(1)
終業の鐘が鳴り響いたとたん、教室には緊張の糸が切れ、安堵のざわめきが戻ってきていた。
進学でもっとも重要な高校3年生の夏休みを前にした時期だけになにかと緊張が多いのだろう。
窓の外は、まだ夏の太陽が西に傾いたとはいえ、強い陽射しが照りつけていた。
伝説の樹も、青々とした葉をつけている。
その美しさだけでも、十分に伝説になるような気がした。
「よう、今日お前暇か?」
帰り仕度をしている俺の所に、好雄がやってきた。
こいつは学校に来てから昼間くらいで緊張の糸が切れている奴だから、下校時には明るい事このうえないのだろう、やたら元気だ。
しかし、俺には今日はやることがあった。
今日は俺の第18回目の誕生日だった。
「あ、ちょっとすまん。やる事あるんだ」
「ん? 何か用があるのか?」
「ああ、ちょっとな‥‥」
俺はチラリと詩織の席を見た。詩織は女友達と話しつつ、帰り仕度をしているようだ。
「ちぇっ、なんだよつきあいわるいな」
つまらないな、という表情でガッカリしていた。
「すまんすまん、今度付きあうから‥‥‥それじゃ」
そんな好雄が教室から出ていくのを待って、俺は詩織の所へ向かった。
すまん。好雄。
ちょうど女友達も居なくなって、話しやすい状況だ。
「詩織‥‥‥」
小さな声で詩織に声をかけた。
学校でも詩織を呼び捨てにできるのは、女友達を除いては俺だけだというのはひそかな自慢だが、回りに同じクラスの人が居る時とかは、「藤崎さん」になってしまうのは、ひそかな自己嫌悪だった。
「あ、…。何?どうしたの?」
いつもにこやかな詩織の顔を見るたびに、ドキっとしてしまう。
「いや‥‥‥今日暇かな‥‥って思って」
断られたらどうしよう。と考えて、さっきの好雄の心境がちょっとだけわかったような気がする。
「ちょうどよかった。わたしも後で誘おうと思ってたの」
「え?」
「今日ちょっとつき合って欲しいところがあるんだけど‥‥‥それとも、
どっか別の所に行く予定とか‥‥あった?」
「いや、ないない! 全然無い。
ただ今日はこれから暇だったから、どっか行こうと思って‥‥」
この時点で、俺はもう浮かれまくっていた。
本心は、誕生日の今日、とりあえず詩織と一緒に居られればいい‥‥というくらいしか思っていなかっただけに、うれしい展開だった。
「それじゃ校門のところへ‥‥」
とここまで言った時、女友達が詩織の所へ再びやってきた。
「‥‥じゃ、藤崎さん。お先に‥‥‥」
俺は少し照れくさそうにその場を去った。自分の気の弱さを恥じながら。
「どうしたの詩織、浮かない顔して?」
「ううん、なんでもない‥‥‥‥」
「それよりさ、今日帰りにどこか寄っていきましょうよ」
「あ、私今日はちょっと用が‥‥‥」
「え〜、そうなの?」
「ごめんなさい。今度つき合うから」
「そう‥‥残念ね」
「それじゃ‥‥‥」
詩織は教室から出る時、誰にも聞こえない声でこう言った。
「‥‥ばか」
校門の前で待っている人に向けてはなった物であることは、詩織本人しか知らない。
校門のところで待っていると、詩織がやってきた。
小走りに駆けてくる。
「待った?ごめんね」
走ってきたせいだろうか、顔が赤い。
「いや、いいよ」
「それじゃ、行きましょう」
「ところで、どこへ行くの?」
「うーんとね、実は私も決めてないの」
詩織は首をかしげてごまかし笑いをした。
「なんだ、詩織もか」
「ごめんなさい」
すまなそうに、でも笑いながら謝った。
「それじゃさ‥‥‥海行こうよ」
「え? 海?」
「ただ見に行くだけだけど、もう一応夏だしさ」
「うん、いいよ。どこでも‥‥一緒なら」
「えっ‥‥‥?」
「は、はやく行きましょう」
ドキっとしている間もなく、詩織に手を引かれてしまった。
(2)
電車に飛び乗った俺達は、40分の時間を経て海へとやってきた。
駅からは海がすぐ近くに広がり、歩いて3分ほどですぐに海岸に出る事ができた。
「わぁ‥‥‥‥‥」
海に近づきつつある太陽の光が海に反射して、キラキラと輝いているのをみて詩織は言葉をなくしていた。
俺も同じだった。
「綺麗ね」
やがて海に入ろうとしている太陽よりも明るい笑顔で俺の方をみつめた。
陽の光に照らされている輝いていたのは、海だけじゃなかった。
輝く笑顔にドキっとさせられ、ふいにそっぽを向いてしまった。
「そ、そうだね」
心臓の鼓動が聞こえてしまっているのではないかというくらいドキドキしていた。
おかげで落ち着く事ができない。
「よかった。今日ここに来れて‥‥‥‥」
潮風に消えてしまいそうなその声に、胸が熱くなった。
同時になにか不思議に落ち着く何かが胸に染み渡って、暴れていただけの鼓動に心地よさが戻っていた。
「よろこんでもらえてよかった」
詩織の答えは笑顔だった。
「ね、一緒に歩きましょう?」
詩織が海岸を指さす。
「そうだね。歩こうか」
内心、俺は喜びにのたうちまわりそうだった。
想っている人と、一緒に海岸を歩けるだけで、今日は最高の気分だ。
本来は、誕生日の日に詩織に一緒に居て欲しかっただけだった。
だから、きらめき公園だろうとショッピング街だろうと、どこでも構わなかった。
それが、こんな最高のシチュエーションになるとは‥‥‥
「はい、これ」
歩いている途中、詩織がカバンから大きい紙袋を取り出した。
綺麗でセンスの良いラッピングだ。
「今日、お誕生日でしょ? これ‥‥プレゼント」
「え?俺に?」
3年間、毎年覚えていてくれた事に感激していた。
中学の頃は本当に単なるとなり同士で、学校で話する事自体あまり出来なかったし、誕生日にプレゼントどころか一緒に居る事すらも、夢のまた夢だった‥‥‥
最後に詩織にもらった誕生プレゼントといえば、小さい時に一度だけやった誕生会でもらったコアラのぬいぐるみだけだった。
もちろん今でも大切に取っている。
「うん‥‥」
「開けていい?」
「あ‥‥‥えっと‥‥」
「駄目?」
「駄目っていうか‥‥その、恥ずかしいから」
顔が赤いのは、たぶん夕陽のせいじゃない事だけはわかった。
「じゃ聞くだけでもいいや」
「うんとね‥‥‥すごく季節はずれなの‥‥マフラー」
「そりゃ確かに季節はずれだ」
思わず顔が笑ってしまった。でも、うれしいからこそだ。
「ひどいわ。せっかく今年の春から編み始めたのに‥‥‥」
「え‥‥手編み?」
「あっ‥‥‥」
言ってからしまったと思ったのか、そっぽを向いた。
「ごめん‥‥ほんと、うれしいよ。冬になったら必ず使うからさ」
「‥‥‥‥」
「わるかったって。ほんと、なあ‥‥詩織」
そっぽを向き続ける詩織に、謝り続けた。
同時に、ふくれっつらも見てみたかったな。と思う。
「わかったわ」
謝った自分が損に思えるくらい、明るい笑顔で許してくれた。
「今から冬が楽しみだよ」
「‥‥‥ありがとう」
そうこうしているうちに、太陽が半分近く海に沈みかけていた。
あたりが赤くなっていく。
「ほんとはね‥‥‥今日これ渡したかったの。だから‥‥」
「え、ほんとに?」
「うん‥‥」
「‥‥実はさ、俺も今日誕生日だったから‥‥」
最後まで言うのが恥ずかしかった訳ではなかった。でも、なぜか言葉が出てこない。
「なに?」
「あ、いや、なんでもない‥‥‥」
「そう‥‥‥」
特に追求される事もなく、俺達はしばらく無言のまま海岸を歩き続けた。
思い上がりと思われても仕方無いが、なんとなく俺の言いたい事がわかっていたのかもしれない。
「ねえ」
最初に沈黙を破ったのは詩織だった。
「なに?」
「もう一個プレゼントがあるんだけど‥‥」
「ほんとに?」
しかし、詩織がうれしそうな顔をしていないのはなぜだろう。
「‥‥‥‥学校で‥‥私の事、藤崎さんって呼ぶでしょ?」
「あ‥‥‥う、うん‥」
プレゼントがなんでそういう話になるんだ? と頭の中で混乱していた。
しかし、気にしていた事だけに、少しグサっときた。
「どうして?」
「どうしてって言われても‥‥‥詩織って呼ぶ時もあるじゃないか」
「それは人があまり居ない時でしょ‥‥‥私と親しいと思われるのがイヤだから?」
詩織からそんな言葉が出るとは思わなかっただけに、面くらった。
的を射られたからだ。
「そ、そんな事ないって」
「じゃ、どうして?」
「どうしてって‥‥‥
俺が堂々と学校で詩織って呼ぶと、逆に詩織の方が俺と親しいと思われたりするだろ。
俺なんかとそんな風に思われたら、悪いと思って‥‥」
「そんな事‥‥‥」
悲しそうな目でみつめられて、苦しくなった。
「でも、結局俺に度胸無いだけなのかもな‥‥」
そう言って照れ笑いをしながら鼻の頭を掻いた。
「そう‥‥そうなの‥‥そんな風に思っていてくれてたのね」
「本当の事だからしょうがないよ。
幼なじみじゃなかったら、俺はいまだに声だってかけられてたかどうか」
「‥‥‥‥‥‥」
「でも、学校じゃ直接本人前にして言えるのって男じゃ俺くらいだから、それはそれで満足なんだけどね」
そう言って空を見上げた。夕日と青空が綺麗なグラデーションを作りあげている。
「‥‥‥いいの」
「え?」
「言っていいの。みんなの前で堂々と詩織って呼んで」
詩織が突然立ち止まったせいで、俺は二歩ほど先に行ってしまった。
「私の名前プレゼントしてあげる。
だから‥‥‥明日から‥‥‥
明日から私を呼ぶ時は必ず詩織って言って。私全然構わないから‥‥‥」
「詩織‥‥‥」
「ごめんなさい。変なプレゼントでしょ」
詩織は笑った。しかし、笑顔なのに泣き顔に見える。
「‥‥‥どうして俺なんかにそんな事を?」
「どうしてだか、自分でもわからないの。
でも、…に藤崎さんって呼ばれると、とってもつらいの‥‥‥」
「‥‥‥‥」
頭より先に、口が何か言葉を出そうとしたが、結局なにも出てこなかった。
俺は今、頬でもつねってみたい気分だった。
学園一のアイドルとさえ影で言われている詩織に、俺が一緒に居るだけでも十分信じられないのに‥‥‥
そんな時、ふっと黒い衝動がわきおこってきた。
「友達に噂とかされても‥‥本当にいいの?」
聞くつもりはなかった。
でも、信じられないという気持ちがあったからか口をついて出たのは、この台詞だった。
「俺だって詩織の事‥‥‥でも‥‥やっぱり詩織には迷惑かけられないよ」
自分でもこんな事を言うつもりは全然なかった。
なのに、なぜか出てくるのは後悔したくなるような台詞だった。
「‥‥‥‥‥どうして‥‥」
返ってきた言葉は、ある意味で予想していた、しかし取り返しのつかない言葉だった。
すでに夕闇せまる海岸で、俺は涙を見てしまった。
言葉よりその涙の方が俺の胸に刺さった。刺のようにいつまでも取れずに残りそうな気がする。
「‥‥‥‥」
きっと、何かもっと言いたかったに違いない。
しかし、俺をずっとみつめたまま振り切るように、突然駆け出して行ってしまった。
俺は止める事ができなかった。のたのたと伸ばした手が、空しく空をさまよう。
詩織の姿が見えなくなるまで、俺はどうする事もできなかった。
なぜあんな事を言ってしまったのか、今は後悔だけが残っている。
俺はどのくらい一人で茫然としていたのかわからないが、気が付いたらすでにあたりは暗闇が降りていた。
波の音がわずらわしく聞こえた。
夜の潮風の心地よさも、俺の心には届かない。
「帰るか‥‥」
手に持っていた紙包みがなぜか重たかった。
帰りの電車の中、俺の脳裏に浮かんだのは、詩織の涙浮かんだ顔だけった。
「‥‥どうして‥‥」
あの言葉を思い出しただけで、動けなくなるほど身体が重くなっていくのがわかる。息が苦しい。
どうしてだろう。俺はずっと詩織が好きだった。これからもずっとそうだ。
だから、もう一つのプレゼントは、ある意味では一番欲しかったものだった。
それを俺を受け取るのを拒否してしまった‥‥‥。
茫然としている俺の耳に、下車する駅が近づいている事を知らせるアナウンスが遠く聞こえてきた。
自宅前に来るまでは、どうやって電車から降りてここまで来たのかよく覚えていなかった。
家の前に立っている人影がなかったら、俺は明日の朝まで記憶がなかったかもしれない。
「‥‥‥詩織?」
街灯の薄暗い光に浮かんだその姿は、詩織である事は間違いなかった。
見失った光が、そこにあったような、感動にも似た感覚があった。
しかし、俺の足はその感覚に反して、歩みを止めなかった。首は前をむいたきりだった。
自宅前に居る詩織の横を無言で通りすぎようとした時に、俺を止める言葉があった。
「‥‥‥ごめんなさい。先に帰ったりして」
俺の足は勝手に止まった。
「‥‥‥いいよ。別に」
背中同士の会話だった。
「私の思いあがりよね。名前で呼んで‥‥なんて」
「‥‥‥」
「いいの。藤崎さんで。…の呼びたいように呼んでくれれば」
声が哀しそうなのはわかったが、どうしても振り向く事ができなかった。
「うん‥‥それじゃ」
馬鹿! やめろ! 振り向け! という心の声がどこからか聞こえてくる。
それに逆らう事で、心が暗く落ち込んでいくのがわかるのに‥‥
俺は生き人形のように、ノロノロと玄関へと入っていった。
「おやすみなさい‥‥‥また、明日ね」
そういう声が後ろから聞こえてきたような気がしたが、玄関のドアを閉めて自ら断ち切った。
はげしい自己嫌悪におそわれて、俺は夕飯も食べずにベットへ入ったまま、いつのまにか眠ってしまった。
(3)
「…くん」
「え? なに? 詩織ちゃん」
小さい時の詩織が目の前にいた。
今ほど長くない髪には、いつもヘアバンドがあった。
「どうしたの? 詩織ちゃん?」
俺はいつもこう言ってたっけ‥‥と、俺は俺のままの、しかし小さい俺はそう思っていた。
詩織は泣いていた。小さい詩織がポロポロと泣いていた。
「どうして泣いてるの? 詩織ちゃん」
「わかんないの」
「わかんないの? でも泣いちゃ駄目だよ」
「だって‥‥‥だって‥‥‥」
「僕が一緒にいてあげるから、泣かないで」
「‥‥‥‥うん」
「はっ‥‥‥」
俺はゆっくりと目を開けた。あたりは暗かったが、すぐに目が慣れてきた。
俺の部屋だった。
夢か‥‥‥
夢を思い出すと同時に、今日見た詩織の哀しそうな表情を同時に思いだしてしまった。
寝起きの頭と身体にも、つらい何かがよみがえってくる。
ふと机の上の時計をみると、時間は午前3:00だった。
「なんだ‥‥まだ3時か‥‥‥」
それでも、目が覚めてしまって、もう眠れそうになかった。
ベットから起きて、俺は窓をあけた。目の前には詩織の部屋が見える。
「‥‥‥そういえばいつからだったっけな‥‥
人前で詩織って呼ぶのが恥ずかしくなって呼べなくなったのは」
呼べなくなった時と同時に、詩織を好きな女の子として意識しはじめた時だったのは覚えていた。
でも、それがいつだかは忘れていた。
いつのまにか、好きになっていた。
「なんで今頃‥‥‥」
いままで、名前の事で詩織に何か言われた事なんて一回もなかった。
俺が使い分けているせいで、誤解されずに済んでいたからだとも思っていた。
あれだけの女の子だ。誰からも人気があって、俺なんかが近づいていってもどうにもならない‥‥と。
でも、そんな打算で諦めてしまえるような人じゃない事だけは、わかりきっている。
わかりきっているのに、なぜだろう。
考えても考えても、そこから先に考えが進まないので、窓を閉めて、ベットに座り込んでスタンドの電気をつけた。
ふと机の上の紙袋に目が止まり、それを手にとってみる。
しばらく見つめたあと、紙袋の口を縛っているリボンをほどき中身を取り出してみて‥‥俺は言葉を失った。
温かそうなそのマフラーから落ちた一枚の紙に書かれていた言葉に俺は目を奪われていた。
18歳のお誕生日おめでとう。
小さい時から、こうやってマフラーを編んでプレゼントするのが夢でした。
ちょっと季節はずれだけど冬に使ってください。藤崎詩織
俺は、自虐的になっていた今日の自分が、いままでで一番嫌いになっていた。
人の前で、呼びたい名前で呼べない事のつらさ。
呼んで欲しいという気持ちのうれしさを、素直に受け入れなかった馬鹿な自分が居た事を後悔した。
暗い衝動は、もしかしたら詩織の本当の気持ちを聞いてみたかったという心がおこしたものだったのかもしれない。
そんな事で詩織を傷つけて、それで詩織に謝らせてしまったなんて、自分で自分を殴ってボコボコにしたい気分だ。
いますぐにでも、詩織の元へ行って頭を地面にこすりつけてでも謝りたくなる。
「ごめん‥‥‥詩織。ごめん‥‥」
手紙の端を握り潰して、俺は泣いた。
朝が来て、俺はいつものように学校へ向かった。
あのあと、眠れそうもなかったが、いつのまにか寝ていた。
そのせいか、気持ちが幾分楽だ。
クラスの自分の席に座ると、自分の居る席から、詩織の席が見えた。
しかし、まだ来ていないようだった。
いつもなら、俺より先に登校しているのに‥‥
ふいに肩をたたかれ、振り向くと、そこには好雄が立っていた。
「なんだ、どうした。朝から辛気くさいぞ」
「ん? ああ、ちょっとな」
「夏休み前だからって、うかれすぎたんじゃないか?」
「お前じゃあるまいし、そんな事はないよ」
と、笑ってみたが、うまく笑えたかどうか不安だ。
「ひどいなぁ」
好雄が笑ってくれたのをみると、成功したようだ。
よし、これなら‥‥‥。
俺はある自信を固めた。
その時だった。教室のドアが開いて、詩織が入ってきた。
俺にもう迷いはなかった。
立ち上がって、頬を片手でかるく2、3回たたく。
席についた詩織のそばには、女友達が集まって居たが、関係はなかった。
つかつかと一直線に歩いて行って……
「おはよう。詩織」
詩織の席の前に立ち、そう大きめな声で言って俺は笑った。
たぶんいままで生きてきた中で、一番実感のあった笑顔だったと思う。
「‥‥‥‥‥おはよう」
最初、こころなしか浮かない顔をしていた詩織の顔から、まるで夕立雲がひいて太陽が覗くように明るさが戻っていくのがわかった。
嬉しそうに返してくれた『おはよう』が、高校になってから一番うれしいものになった。
後書き
主人公誕生日夏verです。
無理矢理波乱を作ってみました。
まだお互いの距離がわからない時点での心のすれ違いとかを表現したかったんですが、なんかあまりにも無理矢理すぎて、どうもいまひとつという印象がぬぐえません。
お互いの距離がわからないというのは、本当につらい事で、近くに感じていいのか。遠くに感じていいのか。
もし相手が自分の事を好きなら近く感じてやらないといけないのに遠く感じてしまったら‥‥‥
遠くに感じられているのに、近くに感じて、それが破れた時‥‥‥
その距離を計るのも、恋愛の恐ろしさであり、楽しさでありうれしさでもあるんでしょうね。きっと。
名前を呼ぶ呼ばないは、まだゲーム始まったばかりのころ、「友達に噂とかされると恥ずかしいし‥‥‥」という詩織の言葉からピーンと来たネタです。
普通は、そーいう状況なら名前を呼び捨てなんていうのはしない筈だと思ったりもします。
高校時代、好きだった子の名前なんか呼べなかったですよ。
かろうじて、○○ちゃん。くらいまで呼べるようにはなりましたけどね(^^;
って、私の事なんてどうでもいいんですが。
設定とかをあまり気にしないで書いたので、色々何かが違うかもしれません
作品情報
作者名 | じんざ |
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タイトル | あの時の詩 |
サブタイトル | 08:夏の海と、二つの誕生日プレゼント |
タグ | ときめきメモリアル, ときめきメモリアル/あの時の詩, 藤崎詩織 |
感想投稿数 | 284 |
感想投稿最終日時 | 2019年04月09日 04時23分00秒 |
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