全国大会までの日はアッという間に過ぎていった。


大会前日の午後、参加者達はテレビ局の近くのホテルに集合することになっていた。
きらめき高校から参加する二組六人は荷物を持ってホテルの前についた。

「ふぅ……ここか……」
公が表の看板を見上げた。
大きく『全国高等学校クイズ選手権御一行様』と書かれている。

「えっと……鳳凰の間だったよね……」
詩織が参加要綱とホテルの案内板と見比べながら言った。
「三十五階か、……ソッコーで行こうよ」
夕子が叫んで一行はエレベーターに向かった。

丁度、一基のエレベーターがロビー階に到着した。
詩織達がそれに乗って上に上がろうとしたその時、三人の高校生らしき集団が走ってきた。

「早乙女君、ちょっと待ってあげて」
沙希が気づいてボタンの近くに立っている好雄に言った。
「あいよ」
好雄はエレベーターの“開く”のボタンを押したまま三人がやってくるのを待った。
その一団はエレベーターに走り込んできた。
「すいません!」
一人の少年がそう言って詩織達に頭を下げた。
好雄が“閉じる”のボタンを押し、続いて“35”のボタンを押した。
エレベーターはスッと上へと上がっていった。

「高校生クイズに参加する方ですか?」
沙希が三人に声をかけた。
「ええ、そうです。そちらも……ですか?」
「はい、東京代表のきらめき高校です」
「きらめき高校? ……もしかして……」
未緒の返事に一人の少年が驚いた様子で尋ねた。
「シオリンさんですか?」
「??」
詩織以外の五人が詩織を見た。
「シオリンは……私ですけど……あなたは? もしかして……」
「初めまして……って言うのも何ですけど……北海の帝王です」
「あなたが……北海の帝王さん??」
今度は詩織が驚く番だった。


話は十日前に遡る。
全国大会進出を決めた詩織はパソコン通信のメンバーに報告をした。(もちろん電子会議室で)

ご無沙汰してます。
シオリンです。

私もやりました。\(^o^)/
東京代表として全国大会出場です。
しかも……しかもですよ。なんと我がきらめき高校は二チームを全国大会に送ることになります。
これは二チーム全国に行ける東京と北海道でしか起きない快挙ですね。
#自分で快挙って言うか(笑)>自分

北海の帝王さん、私は東京で待ってます。
全国大会がんばりましょうね。
それでは(^^)/~~

シオリン


「それじゃ……北斗農業高校の??」
詩織がその男性に言った。
「来ちゃいましたよ。全国大会」
「そうか……あなたが北海の帝王さん……」

詩織とその男性が話をしているのを横から見ていた夕子が詩織の脇をつんつんとつついた。
「シオリン……誰?」
「あ、そうか……みんなは知らないもんね……
 えっとこちらは……私のパソコン通信仲間で……」
詩織が紹介しようとすると、その男性が代表していった。
「北海道代表の北斗農業高校の間宮です。
 で、こいつが田代で……こっちが佐藤」
間宮と名乗ったその男は他の二人も紹介した。
きらめき高校の六人は自ら自己紹介した。
「藤崎詩織と言います」
「あたし、朝日奈夕子。ひなって呼んでね」
「如月未緒と言います」
「早乙女好雄ってんだ。よろしくな」
「虹野沙希です。よろしくね」
「主人公です。よろしく」
公は右手を差し出した。一瞬怪訝そうな顔をした間宮だったが、すぐに公の手を握り返した。
間宮と公の間に一瞬緊張感が走った。

チン!

その時、音がしてエレベーターが三十五階に到着した。
九人はエレベーターを降りた。


「そうなんですか……シオリンさんって思ったよりも綺麗な人ですね」
「え?」
先頭に立ってエレベーターを降りた間宮が詩織に話しかけた。
「やだ、……本気にしますよ」
詩織が頬を染めながら言った。
「冗談抜きで、RTしながらずっと思ってたんですよ。
 シオリンさんって綺麗な人なんだろうなって……でも実物はそれ以上でした」
二人は楽しそうに歩いて行った。

「おい、……公、あの間宮っての……気をつけた方がいいぜ」
好雄が公に進言した。
「あぁ、結構、クイズは強そうだな」
公は頷いた。
(あぁ……こいつ……わかってないな……)
好雄は肩を落とした。

「馬鹿ヨッシー!」
後ろから夕子が好雄の後頭部をバッグで殴った。
「あいて……! 何すんだ、夕子!」
怒鳴る好雄の耳に夕子は素早く口を寄せると囁いた。
「そう言う所に敏感だったら公くんじゃないっしょ! 鈍感だから公くんなの!」
「あ……なるほど……」
好雄はポンと手を打った。
「確かに……そりゃそうだな。
 あーいうところに鈍いのが……あいつのいい所というか、悪い所というか……ところで……」

好雄が改めて夕子に尋ねた。

「お前、今日は遅刻しなかったな」
「へっへ! そういつもいつも遅刻する朝日奈夕子様じゃないんよ。
 やる時はやるんよ」
夕子は自慢気に言った。
「ふふふ……」
「あはは……」
後ろで未緒と沙希が笑いを必死で堪えていた。
「沙希、未緒!」
夕子が二人を睨んだ。
「どうしたの、如月さん、虹野さん?」
好雄が二人に尋ねた。
「実は……」
沙希が好雄に説明しようとしたとき、夕子が止めた。
「沙希、内緒だかんね。言ったら、夕べの続きをやるからね!」
「え……ちょ、ちょっとひなちゃん……」
沙希が慌てて口を閉じた。
「なに、なに? 夕べの続きって?」
好雄が興味深げに沙希に詰めよる。
「あのですね……虹野さんと、夕べ朝日奈さんの家に泊まったんですよ」
未緒が言った。
「え?」
好雄が言った。
「あ、……なるほど……そりゃ遅刻しないわけだ。
 前回の事で経験値が上がってるじゃないか」
「ば、馬鹿、未緒! 内緒だって言ったのに……
 これは今晩は夕べの続きをしないとね……」
夕子が言った。
「夕べ……何かあったんですか?
 私、早々と休んでしまったので解らないのですが……」
未緒は首を捻った。
「ひ、ひなちゃん……冗談はやめましょ。ね?」
沙希が真剣な顔で夕子に哀願した。
「許してあげなーい!」
夕子が意味あり気に笑いながら言った。

「今夜、続きをやるにしてもさ……」
詩織と間宮がパソコン通信の話で盛り上がってしまい、話に入れなくなった公が近づいてきて言った。
「今日のクイズを勝ち抜かないと泊まりもないわけだろ?」
「そ、そうよ……ひなちゃん……クイズに集中しましょ」
沙希が夕子に必死で訴えかける。
「しゃぁない……とりあえず勝ち抜いたらってことで……今晩の楽しみは取っておくか」
夕子が残念そうに言った。


さて、夕べの出来事とは何だったのだろうか……
それはもう少し後で触れる事にしてクイズの会場に戻ろう。

「各チームのキャプテンは、受付を済ませて下さい。
 その時に、全員の名札を忘れずにもらって下さい」

受付でスタッフが叫んでいる。
「あれ? 鳳凰の間ってここだったっけ?」

間宮が受付を見て言った。

「おかしいわね……確か鳳凰の間はもっと奥だったと思うんだけど……」
詩織も案内図を思い出して言った。
「各チームは名札に番号が付いていますのでその番号順に並んで下さい」
スタッフが高校生たちを整理している。
「なんだろ……」
そう言いながら間宮は受付へと進んで行った。
「ひなちゃん!」
詩織は夕子を呼ぶと自分も受付へと歩いて行った。

「はい、北斗農業ですね」
女性のスタッフが間宮に学校名の付いた名札を三枚渡した。
「……この番号ですか?」
間宮は名札の“北斗農業”の横に書かれた“5”と言う数字を指さして言った。
「そうです。その番号順に廊下に並んで下さい。
 つぎの学校は?」
スタッフは忙しそうにしている。
「東京のきらめき高校です」
詩織が言った。
「東京……きらめき高校……」
スタッフが名簿をめくっている。
「あら? えっときらめき高校は二チームなのね? どっち?」
「藤崎です」
詩織が言った。
「あたしが、朝日奈!」
夕子が後ろから首を突き出した。
「ちょ、ちょっとひなちゃん! お行儀悪いわよ」
詩織が夕子に言った。
「ははは……シオリンったら間宮君の前でいい格好しようとしてる」
夕子がからかった。
「はい、これが名札ね。
 二チーム出てるんだね。頑張ってね」
スタッフが名札を手渡しながらそう言った。
「ひなちゃん何番?」
名札を見ながら詩織が言った。
「49番……」
夕子が“49.きらめき高校・朝日奈”と書かれた名札を詩織にみせた。
「何の順番なんだろう……」
詩織が首をかしげた。
「北海の帝王さんは5番だったし……ひなちゃんは49番か……」
「シオリンは?」
「私? ……私は……」
そう言って詩織は名札を夕子にみせた。

“1.きらめき高校・藤崎”

と書かれていた。

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル栄光への道 第3部 全国大会編
サブタイトル01:「新たな出会い」
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 第3部 全国大会編, 藤崎詩織, 主人公, 早乙女好雄, 朝日奈夕子
感想投稿数26
感想投稿最終日時2019年04月10日 11時00分23秒

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