「ただ今より、2回戦を開始いたします!」
司会者が叫んだ。
たちまち各テーブルに座る高校生たちの目の前に早押しボタンが並べられていった。
「あいた〜」
夕子が頭を抱えている。
「まさか、もう二回戦だなんて……」
沙希も意外と言った表情だ。
その中で詩織と間宮がさも当然と言った表情をしている。
「詩織は予想していたの?」
公が尋ねた。
「予想というか……」
詩織が説明した。
「時間的にまだたっぷりとあるし……
この会場を一回戦と食事会だけで押さえるというのも不経済でしょ?」
「そういうこと」
隣から間宮が続けた。
「今日中に十数チームにまで絞るはずだからね、計算上は。
となると、ここで二回戦までやってしまうのが一番効率的だろうから」
「間宮ってこういう読みだけは凄いんだよな……」
佐藤が呟いた。
「ルールを説明します」
司会者が前で言った。
「二回戦は団体戦です。
各テーブルに座っている三チーム九人が一組となります。
まず、全体に早押しクイズを出題します。
正解したテーブルの組が通過クイズにチャレンジします。
通過クイズは一問多答クイズ。答えがたくさんあります。
早押しクイズに正解した人から順に時計回りに答えて貰い、全員が無事正解できればそのグループは全員勝ち抜けです。
通過クイズが全員正解できないときは再び全体の早押しクイズに戻ります。
この時の罰則等は全くありません。
しかし、全体の早押しクイズに不正解したチームは一回休みとなります。そして……」
司会者が一旦言葉を切った。
「全体の早押しクイズに二回不正解すると、そのグループは三チームとも失格となります」
「えぇ〜!!!!!!」
会場内に一斉に悲鳴が起きる。
「さらに、このクイズを通過できるのは……四組、十二チームです」
「シオリン、赤井先生とのクイズ勝負の時みたいに慌てたらだめだかんね」
誤答が許されないルールであることを把握して、夕子が詩織に言った。
「大丈夫、わかってるわよ」
詩織は頷いた。
「それでは、全体クイズです」
司会者が問題を読み始めた。
「問題、スコットランド発祥のスポーツ『カーリング』で、氷の上を滑らせる円盤状の物を何と……」
ピンポーン!!
詩織の目の前のランプがついた。
「八番テーブル!」
司会者が指名した。
「ストーン」
詩織が慎重に答えた。
ピンポンピンポン……
正解のチャイムが鳴り響く。
「幸先よく、通過クイズへの挑戦権を得たのは、きらめき高校藤崎チーム、同じく朝日奈チーム、そして北斗農業のグループ」
司会者がゆっくりと詩織たちのいるテーブルに歩み寄ってきた。
「いい? 二つ以上思い浮かんだら、後の人のことを考えて難しい方を答えるように、いいわね?」
詩織が全体に念を押した。
「そうだね、シオリンさん。後の人のことを考えて答えていかないとね。さすがだな」
間宮が隣で頷いている。
「では、通過クイズです。
日本語の品詞は全部で十種類。それは?」
司会者が問題を読み上げた。
「感動詞」
詩織が答えた。
「正解です。次」
司会者が隣の公を促す。
「連体詞」
「正解です。次」
公も無事正解した。次は沙希だ。
「えっと……名詞」
「正解です。次」
反対側から回答者の顔を映しているカメラは沙希から田代にパーンした。
「助詞」
「正解です。次」
次は佐藤だ。
「助動詞」
「正解です。次」
未緒に順番が回る
「副詞」
「正解です。次」
未緒が無事正解する。
「えっと……代名詞……」
ブ、ブーーーー……
好雄の答えに、ブザーが鳴った。
「残念、……不正解です。
正解は『名詞・動詞・形容詞・形容動詞・連体詞・副詞・接続詞・感動詞・助動詞・助詞』です。
全体クイズに戻ります」
司会者が正面の席に戻っていった。
「わ、悪い……」
好雄が謝った。
「もう! ヨッシーのバカ!」
夕子が隣で怒っている。
「ひなちゃん、ダメよ。団体戦でそう言うこと言っちゃダメなの。
次は私がダメになるかも知れないんだから……ね?」
詩織が夕子に言った。
「うん……それはそうだけど……」
「いいですよ、気にしないで下さい、早乙女くん」
間宮が好雄に言った。
「次に頑張りましょうよ、ね。根性よ!」
沙希が好雄を励ます。
しかし、次の全体クイズを正解したのは東大寺学園だった。
東大寺学園のテーブルには智弁和歌山高校、高知学芸高校が一緒に席に着いている。
「では、通過クイズです。
プロ野球がセ・パ両リーグに分裂したのは昭和25年からですが、その時にセ・パ両リーグに加盟していたチームは全部で十五チーム。
その球団名を当時の名称で愛称名を含めてフルネームで答えて下さい」
「南海ホークス」
「広島カープ」
「読売ジャイアンツ」
「阪急ブレーブス」
「中日ドラゴンズ」
順調に正解していく。
「あ〜ん、これだったら自信あるのに……」
野球大好き少女の沙希が地団駄を踏んでいる。
「へぇ……虹野さん、こんな難しいのがわかるの?」
隣で田代が沙希に尋ねた。
「あ、……私、野球が好きだから……」
沙希が言った。
「国鉄スワローズ」
「大洋ホエールズ」
七人目までが正解した。後二人……
「この辺りまでは出るのよね……こっからが難しいんだ」
沙希が呟いた。
「毎日オリオンズ」
「正解です。最後です」
司会者が最後の一人を指名した。
「阪神タイガース」
ブ、ブーーーー……
ブザーが鳴った。
「え?」
答えた東大寺学園の生徒が妙な顔をしている。
「残念、当時のタイガースは……」
司会者が説明する。
「当時は阪神じゃなくて大阪タイガースなのよね」
沙希が呟いた。
「すっごい、虹野さん!」
隣で公が驚いている。
「他のチーム名もわかるの?」
田代が尋ねた。
「後は……
松竹ロビンス・西日本パイレーツ・西鉄クリッパース・東急フライヤーズ・大映スターズ・近鉄パールス。
これで十五チームね」
「さすが……」
同じテーブルの八人がポカンと口を開けていた。
二回戦は進んでいった。
まず最初に抜けたのは、ラ・サール高校、高松西高校(香川県)、館林女子高校(群馬県)のグループだった。
「三チームは明日の三回戦にジャストミーーーーーーートッ!!!」
司会者が絶叫する。三チームが通過を決め、通過席に移動していった。
そして、東大寺学園、智弁和歌山、高知学芸が二度目の挑戦で通過を決めた。
この間に詩織たちは田代の正解で二度目の挑戦権を得たが、通過クイズは佐藤が不正解して失敗した。
「問題、日本の都道府県名をアルファベット順に並べたとき最初に来るのは愛知県、では最……」
ピンポーン
未緒がボタンを押した。
「八番テーブル、きらめき高校!」
司会者が指名する。
「山梨県」
未緒が答えた。
(よし、正解……)
間宮と詩織が同じように思いガッツポーズをしかけたときだった。
ブ、ブーーー……
「え??」
間宮が思わず声を上げた。
「アルファベット順なら最後は山梨でしょう?」
詩織も不思議そうにしていた。
「では、最初から二番目はどこでしょう、と言う問題でした。正解は秋田県です」
司会者が言った。
×が一つついた。
一回休み……そして、もう一度早押しクイズに不正解すると失格である。
きらめき高校の二チーム、そして北斗農業、絶体絶命である……
作品情報
作者名 | ハマムラ |
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タイトル | 栄光への道 第3部 全国大会編 |
サブタイトル | 06:「難問、二回戦」 |
タグ | ときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 第3部 全国大会編, 藤崎詩織, 主人公, 早乙女好雄, 朝日奈夕子 |
感想投稿数 | 26 |
感想投稿最終日時 | 2019年04月11日 04時14分07秒 |
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