筆者 あみ〜ご の作品一覧 [語り部の館]

どこにでもあるような、ある秋の一日———その日、俺はいつものように通い慣れた本屋の中に入っていった。
カウンターで満面の笑みを浮かべているのは、俺の妹藤堂加奈。二年半前、遅ればせながら高校を卒業した彼女がこの小さな本屋に就職して以来、休みの度に欠かさずここを訪れるのが俺、藤堂隆道の習慣になっている。
加奈は生まれつき腎臓が悪く、何度も「その時」の宣告を医者にされていたのだが、いよいよ後がなくなった時に俺の腎臓を移植することで一命を取り留め、今ではすっかり普通の生活を送れるようになっていたのだ。
だから余計心配なんだけど、そんな俺の心配なんか吹き飛ばすくらい、加奈はいつも元気いっぱいに頑張っていた。
(初掲載：2000年02月17日)

「ありがとうございました」
いつものように、店を出ていくお客さんに頭を下げると、ホッと一息。
今日もお店のお手伝いをしていた私は、本日最後のお客さんが帰った後のテーブルの上を片づけていた。
すると、キッチンの方からお兄ちゃんが、眉間に皺を寄せて何だか怖い顔して出てきた‥‥
(初掲載：1999年02月05日)