高校生活もあと残り2ヶ月という、冬休み。
受験対策に追われているのが常だろうけど、高校三年間努力した甲斐あって、それほどあわてる必要はなかった。
先生からの太鼓判ももらった。
でも、安心している訳じゃない。
俺の心配はもっとよそにあるのだから。
トゥルルルルルルル
電話のコールが五回目を告げた時、ふいにガチャっと受話器をあげる音がした。
「はい、藤崎ですけど」
「あ、もしもし、…と申しますが」
「あっ‥‥‥‥‥‥」
「えっどうしたの?」
「ううん、なんでもない。ごめんなさい。いきなり声あげちゃって」
「あ、いやいいんだけど‥‥詩織っておばさんと声良く似てるから、いっつも確認しないとさ」
過去に、詩織と間違えて、詩織の母親と間違えて会話してしまった事があった。
詩織の母親も母親で、そのまま話に乗ってくるものだから、30秒くらい気づかない事がよくあったのを覚えている。
「そうなんだ‥‥ふふっ‥‥ところで、どうしたの今日は?」
「今度の休みなんだけど、スキーにどうかな‥‥とか思ってさ‥‥」
「スキー?
‥‥えーとね‥‥うん、いいわよ」
答えの微妙な間を読むのが、俺は好きだった。
口調などから、今詩織がどんな表情をしているのか‥‥と、そんな事を思う。
実際、距離にしてわずか十数メートルしかないところに互いが居るのだが‥‥
気のせいかわからないけど、昔よりはずっと電話の向こうで笑ってくれていそうな気がする。
声が弾んでいるのがわかるから。
「じゃ、当日向こうで‥‥‥」
「待って」
詩織が、俺の言葉を遮った。
「な、なに?」
「あ、ごめんなさい‥‥‥‥当日‥‥うちの前で8時に待ってるから‥‥」
「え?‥‥それって」
「じゃ、今度の休みね。楽しみにしてるから‥‥」
俺が言い終わる前に、勝手に言って勝手に切ってしまった。
そんな事より、俺は言葉の意味を考えていた。
頭がちょっと麻痺状態で、考えがよくまわらない。
つまりだ。俺が詩織を迎えに行くという事だな。
「‥‥!」
考えがまとまった時、ちょっと身体が硬直した。
「一緒に行こうって事か!?」
いまさらながらあわててしまった。
実際、俺も詩織と家から連れ立ってどこかへでかけるのは、ちょっと照れくさいというのもあったが、連れ立って行きたくないと言うことじゃない。
帰りはいっつも一緒だったし‥‥‥
いつか俺がイニシアチブを取ろうと思っていたのも確かだ。
やっぱり恥ずかしいな。という気持ちが今でも無い訳じゃないがそれ以上に、俺は嬉しかった。
当日、詩織がどんな表情で待っていてくれるのかを想像しただけで今夜もあまり寝付けそうもない。
後書き
いつも、詩織と待ち合わせが現地っていうが気になって、こーいうのもいいだろうということで書いた物です。
スキー場に行くのに、普通は現地集合なんて手はあまり使いません。
ガーラ湯沢ならばともかく、たいがいのところは広すぎてどうしょもないですから(^^;
行く時は、電車やらバスの中で色々な話をしながら行って欲しい。
そう思います。
そこでの会話こそが、また楽しいものだからです。
作品情報
作者名 | じんざ |
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タイトル | あの時の詩 |
サブタイトル | 05:一緒に行こう |
タグ | ときめきメモリアル, ときめきメモリアル/あの時の詩, 藤崎詩織 |
感想投稿数 | 281 |
感想投稿最終日時 | 2019年04月09日 03時44分35秒 |
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- [★★★★★☆] 公君に対する詩織ちゃんの評価アップ?
- [★★★★★★] ゲームもこんな感じのシーンがあれば、詩織ちゃんの評価もかなり上がるのに・・・。
- [★★★★☆☆]