆☆☆] すばらしい。
  • [★★★★★★] 最強、あなたは神様だ
  • [★★★★★☆] ぜひ続きを
  • [★★★★★☆] この二人の話はどんどん作ってほしいと思います。応援してます〜。
  • [★★★★★☆] ・・・・・・もう三年もたった・・・・・・・いつになったら出るのだろう・・・・・・
  • [★★★★☆☆] 合体した後の会話も見てみたい
  • [★★★★★★] 続きを見てみたい
  • [★★★★★☆] おもしろカットので続きを見たい
  • [★★★★★★] おもしれ〜〜!
  • [★★★★★☆] 是非この作品の続きを
  • [★★★★★★] 面白かったです。是非続きを。
  • [★★★★★☆] やっぱヴァンドレットは面白い!
  • [★★★★☆☆] メイア大好き〜
  • [★★★★★☆] よかったで〜〜す(!0!
  • [★★★★★★] サイコーっス。めちゃめちゃ続きが気になる。
  • [★★★★☆☆] 早く続きが読みたいです、待ってます!
  • [★★★★★★] 結構おもしろかったっです!!
  • [★★★★☆☆] おもしろいっす!ヴァンドレッド最高!
  • [★★★★★★] ヴァンドレッドサイコー
  • [★★★★★★] 二人のやり取りがとても良い感じでした
  • [★★★★★☆] 次も読みたいです
  • [★★★★★☆] 最高!続き早く読みたいです!
  • [★★★★★★] 面白かったです。
  • [★★★★★☆] キャラがらしくてよい
  • [★★★★★★] 後編楽しみにしてます。
  • [★★★★★☆]
  • [★★★★★☆]
  • [★★★★★★]
  • [★★★★★★] がんばってください!!応援しています
  • [★★★★★☆]
  • [★★★★★★] 早く続きが読みたいです。
  • [★★★★★☆]
  • [★★★★★☆] 続き楽しみにしてます。
  • [★★★★★☆]
  • [★★★☆☆☆]
  • [★★★★★☆]
  • [★★★★★★]
  • [★★★★★☆] メイアはお気に入りのキャラなので続編がすごい楽しみです。頑張って下さい!
  • [★★★★★★] メイアとヒビキのカップリングは念願ですので、是非とも続編をおねがいしますm(__)m