「はい、じゃこちらの用紙です。必要事項を記入して提出して下さい」
「申し込みは必ず三人一組でお願いします」
「ちょ、ちょっと! ちゃんと順番に並んでよ!」
放課後の社会科教室。
詩織は公、夕子と共に生徒達のクイズ大会申し込みの事前手続きにおわれていた。
それは……数日前のことだった。
「と、いうわけで俺が担当することになったが……」
赤井は放課後、詩織・夕子・公を社会科教室に呼んで話し始めた。
「参加希望者には全員誓約書を出してもらう。
その後は各自の自覚に任せようと思うんだが、どうだ?」
「誓約書?」
公が聞き返した。
「ま、形式的なもんだと思ってくれ。
一応、理事長の許可があるとはいえ、無届けってわけにもいかんだろうからな。
それと、せっかく参加するからには上位を狙いたいんだろ?」
詩織が頷く。
「だからといって、お前達だけ特別扱いは出来ないから、希望者全員を対象に地区予選突破のノウハウを伝授する。
希望者は誓約書を提出するときに一緒に申し込んで貰おう」
三人は赤井のいうことを理解し、頷いた。
「さて、となると……」
赤井は言葉を続けた。
「この手続きを受け付けるのはお前達に任せたからな」
「えぇ!!!!」
三人は思わず絶句した。
「こんなことしてる暇はないんだけどな……」
詩織は黙々と受付作業をしながらも夕子に言った。
「どったの? シオリン」
「あのね、まだ、三人目のメンバーが決まってないの」
詩織が夕子にそう返事をしたを見て公が言った。
「結構、みんな怖じ気づいちゃって……
詩織と組んで足をひっぱることになったら格好がつかないってことらしい」
「そう言うひなちゃんは誰と組むの?」
詩織と決勝をする、と宣言した夕子が誰と組むのか詩織は興味があった。
(一人は……早乙女君かな? 結構いいコンビだもんね。もう一人は……誰かな?)
「へっへ〜さぁて、だれでしょう? 藤崎さん、答えをどうぞ!」
夕子はクイズっぽく詩織に聞き返した。
「ん〜とねぇ……古式さん」
「ブ、ブー!」
「違うの?」
ゆかりと夕子が仲がいいのは校内でも有名である。
もっとも、おっとりとマイペースのゆかりと、サクサク行動する夕子の関係が良好なのはきらめき高校の七不思議の一つなのだが……。
「ゆかりはねぇ……」
夕子がそう言いかけたとき、教室に大勢の生徒が入ってきた。
その先頭にいたのは……。
「やぁ、庶民の諸君!」
「なんだよ、伊集院か。何のようだ?」
入ってきた男に公がぶっきらぼうに答えた。
「その、申込用紙とやらを僕にも一つくれないか」
レイは机の上の誓約書を指さして言った。
「お前も出るのか?」
「庶民のくだらんお遊びに付き合う趣味はないが……今回は特別事情があってね」
「そうなんですよ〜」
その後ろにいたのは古式ゆかりだった。
「私、是非、高校生クイズと申すものに参加をしてみたいのですが〜、あいにく一緒に出てくれる方がおりませんで……
そうしましたら、伊集院のお爺様がレイと出ればよい、と仰って下さいまして……」
「僕は別にこんなものどうだっていいんだ。しかし、ゆかりくんがどうしてもと言うのでな」
「本当は自分が出たかったんじゃないのか?」
公がレイをからかう。
「何か言ったかね?」
「いや、別に……でも、お前ならわざわざ誓約書なんて出さなくっても……」
「わが伊集院家の家訓では、学内では一生徒であって、特別扱いはまかりならんということなのだよ」
「じゃ、お前専用の更衣室とか、私設部はなんなんだよ」
公が毒づく。
「あ、あれは仕方がないのです〜、伊集院さんは殿方と着替えることが出来ませんから……。
何しろ実は伊集院さんは……」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ゆかりの言葉を遮るようにレイが叫んだ。
「な、なんだよ。突然」
「失敬、ちょっとね。ゴホン、ゴホン!」
誤魔化す伊集院に公は尋ねた。
「で、三人目のメンバーは誰なんだ?」
「教えて欲しいか。ならば、教えてやろう」
「それは私ですわ。オーホッホッホ!」
後ろにいた男子生徒の中をかき分けるように鏡魅羅が出てきた。
「伊集院さんのようなすてきな方と組めるのはこの私をおいて他にはありませんもの。
ね、みんな?」
「はい! 鏡さん!」
後ろにいた親衛隊が一斉に答えた。
「なるほど、これね。誓約書。仕方ないわね。みんなも貰っておきなさい。
いいこと、予選では私を手助けするのよ。いいわね、みんな?」
「はい! 鏡さん!」
「すげ〜、あれだけの人数で参加するのか?」
公が呟いていた。
嵐のようにレイとゆかり、魅羅、さらに魅羅の親衛隊が出ていった後、教室は静かになった。
「でも、本当にどうすんだ? もう一人……」
「うん……昨日はメグに会ってないから今日会ったら聞いてみようと思うの。
メグと一緒でもいいかな?」
詩織が公に同意を求めた。
「詩織がいいんなら、俺はいいよ」
「だったら、後でメグに聞いてみるね」
それから、公が詩織にすがるように言った。
「ところでさ、詩織……」
「何? 公くん」
「トイレ行ってきていいかな?」
「もう、やだ。勝手に行きなさいよ」
「じゃ、ちょっと行って来るね」
公はそう言って教室を出ていった。
ドシン!
「あいた!」
「キャッ!」
教室を出た廊下を曲がったところで公は誰かにぶつかった。
「ご、ごめんなさぁい!」
倒れていたのは緑の髪を頭の上で左右に輪を作るようにまとめている少女だった。
「君……確か……」
「ご、ごめんなさい。それじゃ!」
公の言葉を無視して少女は公が来た廊下を走っていった。
「あの子……確か……??」
詩織が夕子と二人でいるところに美樹原愛が入ってきた。
「あ、メグ! 丁度良かった」
詩織が愛に声を掛けた。
「あ、詩織ちゃん。私も参加しようかなと思って申込用紙もらいに来たんだ」
愛の言葉に詩織が戸惑った。
「一緒に出る人決まってるの?」
「うん、もうすぐ来ると思うんだけど……」
(はぁ……メグもだめか……)
詩織は落胆した。
そこへ入ってきた少女がいた。
「ゴッメーン……愛ちゃん、遅くなっちゃった」
「あ、見晴ちゃん……私も今来たばかりよ」
見晴と呼ばれた少女は部屋に入ってくると。申込用紙を手に取った。
「これに書けばいいんですか?」
(あ!)
詩織は声を聞いて思い出した。
「あなた……この前の時に問題読んでいた人?」
「あ、わかっちゃいました?」
「うん、声でわかった」
見晴は人差し指でほっぺをポリポリ書きながら言った。
「あれを見て思ったんですよね。藤崎さんって凄いなって。
で、クラスが一緒の愛ちゃんに一緒に出ようって声かけたんです」
「そうなんだ……メグ、頑張ってね」
「うん、詩織ちゃんも頑張ってね」
メンバーがいなくて詩織が困っているとは知らない愛は詩織ににっこりと笑って言った。
「ところで……後の一人は?」
詩織が怪訝そうに言った。
「それが……」
愛が言おうとしたとき、もう一人少女が入ってきた。
「あ、ここだったの……手続きは早く済ませないとね」
「ひ、紐緒さん……」
詩織は入ってきた少女に言った。
「もしかして……もう一人って……紐緒さん?」
「そうなんです」
愛が申込用紙を記入しながら言った。隣で見晴が説明する。
「私達って典型的な文系だから……理系の問題って判らないし……
だから、思い切って紐緒さんにお願いしたら、喜んで参加してくれるみたいで……」
「喜んで? 語弊があるわ。
私はクイズなんてばかばかしいことはどうでもいいのよ。
『人間の知識と反射神経及び体力の向上に寄与するための総合的競技の方向性についての一考察』
と言うテーマで研究するにはなかなかいいと思わない?」
「え、ええ……そうかもね……」
結奈の言葉に詩織がちょっとたじろいだ。
「それに私が支配する予定の人民達に私の知識の偉大さを知らしめる良い機会なのよ」
延々と説明する結奈の横では見晴が人選を誤ったか、と半分後悔しているような様子だった。
一方の詩織は、
(メグもだめか……いよいよ、メンバーが足りないわ……どうしようかしら……)
こちらは別の意味で人選に頭を痛めていた。
作品情報
作者名 | ハマムラ |
---|---|
タイトル | 栄光への道 第2部 関東大会編 |
サブタイトル | 01:「集まる参加者」 |
タグ | ときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 第2部 関東大会編, 藤崎詩織, 主人公, 朝日奈夕子 |
感想投稿数 | 36 |
感想投稿最終日時 | 2019年04月09日 03時43分54秒 |
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- [★★★★★★] きらめき高校全生徒を巻き込んだ壮大なものを感じる。続きを読むのをすごい楽しみにしている。