「もう後少しで卒業だね」
「うん‥‥‥そうね」


学校の屋上の金網越しから、俺と詩織は校門を見下ろしていた。
春の手を引いてきた冬の風が、まだひんやりと冷たい。
それでも、日差しだけは確実に春の予感を感じさせていた。
見下ろす街は、春の準備をしているのだろうか。
「受験‥‥卒業‥‥か」
俺は誰に向かってでもなく、独り言を言った。
「入学式の時、覚えてる? 桜‥‥綺麗に咲いてたよね」
詩織は街を見ながら、そっとつぶやいた。
「もちろん、覚えてるよ」
桜咲く頃。
この学校の門をくぐった。
月並みな期待と不安が俺の胸にもあった。
知らない場所、まだ知らない友‥‥‥
その不安の中で、俺は詩織を見ていた。
小さい頃から一緒だったその人を。
春の桜まじる風の中、花びらの色と同じような淡い想いを抱きながら‥‥‥
「学校に行く時、私と…のお父さんお母さんが、家の前で新しい制服着た私達を並べて写真撮った事もあったよね」
「あ、ああ、あれか‥‥‥」
その写真は、今俺の机の上にあった。その事もあって、少しドキリとした。
「私、その時、どんな表情してたのかなぁ‥‥」
少し恥ずかしそうに俺を見た。
それを見透かされたような気がして、ドキドキしたが、冷静を保とうとするのが大変だった。
「お互いぎこちない顔してたよ」
「えっ?」
「あ‥‥だ、だから、してたんじゃないかなって」
いつも見ているその写真だ。思わず言ってしまった。
「やっぱりそうかな」
照れくさそうに微笑むその表情を見ると、あの時の写真に写った時間が鮮明に頭に浮かんでくる。
あの頃のぎこちなさが、なんとなく夢のような気がした。
「あれから、もう三年たったなんて‥‥‥‥信じられないね」
「そうだね。三年なんて本当にあっという間だったよ」
「卒業が近いせいなのかな。なんか昔の事ばっかり思いだしちゃうなぁ‥‥」
再び景色に目を戻した詩織が見ている物はなんだろう。
青い空だろうか。霞む山々の稜線だろうか。学校の校門だろうか。
それとも‥‥‥
俺はこの学校で一番古くて大きい樹を見た。
どういう種類の樹なのかわからないけど、いつも青々とした葉をつけている。
「ねえ‥‥もし、わたしが‥‥‥」
「なに?」
「ううん‥‥‥いいの。なんでもないから。ごめんなさい」
その時、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。
「あっ‥‥そろそろ教室に戻らないと」
詩織が反応して言った。
どこかごまかされたような感じがする。
「悪いね。こんな所に付き合わせちゃて」
「ううん‥‥私も‥‥外、眺めたかったから」
暖かい日差しのせいなのか、それとも他の理由があるのか、頬がほんのり紅く染まっていた。
昼休みの弁当が終わった時、たまたま一人だった詩織を誘ったのは俺だった。
「屋上行かない?」という言葉に「うん」と嬉しそうに頷いてくれたのも、いずれ思い出の中の事になるんだろうか。
「それじゃ、戻ろうか」
「そうね」
暖かい日差し降り注ぐ屋上を後にした。

「よう、どこ行ってたんだよ」
席に座るなり好雄がやってきた。
「ああ、ちょっとな」
「次の授業、仲田の代わりに笠間先生が来るらしいぜ」
仲田というのは、文学担当の教師だ。もう中年の先生で、生徒の評判もあまり良くはないが、悪い先生ではなかった。
それよりも、笠間先生という事が気になった。

笠間良子。

この学校でその名を知らない人は居ない。
時として教師であり、時として姉でもあり、母でもあるような暖かな雰囲気で包み込んでくれる、そんな感じの美しい若い女の先生だった。
男女生徒の誰からも人気があった。
「笠間先生か? なんでまた?」
「さあな、でもいいじゃないか。仲田の退屈な授業聞くよりましだろ。
 それに、笠間先生の姿見れるんだ。それだけでもうれしいじゃないか」
「おい、好雄。もしかしてお前のメモ帳に笠間先生の事が載っているんじゃないだろうな?」
「何言っているんだ。当たり前だろう」
さも、当然という顔して俺を見た。
「スリーサイズとかも?」
「もちろん」
俺はため息が出た。
だいたい、どうやって先生のスリーサイズなんか調べたんだか‥‥‥
「笠間先生に聞いたら教えてくれたぜ」
「ええっ!」
「あっさり答えてくれたから、かえってこっちがビックリしちゃったくらいだ」
むしろ俺の方がビックリだ。
「あ、そろそろ始まるな。それじゃ」
好雄は嬉しそうに自分の席に戻っていってしまった。
すぐに、教室のドアが開き、笠間先生が入ってきた。
薄いクリーム色のロングスカートに、薄く桜色の入ったセーター姿で、肩にはセミロングのゆるやかにウェーブのかかった髪が軽くかかっていた。

それ以上に、落ち着いた雰囲気のある先生だった。
入学して初めて会った時、ドキっとするよりも、暖かい何かを感じた物だった。
同時に、心の中にすでに居た人の笑顔の暖かさを感じさせてくれた。
そんな気持ちにさせてくれる笑顔を見せてくれた先生だった。
あとでその事を詩織に言った事も、今考えると無神経だったが、
「そうよね。すごく優しそうな先生。私もあんな風になりたいな」って言っていたのは覚えている。
もちろん、もっと暖かいのを感じさせてくれる人については言わなかった。
言える訳がない。本人を目の前にして。

「今日は仲田先生の変わりに私が授業を受け持ちますが‥‥‥
 もう卒業を間近に控えているあなた達に、もう私が教える事はありません」
入って、壇上に立つなりそう言った。
柔らかな声だった。
「それじゃ、一体何やるんですか?」
一番前に座っている子が、つまらなそうに聞いた。
つまらなそうなのは、授業がつまらないのではなくて、授業をしないのがつまらないという事だった。
その子も、笠間先生の授業を楽しみにしているのは知っている。
もちろん、他の誰も一緒だった。
「今日は、もう少しでこの学校から巣立っていく事になるあなた達にひとつの詩を贈ろうと思うんだけど‥‥
 どうかしら? ‥‥‥そんなにたいした物じゃありませんけど」
笠間先生が、少し照れた風に笑ったように見えたのは、気のせいだろうか。
異存がある訳がなかった。俺だけじゃなく、ほかの誰もが同じだ。
文芸部顧問の笠間先生らしい。
「みんな異存が無いようだから、そうさせてもらうわね。
 これは誰かに読んでもらおうかしら‥‥そうね‥‥‥」
笠間先生はひとしきり教室を見渡した後に、
「それじゃ、藤崎さん。あなたにお願いしようかしら」と、詩織に目を止めた。
「はい」
指名された詩織は、まったく躊躇する事なく頷いた。
笠間先生がどんな詩をくれるのか、また詩織がどんな風に読んでくれるのか‥‥俺にはそれが楽しみだった。
「それじゃ、お願いね。藤崎さん」
笠間先生は、一枚の紙を詩織に手渡した。
「座ったままでいいわ。間違ってもいいから、ゆっくりと落ち着いてね」
「はい」
クラスの誰もが、詩織が間違うとかいう事はないだろうというのは分かっている筈だった。
英語のリーダーも、つかえずに流暢に読みこなすほどだ。
笠間先生も、いままでの授業で何度も読ませてそれを知っているはずだが、どんな生徒にも優しくそう言ってくれる。
それだけで、どの生徒の読む文も、仲田の授業の時とは違う落ち着いた雰囲気を漂わせて読む事ができていた。
詩織は、数秒、その紙に目を通してから、読みはじめた。


「思い出」

出だしはこうだった。
いつも聞いている筈の詩織の声が、落ち着いて聞こえるのは、笠間先生が居るせいだろうか。
それとも‥‥‥

「過ぎ去った時間。
 帰ってこない時間。
 明るさに心を広げ、悲しさに翼を閉じた時間。
 置き去りにされて泣く子供のように、不安だった心
 暖かい風の匂いを感じる時の落ち着いた心
 どれもが心に刻まれた大切な物。
 それが思い出。
 振り返っても戻れない物。
 でも、わたしたちは今ここに居る。
 思い出。
 それは未来にもある事を私達は知っている。
 思い出はいつも作られていく物なのだから。
 明日を想う気持ちも、明後日には思い出に変わっていく。
 その時、私達はまた明日を想う。
 光溢れる明日を夢見る。
 暗い闇が待っていようとも、明日を望む。
 その、未来をつかもうとする気持ちが、やがて思い出になり
 翼は広がっていく。
 その翼でどれくらい飛べるのだろう?
 これから先、どれくらい高く飛べるのだろう?
 不安になったとき、背中の翼を感じてごらん。
 大きく広がる翼がきっと見える。
 未来を目指そうと一生懸命に羽ばたく翼がきっと見える。
 その翼を信じている限り、遥か遠くへと飛んでいける。
 思い出は、いつも私達と一緒にある事を忘れないで。
 ふと立ち止まった時、思い出してください。この詩を」


それから、しばらく沈黙があった。

詩織の淀み無い朗読は、俺の胸にゆっくりと染み込んで、俺はその余韻を味わっていた。
「恥ずかしい出来ですが、これをあなた達に贈りたいと思います」
そう言った笠間先生の顔は、明らかに照れているのがわかった。
俺が手を叩こうかと思った時、真っ先に拍手したのが詩織だった。
拍手の波は、ゆっくりと教室全体へと広がっていった。
笠間先生の人柄を現すように。
広がった時と同じく、ゆっくりと名残惜しそうに拍手が引いていった。
「ありがとう。藤崎さん」
そういう笠間先生の嬉しそうな顔は、いままで見た事がなかっただけに、新鮮な驚きがあった。
「ちゃんと読めなくてすいません‥‥」
詩織が申し訳なさそうに言った。
「ううん、とっても良かったわ。本当にありがとう」
たぶん、誰が読んでもこの台詞は出てくるのだろう。それこそが笠間先生だから。
「先生。ありがとう」
誰かが言った。
「ごめんなさいね。恥ずかしい出来で」
「そんな事ないよ。先生。すごくあったかい詩だった」
男からも、そういう声が上がった。
「みんな、ありがとう」
俺達の、笠間先生の授業を受ける最高の楽しみがこれだった。
以前も、笠間先生の授業が終わった後は、他の授業と違ってあまりみんな騒いだりせず、先生の残してくれた余韻を感じているようなそんな雰囲気があった。
そんな時、たまに詩織と話す事がある。
「笠間先生って、どうしてあんなに優しそうに笑えるのかしら」
「なんか、こうあったかくなるよね。あの笑顔見ていると、なんかこう、ドキっとする時があるよ」
「やっぱり‥‥あんな感じの人がいいのよね。
 そうよね‥‥‥
 だって‥‥素敵だもんね」
俺から視線を反らして、少しうつむきながら寂しそうに微笑んでいた。
「詩織‥‥‥?」
「ご、ごめんなさい。私ったら何言ってるのかな」
手を振りながら慌てていたっけ‥‥‥
「私が今まで教えて来たことよりも、あなた達がこれから学んで行く事の方がずっとずっと大切なのよ。
 だから、これからはあなた達が信じた物があったらそれにまっすぐ向かっていって欲しいの。
 それを助けてくれるのが思い出だと‥‥‥私はそう信じています」
そう言って笠間先生は目を閉じた。
言葉の一つ一つが、胸に染み込んでくるような響きがあった。
「今までの自分を信じて、これからの自分を信じて、これから先、歩いていってくださいね」
一瞬、俺は笠間先生が少女のように見えた。そういう笑みを浮かべたからだろうか。
「それじゃ、私の授業はこれで終わります。
 受験が控えている人はそれぞれの追い込みをやってください。
 何か私で役にたてる事があったら、なんでも質問に来てくださいね」
そう言って、ニッコリ笑った。

放課後、俺は屋上へ続く階段を昇っていた。
なんとなく、まだ帰る気にならなくて、それでここまできた。
屋上への扉のドアへ手をかけた時、小さい話声が聞こえてきて、俺は思わず手を止めた。
ちょっとためらったあと、俺は少し力を入れて、そうっとドアを開けた。
この声は‥‥‥詩織と笠間先生?
俺はいけないと思いながら、詩織と笠間先生の会話を聞こうと聞き耳をたてた。
どんな会話しているのか、興味があった。


「先生‥‥‥思い出って‥‥勇気もくれるものなんでしょうか」
「あなたはどう思っているの?」
「わからないんです‥‥‥思い出を信じていいのかどうか」
「そう‥‥」
「卒業が近づくたびに、どうしようも無い気持ちになってきて‥‥‥」
「ふふふっ」
「お、おかしいですか?」
「あ、ごめんなさい‥‥ちょっと思い出しちゃったものだから」
「え?」
「先生も‥‥‥卒業する時、たぶん同じ気持ちだったかもしれないわ」

そういえば笠間先生は、この学校の卒業生だったっけ‥‥‥
いつもは優しそうな笠間先生が、まるで詩織と友達のような感じで話しているのが信じられなかった。
俺は興味引かれて、また話に聞き入った。

「先生もね‥‥この学校を卒業するとき、すごく不安な気持ちだったの。
 三月一日が近づくたびに、夜遅くまで眠れない日だってあったわ」
「先生でもそんな事があったんですか?」
「どうして?」
「だって‥‥先生、綺麗だし優しいし‥‥‥
 そんな不安になる事になるなんてとても信じられない」
「私だって、みんなと同じ人間なのよ。不安にだってなるわ」
「ご、ごめんなさい」
「ふふふっ‥‥‥
 それでね、当時私の担任だった女の先生に、今のあなたと同じような事を聞いた事があるの」
「えっ‥‥そうなんですか?」
「その先生、私になんて言ったと思う?」

その問いに、詩織の答えは返ってこなかった。首を横に振ったのだろう。
それにしても、何の話だかいまいち良くわからない。

「今までの自分とこれからの自分。それと相手。どれを信じられる? って聞かれたわ」
「なんて答えたんですか?」
「最初、驚いて答えられなかったわ。
 でも‥‥その言葉でなんとなくモヤモヤとしてた物に整理がついたような気がしたの。
 それでね‥‥‥全部って答えたわ。今考えると、質問自体になんか意味があった訳じゃなかったような気がするの。
 でも、それで気持ちの整理がついた事なのは確かだったわ」
「それで、どうだったんですか?」
「‥‥‥来てくれたわ。その人。
 走ってきて、息を切らせている姿を見て私、泣いちゃった‥‥」
「先生が‥‥‥」
「あの時、自分を信じて良かった。相手を信じて良かった。ってそう思ったの。
 だから、あなたも‥‥‥」
「はい」

元気のよい返事が聞こえてきた。

「それで‥‥‥相手は誰なの?」
「えっ‥‥」
「ご、ごめんなさいね。
 あなたにそこまで想われる人って誰なのかな‥‥って気になったものだから」

想われる人? なんだそれは?

「ううん‥‥いいんです。その人は、小さい時から‥‥‥」

そこまで聞いた時、突然強い北風が吹いてきて、ドアの隙間に勢い良く入り込んできた。
風の音だけが鼓膜を揺さぶる。
そんな中、ドアを閉じないように、開きすぎないようにするのが精一杯だった。
風が収まった時、俺は気づかれていやしないかと不安になって再び聞き耳をたてた。
会話は途切れていない。よかった。気づかれてなかったか。

「それじゃ、先生。ありがとうございました」
「お役に立てたかしら」
「私も‥‥‥気持ちの整理がなんとなくつきました」

や、やばい。なんかいつのまにか会話が終わりそうだな。
なんかこっちに来そうだ。
そう思って、俺は慌てながらもゆっくりとドアを閉めて、階段を駆け降りた。
それからゆっくり十数えて、呼吸を整え、何事もなかったように階段を昇り始めた。
踊り場を曲がったあたりで、ドアを開けて詩織が出てきた。
「あっ」
俺を見るなり、声を上げた。
「あ‥‥し、詩織じゃないか。どうしたの?」
平静を装うつもりが、全然うまくいかない。
「わ、私はちょっと景色見たくなって‥‥‥」
俺を見るなり、いつもとは違って、顔を真っ赤にしながら慌てた風に言った。
「あ、お、俺もそうなんだ‥‥‥」
俺が階段を昇ろうとすると、詩織が駆け足でおりてきた。
「そうだ。今日、一緒に帰らない? 帰りに軽くなんか食べていきましょうよ」
なんとなく立ちふさがるようにして俺の前に立った。
「いきなりどうしたの?」
わかっていて、わからないフリをするというのは、結構難しい。
「俺、屋上に‥‥」
「北風も強くなってきて、寒くなったから‥‥もう帰ろう。ね?」
屋上にはまだ笠間先生が残っているはずだ。俺が屋上に行くとなんかまずいのだろうか。
そんな感じだった。
なんとなく聞いてみたかったが、立ち聞きした事がバレたら、どうなるかわかったものじゃない。
「そ、そうだね」
ここらが引き時だな。
「それじゃ、早く帰りましょう」
そう言って、俺の横を通り過ぎて、階段を降りていった。
ふわっと柔らかい香りが微かに残った。
振り返って俺を促すような目を向ける。
詩織の残した香りにドキドキしながら、俺はチラリと屋上へのドアを見てから
すぐに詩織を追いかけた。

三月一日

俺は廊下を走っていた。
白い封筒をポケットにしまいながら。
伝説の樹の下へと。

入学した時に聞いた伝説の事が、今、頭に思い浮かぶ。
手紙の主は誰だろう。と考えていた。
俺は、小さい時から想いを抱いていた人の姿を、眼差しを、表情を思い絵がいていた。
もし‥‥違ったら‥‥‥
そんな事を考えるだけで、呼吸ができなくなりそうだった。
もし違う人が待っていたら、俺はその時立っていられるかどうか。
今も、俺の心臓は限界まで高鳴っていた。


職員室の前を通りすぎた時、俺は呼ばれた。

「…くん」
「あ、笠間先生‥‥」
紺のスーツ姿の笠間先生が、俺を待っていたかのように立っていた。
「いよいよ卒業ね。おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
「どうしたの? 急いで」
いつも優しそうな笑みを絶やさない先生が、気のせいか悪戯っぽい笑顔をしているように見えた。
「あ‥‥」
俺が何かを言おうとした時、先生が先に言葉を出した。
「…くん、しっかりね」
「えっ?」
いきなり言われて、俺はなんの事かわからないままだった。
「あなたを信じてくれている人を‥‥‥大事にしてあげてね」
「先生‥‥」
「自分を信じて、相手を信じて‥‥‥行ってあげて」
いつもの優しそうな笑顔が先生の顔に戻っていた。
その言葉、その笑顔が、俺の混乱した心をスウっと軽くしていった。
「ありがとう。先生」
笠間先生は、俺の言葉に一つ頷いた。
「幼なじみ‥‥‥か」
小さくつぶやいた。
先生と結び付く要素の無い言葉だっただけに、余計聞き取りにくかった。
「え?」
「なんでもないわ。それより‥‥」
「はい。それじゃ、失礼します」
俺は一つ頭を下げて、走り出した。
さっきまであった迷いは、もうなかった。
そうだな。俺が信じないでどうする。
待ってくれている姿が見えるような気がした。
小さかった時に見た笑顔と、待ってくれている時の笑顔
どちらも俺に取っては最高の宝物になるのは間違いなかった。

Fin

後書き

(編者注…後書き文中の33は第18話、32は第17話になります)
暴走33。
あれ? 32は?
とか思う人が何人居る事でしょうか(^^;
1人? 2人?
きっとそんな番号まで気にしている人は居ないかもしれませんね(^^;

32は、特に話とかなくて、12/22〜1/4くらいまでの日常(?)を書こうとしてて、いろいろやってたらでかくなりすぎて、どうにもならなくなってしまいました(^^;
書きたい事とかシーンはあったんですが、それに付随していろんな物がくっついたりしてきちゃったので、わりと話がダレて来ているのかな。
と、ちょっと思ったりもして暴走してるくせに推敲とかやってます。
なんだかんだいっても30本も書いてくると、すっかりゲームからはイメージが離れて、独自のイメージを持ってしまったりして、なんか訳がわからなくなってきてます。ええ(^^;
たまにゲームをやったりする時の、補助イメージとして自分で使ってます。
変な奴ですね>私(笑

と、まだ未完成の32の事はどうでもいいとして。

33ですが。
卒業式が近い学生生活って、どんな感じだったかな。というのをちょいと思い出して書いてみました。
でも、全然雰囲気なかったですね(^^;
ただ書き連ねただけって感じで。
こーいうのは、出来上がった作品(?)がすべてで書き手の思いとか、苦労、努力なんかは介入する余地はなくて言い訳にすぎないんですが‥‥って、そんな本格的な物でもないし‥‥‥(^^;

まあ、そんな訳で、今年はあと32を完成させて終わりになります。タブン
来年になったら、また一新してスタートしたいと思います。


作品情報

作者名 じんざ
タイトルあの時の詩
サブタイトル18:思い出を信じて
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感想投稿数281
感想投稿最終日時2019年04月11日 06時55分03秒

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