あたしはあこがれの高校の門に立っている。

私立きらめき高校。

桜が風に乗って、あたしの肩にひらりと落ちた。
新しい制服に桜なんて、入学式って感じよね。
「きらめき高校‥‥新しい学校‥‥‥」
なにかまぶしく感じる。

‥‥って、さっきまで走ってたからやたら疲れたわ。ふう。
でも、その甲斐あってちゃんと間に合った。結果オーライよ。
次々とあたしの横を通っていく、あたしと同じ新入生。
この中に、あたしの友達になる人は居るのかな。
あたしが好きになる人もいるのかな‥‥‥
いけないいけない、何言ってるんだろう。あたしは。

もう一度門から学校を見た。
校門横の大きい樹が目に入る。
本当に大きい樹。ずいぶん古い樹なのね。きっと。
感心してたら、背後からいきなり、
「あなた、こんな所でつったっていられたら邪魔よ」
と、そういう声が聞こえた。
声の調子からして、ただものじゃないわね。
それより、入学早々、おかしな事言われたのがイヤだった。
「誰?」
振り返った時、あたしは一瞬固まった。

なんて理知的な瞳。
でも、燃えるような何かがある‥‥‥
それに‥‥とっても綺麗。
スタイルもすらっとしていて、とっても大人っぽい‥‥‥って、どうみても大人じゃない。
馬鹿かしらあたし。
髪で顔半分を隠したその女の人は、あたしを見るなり、ふっと眼差しをやわらげた。
「あなた‥‥‥」
さっきの声とは違う、ちょっと優しい声。一体どーいう人なんだろう。この人。
「はい‥‥なんでしょう?」
女の人の美しさに、ちょっと戸惑ってしまった。
「もしかしてあなた‥‥‥ …香織という名前ではなくて?」
え? なんであたしの名前知ってるの?
「は、はい‥‥」
あたしは、この人は知らない。こんな綺麗な人に知り合いはいない。
お母さん以外はね。
「やっぱり。そうじゃないかと思っていたわ」
「あの‥‥‥どちらさまでしょうか?」
「あ、そうね。紹介がまだだったわ。私は紐緒結奈。この学校の科学教師よ」
え? 先生? この学校の?
「あ‥‥‥それは、失礼しました」
「フフフ‥‥‥あなた。お母さんにそっくりね」
「え? お母さんを知っているんですか?」
名前を知られているだけでも驚いてたのに、お母さんまで知ってるなんて。
「当然よ。この学校の同級生だったんだから」
「え? お母さんの同級生?‥‥‥と言うことは、お父さんも?」
お母さんの同級生にしては、ずいぶん若く見える。お母さんといい勝負じゃないかな。
「もちろん。知っているわ」
そうだったんだ。知らなかった。こんな綺麗な人が同級生だったなんて‥‥‥
そんな事、一言も言ってくれなかった。帰ったら聞いてみようっと。
お母さんとお父さん、びっくりするかな。


「クシュンッ」
洗濯物を干していた詩織は、小さなクシャミをして
持っていた洗濯物を落としそうになっていた。
「いやだわ‥‥風邪かしら」
そう言いながらも、春の風の心地よさに目を細めた。
「あ‥‥‥そういえば、紐緒さんも今日からきらめきの先生になるって言ってたわね。
 もう香織と会ったかしらね‥‥‥ふふふっ」


「ヘックション!」
俺はでかいくしゃみをしてしまった。
「大丈夫かね?」
打ち合わせ先の人が心配そうに聞いてきたほどだ。
「ええ、大丈夫です」
まいったな。風邪かな。
あ‥‥‥、そういうえば、紐緒さんが今日からきらめきで科学の先生として入るって言ってたよな。
もう香織とは会ったのかな。
紐緒さんがやる科学の授業か。興味あるなぁ‥‥
今度、香織に聞いてみるか。

「それより、入学式はもうじきよ。早く行きなさい」
「あ、はい‥‥‥それじゃ、先生。お先に失礼します」
ちょっと変わった感じの先生だけど、なんかいい先生みたいね。
これは、科学の授業が楽しみになってきたな。
さぁって、いよいよ入学式。
これからのあたしの学校。きらめき高校。よろしくねっ。


クラス編成表を見ていた。
うーん、あたしの名前名前‥‥‥っと。
一年A組‥‥‥‥‥無い。
一年B組‥‥‥‥‥‥無い。
一年C組‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥あ、あった。
…香織
うん、確かにあたしの名前だ。
C組か‥‥‥
当然だけど、あたしの隣の名前は知らない。
どんな子なんだろう。
友達になれるかな。
そんな期待で胸が一杯。
他にどんな子がいるのかな‥‥‥
「あ‥‥‥外人?」
ずーっと見ていった名前の欄に、カタカナが見えて、あたしはびっくりした。
彩・ウェイストン
外人かな。それとも日系?
「あなた‥‥‥このクラス?」
いきなり声をかけられて、びっくりした。
振り向いて、もっとびっくりした。
綺麗な赤毛。染めたのとは全然違う、本当に綺麗な赤。
長く流れて、お母さんや紗織みたいに綺麗。
それに‥‥‥とっても綺麗な顔立ち。
日本人じゃないみたい‥‥‥あっ、もしかして‥‥この人が?
それにしても‥‥‥どこか良く見かけるような雰囲気‥‥えーと‥‥‥
ちょっと考えて、頭に電球がついたような感じになった。
あっ! ‥‥‥あたし‥‥だ‥‥‥
今日、朝鏡で見て来たあたしの顔よりは、ずっとずっと綺麗。
でも、雰囲気がなんとなくあたしに似てる。
自惚れじゃなくて、ほんとにそう見える。
なんとなくだけどね。
「え‥‥‥う、うん‥‥そうだけど」
あたしとした事が、少しびっくりしていて動揺してる。
「そう、良かった。よろしくね。私、彩・ウェイストンっていうの」
ニッコリ笑った顔が、とっても可愛い。それに、とっても優しそうな感じ。
「えっ! あなたがあの彩さん?」
名前の欄を指さした。
「ええ、お母さんが日本人なんだけど、お父さんはアメリカ人なの」
「そうなんだ」
どうりで綺麗な顔立ちしてる訳ね。
その彩さんが、あたしをじーっと見つめている。え? あたしの顔、なんかついてる?
「どうしたの?」
「あ‥‥‥sorry。あなたがお母さんに良く似ているものだから‥‥つい」
「そうなの‥‥‥
 あっ、ごめんなさい。あたし紹介まだだったね。あたし…香織っていうの。よろしくね」
名前の自分のところの欄を指さした。
「香織さん‥‥‥」
そうつぶやくように言ってから、また無言になった。どうしちゃったんだろう。
「わたしのお母さんの名前も、香織っていうの」
彩さんはニッコリ笑った。
「ええ!? そ、そうなんだ」
あたしの名前をもった、あたしに良く似た人。見てみたいな。
「‥‥‥余計な事言っちゃったね‥‥これからよろしくね。香織さん」
「香織でいいわ」
「はい‥‥‥香織さ‥‥香織」
「こっちこそよろしくね。彩さん」
「わたしも「さん」はいらないわ」
あたし達は、顔を見合わせて笑いあった。
なんか凄く気が合いそう。
「じゃ、彩、クラスに行こう」
「うん」
さっそく出来た友達。
うれしいな。
綺麗で、優しそうで、どこか親近感のある友達。
日系だけど、そんな事関係無い。
一緒に頑張ろうねっ。



「紗織ちゃん、お姉さんがきらめき高校なんだって?」
わたしに、友達の和子が話しかけてきた。
「うん、わたしも来年になったら行こうと思って」
「そうなんだ。紗織ちゃんなら大丈夫よ。きっと」
天真爛漫を絵に書いたような笑顔に、わたしは頷いた。
お姉ちゃんの制服姿、結構憧れだった。
お母さんの昔の写真にそっくりだったのも羨ましい。
わたしも来年、あの制服を着たら、そうなれるかな。
それまで、がんばらなくちゃ。

Fin

後書き

新暴走シリーズ
まった自分でも何やってんだかわからないです(^^;
ときめも枠から完全にはみ出してしまったようです。 ぅぅ

それにしても、女性キャラの一人称はやっぱり何度やっても慣れないですね(^^;
恥ずかしすぎる。
でも、結構ノリながら書いている自分って一体(T_T)

なんか一から作っていくのって、わりとたいへんでした。
もっとも、基礎世界があってこそなんですが。
詩織、香織、紗織
親子三人集合CGとかやりたい‥‥‥けど、言うだけになるかもしれない(^^;
有言不実行(^^;
いや、でも来年になったら‥‥やります。ええ
やれやれ‥‥‥とんだ暴走人間ですね(^^;>自分


作品情報

作者名 じんざ
タイトルこれからの詩
サブタイトル出会い 〜彩・ウェイストン〜
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/これからの詩, 藤崎詩織
感想投稿数36
感想投稿最終日時2019年04月09日 08時19分26秒

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  • [★★★★★★] このシリーズ最高です!(^^)! 初めて「ときメモ1」をプレイした時のような胸の高鳴りを感じます。 作者様、どんどん暴走して下さい!お供致します!(笑)