「香織、今日は入学式でしょ。早く起きなさい」
ううん‥‥‥あたしを揺するのは誰‥‥むにゃ
「香織、香織ったら‥‥」
ううん‥‥‥
「いい加減に‥‥‥しなさいっ!」
包んでいてくれたあったかい物が無くなる感じに目を覚ました。
「きゃっ」
びっくりして見回すと、かけ布団をもったお母さんが、ちょっとコワイ顔をしてあたしを見ていた。
「あ‥‥お、おはよう。お母さん」
「‥‥‥おはよう」
あ、お母さん‥‥これは怒ってる‥‥のかな。
「き、今日も綺麗ね。ヘアバンドもとっても似合っててステキ」
あたしの冗談、いや一応本心なんだけど、それにも黙っている。あ、やっぱり怒ってる?
「今日は入学式だっていうのに‥‥いつまで寝ているの。あなたは」
やれやれという顔。あ、呆れてるのね。なるほど。
「ごめんなさぁい」
「‥‥‥まったく。もうお父さんも起きてご飯食べてるから、早くいらっしゃいよ」
あたしにかけ布団を押し付けて、呆れた顔で出て行ってしまった。
出来の悪い娘でごめんなさい。お母さん。
と、とりあえず心の中で謝ったところで、あたしは掛かっている新しい制服を見た。
憧れのセーラー服。
胸の大きな黄色のリボンが特徴の可愛らしい制服。
今日からあたしが通う、きらめき高校の制服。
期待もある。不安もある。でも、お母さんとお父さんが通っていた学校。
今の二人を見ていれば、なんとなくわかる。
楽しい学校だったっていう事が。
何か楽しい事が起こりそうな予感に、胸の鼓動を高鳴らせ、制服を手に取った。

「おはようー」
ダイニングルームのドアを開けると同時に、明るく言った。
「あ、お姉ちゃん、おはよう」
妹の紗織があたしに負けずに明るく答えた。
紗織はお母さんみたいにロングヘアー。私もロングにしておけば良かったかな。
ロングの方が、ヘアバンド似合いそうだし。でも、ま、これから伸ばせばいいか。
なぜか、お父さんとお母さんは、私を無言でじーっと見ている。
「どうしたの? お父さん」
「あ、い、いや‥‥‥詩織そっくりだ。と思ってな」
お父さんがあたしを見て驚いたように言った。
いまだにお母さんを名前で呼んでいる。
「思い出すわね‥‥」
お母さんが、懐かしそうな目でみている。
「俺達の時代と制服変わってないってのもスゴイけどな」
「そうね。当時私も結構気に入ってたの」
あ、駄目だこりゃ。二人ともタイムスリップ中みたいね。
「いいな。私もその制服着たい」
紗織が羨ましそうにあたしをずーっとみている。
紗織は今年で中学三年生。ブレザーの制服はさすがに二年着ているだけあって初々しさはあまりない。でも、あたしも去年まではあれだった。
「羨ましかったら来年きらめき高校に受かってみなさい。あたしは誰の挑戦でも受けるわ」
紗織なら、たぶん楽勝で入って来れるかもしれない。
あたしの場合は‥‥‥楽勝とまでは行かないまでも、安全圏ではあった。
「挑戦はいいけど、時間は大丈夫なのか?」
お父さんが過去から戻ってきたらしく、時計を見ながら言った。
「えっ、もうこんな時間? たいへん‥‥お母さんご飯ご飯」
「はいはい‥‥‥」
呆れた風な声を出しながらも、優しい微笑み。
お母さんまだまだ若くてうらやましい。うん。
ヘアバンドもたまに共用して使えるほどだもんね。
「ね‥‥‥きらめき高校って‥‥どんな学校だった?」
あたしは中学の時に志望校を決めた時から何度も聞いた事を、もう一度聞いた。
受験の時に行った時に、校門横にあった大きな樹が、物凄く印象に残っている。
なんでも、なんか伝説とかがある樹らしいけど‥‥‥
「‥‥あとは自分の目でしっかりと確かめてらっしゃい」
お母さんが、ニッコリ笑いながら言った。
「そうだ。もう言うべきことはみんな言った。あとはお前次第だ」
お父さんは、一つ頷いてから言った。
「私も来年行くから、待っててね。お姉ちゃん」
「はいはい。それじゃみなさんの御期待どおり、私はこれからきらめき高校に行ってきます」
あたしは立ち上がって、元気良く言ってから時計をチラリと見た。
「いやぁ! もうこんな時間っ」
あわてて鞄を掴んで玄関に走り、あわてて靴を履いた。
今日からしばらくの間よろしくね。新しい私の靴。
「それじゃ、行ってきま〜す」
返事を待たずに、玄関から飛び出した。
入学式早々から学校に走っていくハメになるなんて、あたしも何やってんだか。
「あ、お姉ちゃん待ってよ。途中まで一緒に行こうよ」
紗織もあわてて追いかけてきた。
こーいう所に限っては、似た者姉妹だこと。
走りながら春色の風を感じる。
あたしもこれから高校一年生。よろしくね。
暖かい風のささやきに答えるように、空を見上げてそう思った。

「やれやれ、香織も今日から高校一年生か‥‥」
俺は、朝の混乱すぎたダイニングルームで、お茶をすすっていた。
「あの子、大丈夫かしら」
詩織が心配そうにつぶやく。
「大丈夫だって。元気な子だから」
誰に似たのか、小さいころからの詩織と違って、とにかく元気な子だ。
その変わり、どちらかというと、紗織の方が性格的に詩織に良く似ている。
容姿は二人とも詩織似だ。
「そうだといいんだけど‥‥‥」
苦笑して、俺を見た。
「香織‥‥‥あの時の香織ちゃんにそっくりだったな。制服姿見て少し驚いたよ」
「そうよね。私もびっくりしたわ」
「‥‥‥香織も、あの学校の伝説を聞かされるのかな」
「もちろんよ。女の子はそういう事には敏感なんだから」
詩織の笑顔を見るたびに思い出す。
赤茶けた思い出の数々。
あの時から、時はかなり経ったが、今でも昨日のように思い出せる。
もう俺は二度と戻れない時間だけど、今、娘がその時間とは違う‥‥しかし、同じ時間の中に入ろうとしている。
これから、どんな思い出を築いていくのか楽しみだ。
「あなた‥‥ところで時間はいいのかしら?」
「えっ!」
俺は時計を見た。
「げげっ! もうこんな時間だ。今日は仕事の打ち合わせがあるっていうのに」
思わず立ち上がってしまった。
「香織‥‥‥あなたに似たのね」
詩織が、苦笑を浮かべながら俺を見ていた。

Fin

後書き

来年になったらやろうかと思っているシリーズ
暴走が限度を越えてしまったのかもしれない(^^;

ときめきメモリアル2 とかって感じでゴーゴー(笑 バカ?(^^;>自分

しょっぱなから、しょうもない文章だっていうのもなんですね(^^;
香織の一人称部分はやたらと書いてて恥ずかしかったんですが(^^;
内容はともかく、女性の一人称っていうのは、ちょっと別の意味で恥ずかしい。
いや、もうTOKI_シリーズで暴走している自分がいまさら何を恥ずかしがる? って感じなんですけど(^^;

おまけ

伊集院レイ 学校理事
科学の紐緒結奈先生。
榊 良子(旧姓 笠間良子)
香織・ウェイストン (旧姓 紐緒香織)
彩・ウェイストン (香織(主)と同級生。香織(ウェイストン)の娘)
領崎 翔 (香織が最初に出会う同級生の男子)

などなど‥‥が出てくるかどうかはわかりません(笑
これを初めて見る人は、誰だそりゃ。知らんぞというのが多いですね(笑)
暴走を越えた暴走で、もう誰もついてこれないかも(笑
もともとついて来ている人いなかったりして(笑 可能性90%くらい


作品情報

作者名 じんざ
タイトルこれからの詩
サブタイトル予感 〜憧れの入学式〜
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/これからの詩, 藤崎詩織
感想投稿数42
感想投稿最終日時2019年04月13日 01時53分56秒

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コメント一覧(クリックで開閉します)

  • [★★★★★★] 親の性格がうまいことミックスされてますねぇ
  • [★★★★★★] 伝説が親から子へと受け継がれていくんでしょうね〜
  • [★★★★★☆] 次に期待しています。
  • [★★★★★★] これからも、期待をしています。
  • [★★★★☆☆] 2で出てくる笠間良子との関係を知りたいかも?
  • [★☆☆☆☆☆]
  • [★★★★★★] 香織一人称と言うのが、新鮮ですね。(^^♪ もしもこの設定で「ときめきメモリアル4」を作ったら・・・欲しい!絶対に買う!!・・・作者様に負けずに暴走してしまいました。(滝汗)