(1)

冬の空気が、昼になっても冷たさを失わないでいた。
卒業が近い。

───高校最後の冬休み


「あれ? その子は?」
俺が家の門を出た時、小さな女の子の手を引いた詩織とばったり出くわした。

「わたしの妹」

聞いた瞬間、一瞬だけ目の前が真っ白になった。
その時に、詩織が浮かべた悪戯っぽい笑顔を見ている暇はなかった。

「冗談よ」
そう言って、ニコリと笑った。
冗談に決まっていることも解らなくなるとは、我ながらおかしい。
しかし‥‥‥夏以来、ずいぶんと俺に対して冗談を言う事が増えてきた。
むしろ、喜んでいいのだろうか。
「な、なんだ。びっくりしたよ‥‥‥」
「ふふふ‥‥‥あたりまえじゃない」
可笑しそうに笑っている。
「で‥‥‥その子は?」
「あ、従姉妹の知子ちゃんっていうの。
 ほら‥‥知子ちゃん、お兄ちゃんにご挨拶は?」
詩織の言葉に、知子と呼ばれた小さな女の子は、詩織のスカートの後ろに隠れた。
「ははは、俺は嫌われているらしいや」
「ごめんなさい‥‥‥知子ちゃんどうしたの?」
それでも、詩織のロングスカートの端をぎゅっとつかんだまま、じっと俺の顔を見ている。
可愛らしい顔が、緊張のせいか少し怯えたような感じにさえ見える。
「お兄ちゃん、そんなに恐いかな?」
俺の言葉に、知子ちゃんは小さく首を横に振った。
「そっか、それならよかった。
 よろしくね。知子ちゃん。俺は…って言うんだよ」
「ほら‥‥‥知子ちゃん」
詩織が促すと、
「こんにちは‥‥‥」と小さく声を出した。
「こんにちは。知子ちゃん」
俺が笑いながら言うと、知子ちゃんも微妙に表情を緩めた。
「知子ちゃん、冬休みになってわたしの所に遊びに来たのよね」
「うん‥‥‥」
知子ちゃんは、小さく頷いた。
結構無口な子なんだな‥‥‥
そういえば、詩織と初めて会った時も、このくらいの頃だったっけな。
今の知子ちゃんほど無口ではなかったが‥‥‥
それでも、どことなく、あの頃の詩織に雰囲気だけは良く似てはいる。
「へぇ‥‥‥それで、これからどこ行く所だったの?」
「うん‥‥別にどこへっていう訳じゃないんだけど‥‥
 とりあえず公園にでも行こうかと思って‥‥‥」
知子ちゃんの頭をなでながら、優しい眼差しで見つめている。
「お母さん達の話につき合っててもしょうがないよねぇ」
柔らかく優しい声で、知子ちゃんに言った。
「そうなんだ‥‥‥あ、そうだ。もし良かったら俺も一緒に行っていいかな?」
「え? 本当に?」
「ああ。俺も別にどこへ行こうって訳でもなかったし」
「良かった‥‥‥一人で不安だったの。小さい子の面倒見るのって初めてだから」
そう言って、嬉しそうに微笑んだ。
「それなら丁度良かった。それじゃ一緒に行こうよ」
「うん‥‥‥良かったね、知子ちゃん。お兄ちゃんが一緒に行ってくれるって」
知子ちゃんも、その言葉に小さく頷いてくれた。
嬉しそうなのは、むしろ詩織のような気がする。
「ありがとう。知子ちゃん」
俺が笑いながら言ったからだろうか。
表情が少しほぐれてきたようだ。
じきに笑ってくれるだろう。
笑うとあの頃の詩織に良く似るかもしれない。

知子ちゃんイメージラフ

「へえ‥‥‥そうなんだ。おばさんの妹の子かぁ‥‥‥」
「もうじき、小学一年生なの」
「そうか‥‥‥
 そういえば、俺達が最初に会ったのも知子ちゃんくらいの時じゃなかったっけ」
「そうよね‥‥そういえば‥‥‥」
詩織は、手を繋いでいる知子ちゃんを見ながら、目を細めていた。
見ているのは、昔の事だろうか‥‥‥
初めて詩織に会った時も、ちょうど、今の知子ちゃんみたいにおふくろさんに手を引かれながらだったのを覚えている。
むしろ、その時の俺の方が今の知子ちゃんの状態に、少し近かったかもしれない。
「詩織は、知子ちゃんほどおとなしくなかったけどね」
「ひどい。それじゃ、まるでわたしがおてんばだったみたいじゃない」
笑いながら手を振りあげた。
「ははは、ごめんごめん。でも、本当の事だしなぁ‥‥‥」
「もう! やめてったら」
その時、知子ちゃんが小さく笑っているのが目にはいった。
俺と詩織の会話が面白かったのだろうか。
いや‥‥笑い合って話していたからかもしれない‥‥‥
思った通り、笑った顔は可愛いかった。
「知子、大きくなったら詩織お姉ちゃんみたいになりたい」
いきなりそう言って、詩織を見上げている。
「ありがとう知子ちゃん。お姉ちゃん、うれしいな」
頬を紅くして、微笑んだ。
「知子ちゃんならきっとなれるよ。なったらお兄ちゃんにも見せてくれないかな」
「うん‥‥‥いいよ」
「そっか。ありがとう」
知子ちゃんの、さっきまでの不安そうな表情は、話す度に段々とほぐれていく。
大きくなったら‥‥か‥‥‥
十年先の未来。
俺はどこで何をしているだろう。俺は誰と一緒に居るのだろう。
「どうしたの?」
俺がずっと見つめているのに気づいたのだろうか。
不思議そうな表情をしている。
「あ‥‥‥いや、別に」
笑顔でごまかした。
「‥‥‥そう」
笑顔で答えてくれた。
十年先。
詩織のこの笑顔は、誰の為にあるのだろう。
ふと、思い描いた未来の詩織の側には‥‥‥‥
「お兄ちゃん」
知子ちゃんの声が、俺の未来旅行を中断させた。
「ん? なに?」
「お兄ちゃん、さっきから詩織お姉ちゃんばっかり見てる」
「えっ!?」
いきなりの事で、俺は固まった。
自分では意識していなかった事だが、そう言われれば確かにそうかもしれない。
それにしても、あまりにもいきなりすぎる。
俺はどうしていいかわからず、詩織を見ると、頬を赤らめながら、困ったような顔をしている。
「ご、ごめん‥‥‥そんなつもりじゃ」
何を言っていいか判らない挙げ句に、出た言葉がこれだ。
「詩織お姉ちゃんもお兄ちゃんばっかり見てた」
ちょっと不満そうな声で言った。
「えっっ!?」
俺と詩織は、同時に声を上げた。
「と、知子ちゃんたら‥‥‥」
ますます困ったような顔になりながら、慌てている。
俺は俺で、身体中の熱が全部顔に集まったような気がするくらい顔が熱くなってきた。
純粋なまでの言葉は、俺達をあわてさせるには十分だ。
それでも、知子ちゃんの率直さがうらやましくもあった。
率直に言いたい事をいえたら、どんなにいいだろう‥‥‥
結果を考えずに行動できたら、どんなにいいだろう‥‥‥と。
「お姉ちゃん達ばっかりで‥‥‥」
少しふくれっつらをしながら言った。
「ごめんね。知子ちゃん」
困ったように、それでも微笑みながら、繋いだ手を小さく振っている。
「そうだ‥‥‥知子ちゃん。お兄ちゃんも一緒に手つないであげようか?」
知子ちゃんを放っておいたお詫びのつもりもあった。
本当は‥‥‥本当は、詩織とこうして小さい子を挟んで手を繋ぐという事をしてみたかっただけかもしれない。
「うん‥‥いいよ」
ふくれっつらだった顔が、とたんに明るい無邪気な笑顔に変わって、俺に向かって手を伸ばしてくる。
「本当にいいの?」
「うんっ」
笑顔に誘われて、俺は自然に手が出た。
握った小さい手は、やわらかく暖かい。
「良かったね。知子ちゃん。お兄ちゃんに手を繋いでもらって」
「うん」
詩織の言葉に、元気良く頷いた。
子供の表情は、本当に素直だ。
笑いたい時に笑い、嬉しい時に喜び、悲しい時は泣いて‥‥‥
今の俺だと、気持ちを言いたい時に言えない。
昔の気持ちに戻れれば、言えるだろうか‥‥‥
俺と詩織に挟まれるようにして手を繋がれている知子ちゃんは
会った時の不安そうな顔をしていたのが信じられないくらい、笑顔で嬉しそうだ。
「ちょっと‥‥‥恥ずかしいね」
詩織が、頬を染めながら、小さい声で言った。
確かに今の状況は、小さな女の子を挟んで、しかも手を両方でつなぎあっているという、まるで親子がやるような構図だ。
そういえば、前にこんな事があったような気がする。
あの時は真ん中の子が大きかったから、今とは別の意味で恥ずかしかったっけ‥‥‥
「そ、そうだね」
それでも、これが十数年先にも実現できたら‥‥‥と思う。
いつのまにか、冬の冷たい空気も気にならないほど、身体があったかくなっていた。
暖かく感じるのは、心底から暖かいからだろうか。

まだ空気が冷たいせいか、公園に人影はなかった。
そんな中で、ブランコを漕いでいる知子ちゃんを見ながら、俺達はベンチに座っていた。
澄んだ空のせいだろうか、陽の光だけは暖かく感じる。
それでも、たまに吹く北風は、そんな心地良さをさらっていったが、北風にもさらえない暖かさをくれる人が隣に座っている。
俺にはそれで良かった。
「小さい子って元気よね」
「詩織だって小さい時、元気だったじゃないか」
「…だって」
言ってから、互いに顔を見合わせて、軽く笑った。
心が暖かくなる瞬間。
心がときめく瞬間。
俺の大切な瞬間‥‥‥
「なんかさ‥‥知子ちゃんに、お兄ちゃんって呼ばれると、くすぐったいっていうか‥‥‥ちょっと照れるよ」
ブランコを楽しそうに漕いでいる知子ちゃんを見ながらちょっと息を抜いた。
「わたしも‥‥‥お姉ちゃんって言われると‥‥」
声に嬉しそうな響きがある。
「お互い一人っ子だからね」
「だからかな‥‥‥昔は、わたし達ってちょっとだけ兄妹みたいだったじゃない」
「そうだね‥‥詩織のおばさんにも、ずいぶん世話になっちゃったし」
「わたしだって…のおばさまには随分お世話になったわ」
「そういえば、母さん言ってたよ。最近詩織ちゃんうちに来ないじゃないって」
「えっ‥‥‥そ、それは‥‥」
「まあ、無理ないか。昔じゃないんだしね」
いつからだろう‥‥‥詩織があまりうちに来なくなったのは‥‥‥
俺が詩織を意識しだした時からくらいかもしれない。
それでも、外では、会うには会う。話すことは話す。
でも、うちに気軽に遊びに来ていた時ほどの自然さが無くなっていたような
気がしていた。
最近になって‥‥‥なんとなく、なんとなくだけど、その自然さが戻ってきて
いるような気がするのは、俺の錯覚だろうか‥‥‥
「ごめんなさい‥‥‥」
思わぬ答えが、ちょっと沈んだ表情と一緒になって返ってきた。
「ち、違うって、そんなつもりで言ったんじゃないよ。
 それに、うちに来てもしょうがないよね」
「ううん、そんな事‥‥‥わたしだって‥‥」
とそこまで言ったとき、ブランコから知子ちゃんが呼びかけてきた。
「お姉ちゃーん、お兄ちゃーん」
楽しそうに手を振っている。
俺はそれに応えて手を振ってから、
「だって‥‥なに?」
「‥‥‥ううん。いいの、なんでもないから」
首を横に小さく振ってから、知子ちゃんに小さく手を振って応えた。
「そういえば‥‥‥知子ちゃんくらいの時にブランコで競争したりしたよね‥‥」
「結局なにが競争だったかわからないけど、あの時は楽しかったよ」
「どっちが勝ったか覚えてる?」
「お互い譲らなかったんじゃなかったっけ」
僕の勝ち。詩織の勝ち。そう言ってケンカしたのは、良く覚えている。
「あたり。よく覚えてたね」
「子供だったよなぁ」
そう言った時、詩織が何かを考えている風に黙り込んだ。
しばらくの沈黙のあと、
「ねえ‥‥あの時の競争‥‥‥もう一回しない?」
そう言って、緩やかに微笑んだ。
笑顔の後ろに、詩織ではない、詩織ちゃんが一瞬見えたような気がする。
詩織とは、ずっと一緒だったんだな‥‥‥
笑顔を見たとき、あらためてそう思う。
できれば、この先も‥‥
「いいよ。やろうか」
ベンチから立ち上がった俺達は、ブランコへ向かった。
「知子ちゃん、俺達もまぜてもらってもいいかな」
「いいよ」
「お姉ちゃん達と競争しよ」
「うんっ」
俺達には、さすがにブランコは小さかったが、楽しむ心は全然変わってはいない。
「そぉれ」
風切る爽快感は、あの頃のままだ。

少し足を伸ばして、きらめき中央公園に行って戻って来た時には、
陽がすっかり西の空に傾いていた。
「あした帰るの」
知子ちゃんが、俺の家の前で、詩織のスカートを掴みながら寂しそうに言った。
「そうなんだ‥‥‥せっかく友達になれたのになぁ」
しゃがみこんで、目線を知子ちゃんに合わせた。
「明日の夜、帰るみたい」
知子ちゃんの頭に軽く手を乗せながら、髪を撫でながら詩織も寂しそうに言う。
一日お姉さんやってたのだから、無理はないな‥‥‥
俺も、妹のようにさえ思えていたところだ。
「明日の夜か‥‥‥」
ちょっと考えたあと、頭にピンと来た。
「そうだ。明日遊園地行かない? 知子ちゃん連れてさ」
「えっ?」
「駄目かな‥‥‥」
「ううん‥‥‥そんな事無い」
首を横に振った。ゆっくりと優しく。
「そっか、良かった」
「知子ちゃん、明日お姉ちゃん達と遊園地行く?」
「うん、行く!」
この場所で最初にあった時の事が嘘のような、元気一杯な笑顔で詩織を見上げ、次に俺を見た。
「それじゃ決まりだね」
「うん‥‥お母さんと叔母さん、明日用事で出かけるみたいだけど。
 知子ちゃんが行けるかどうか、聞いてみる」
「知子、お姉ちゃん達と一緒の方がいい」
せがむように、詩織を見ている。
「そうか、それじゃ、明日は一日だけ俺がパパをやってあげるよ。
 だから一緒に行こう」
「それじゃ‥‥‥詩織お姉ちゃんがママなの?」
「えっ? あっ‥‥そ、その‥‥‥」
知子ちゃんの質問に、本気で困った。
子供の質問にうろたえるなんて、われながら情けない。
助けを求める気持ちで詩織を見ると、照れくさそうにしながらも小さくひとつ頷いてくれた。
スッと気持ちが軽くなる。
「‥‥‥お姉ちゃん、ママやってくれるって」
言ってて、恥ずかしくもあり‥‥‥嬉しくもあった。
それにしても、ママか‥‥‥
詩織も、いつか本当にママになる日も来るだろう。
子供に向ける眼差しも、きっと優しいママになるに違いない。
自分が、それを守れる存在になれたら‥‥
「ほんと?」
「本当だよ。それじゃ、明日楽しみにしててね」
「うんっ」
「今日は‥‥‥ありがとう。楽しかった」
立ち上がった俺に、ニコっと笑ってくれた。
助かった。の間違いだと思ったが、そうでもないようだ。
「いいよ。楽しかったのは俺の方だから」
「ほんとうに?」
「なんたって、一日でもお兄ちゃんになれたんだから」
知子ちゃんの頭に手を乗せて、軽く撫でた。
知子ちゃんも、ニッコリ笑って答えてくれる。
「良かった。そう言ってくれて‥‥‥嬉しいな」
「べ、別に‥‥」
なんとなく照れくさくて、視線を反らす。
嬉しい。その言葉をどう感じていいのか‥‥‥
「それじゃ‥‥‥明日。楽しみにしてるから。ね? 知子ちゃん」
詩織は、スカートを掴んでいる知子ちゃんを、優しい眼差しで見下ろしながら優しく問いかけた。
「うん、すごく楽しみ」
嬉しそうな顔を見れるだけで十分だ。
「じゃ、明日迎えに行くから」
「うん‥‥‥待ってる」
「じゃね。知子ちゃん」
「さようなら。お兄ちゃん」
その言葉に、俺は手を振って答えた。
わずか数メートル離れた詩織の家の門をくぐるまで、ずっと俺は見送った。
門をくぐるとき、詩織がこっちをチラっとだけ見て、小さく手を振ったのに応えて、俺も手を振る。
「今日はお兄ちゃんで明日はパパか‥‥‥」
かなり照れくさいが、不思議と心地よい。
冬の冷たい空気も、暖まった身体と心にはちょうど良かった。


to be continued SHIORI side.

(2)

「お兄ちゃん、おはよう」

朝、詩織の家のチャイムを鳴らすと、扉が開いて知子ちゃんが俺の脚に飛びついてきた。
「知子ちゃん。おはよう」
知子ちゃんは嬉しそうにしている。
それにしても、昨日とはまるで違う。
何があったのだろうか?
良い事なのは確かだろう。
でも、もしかしたらこれが知子ちゃんの本当の姿なのかもしれない。
「あ、…、おはよう」
すぐに詩織も出てきた。
小さい子を連れての遊園地という事だろうか、白いふわふわのセーターにデニム地のロングスカートというシンプルな格好だ。
髪には、見覚えのあるヘアバンド。
去年俺がプレゼントした物だった。
ちゃんと使ってくれていたんだな‥‥‥
肩にかけたリュックには、一体何が入っているんだろう?
「おはよう」
いつも交わす挨拶となにも変わらない。
しかし、今日はパパだ。なんとなく気恥ずかしい。
お互いそう感じているのか、目を見合わせては苦笑するの繰り返しだ。
「…君。今日はごめんなさいね」
詩織のおふくろさんと、おふくろさんに良く似た人が出てきた。
多分、知子ちゃんのおふくろさんだろう。
玄関の前がとたんに賑やかになってくる。
「今日はすいませんね。知子がお世話になるそうで‥‥‥」
「あ、いえ。気になさらないでください」
深々と頭をさげられて、俺も思わずさげてしまう。
「知子の事、よろしくお願いしますね」
「詩織さんも一緒だから、大丈夫ですよ」
詩織の叔母さん相手に、さすがに詩織を呼び捨てには出来ない。
脚に抱きついている知子ちゃんを見てから、詩織を見ると少し恥ずかしそうにうつむいていた。
「詩織も、知子ちゃんしっかり見てないと駄目よ」
詩織のおふくろさんが言った。
「大丈夫よ。…が一緒だし」
なんとなく、信頼を感じさせるような眼差しに戸惑った。
どちらかといえば、頼りになるのは詩織の方だと思っている。
小さい子には、やっぱり女の子のほうが世話も行き届く。
それなのに、なぜ俺に信頼の眼差しを向けてくれるのだろうか。
それだけの男として見てくれているのだろうか‥‥‥
「知子、お兄ちゃんとお姉ちゃんに迷惑かけちゃ駄目よ」
「違うもん。今日はパパとママだもん」
知子ちゃんの言葉に、ハッとして詩織と顔を見合わせてしまった。
「まあ‥‥知子ったら。ごめんなさいね」
叔母さんは苦笑しながら、頭を下げている。
「い、いえ‥‥‥別に」
詩織のおふくろさんや叔母さんの前で、こうもハッキリと言われると恥ずかしさより慌てるだけになる。
慌てなくて済むような関係であったら‥‥‥
そう思った。
「そ、それじゃもう行きましょうよ」
詩織もすこし気が動転しているようだ。
「それじゃ、知子ちゃんと詩織さんお預かりしていきます」
もう一度二人の親に頭を下げた。
「…君、詩織さんって呼ぶなんて、他人行儀ね」
おふくろさんが、そう言って微笑んでいる。
「お、お母さんったら」
「…君。気にしなくていいわよ。姉さんからあなた達が幼なじみって聞いてるから」
「叔母さんまで‥‥‥」
見るも明らかに、詩織の頬は赤くなっている。
何か入っていけない世界があった。
それでも、自然に自分の顔が熱くなるのを感じる。
「ねえ、お兄ちゃん。ママたち何話してるの?」
不思議そうな顔で知子ちゃんが俺の袖を引っ張った。
「そうだなぁ‥‥‥知子ちゃんも大きくなればわかるよ」
「え〜、わかんない」
「ホントは俺にも判らないよ。ごめんね」
「お兄ちゃんにもわからない事あるの?」
「‥‥‥うん、一杯あるよ」
これからの事、勉強の事‥‥‥などなど
今まで生きてきて、判った事より判らない事の方が、全然多い。
それでも、今、一番判らない、でも一番知りたいのは‥‥‥一番好きな人の気持ちかもしれない。
「もう、行きましょう」
詩織がまだ頬を紅くしたまま、俺を促す。
「それじゃ‥‥‥」
もう一度だけ頭を下げて、知子ちゃんの手を引きながら俺達は藤崎家を後にした。

「今日、いい天気でよかったね」
道すがら、青空に輝く太陽に負けない笑顔で、詩織は空を見上げた。
雲一つ無い澄み渡る青い空は、どこまでも突き抜けるようで心地よい。
「お姉ちゃん。手つないで」
片方は俺と手をつないでいる。空いた片方の手を詩織に伸ばした。
詩織は微笑みながら、その手をなんのためらいもなく、そっと繋いだ。
昨日とは違う自然さがある。
「知子ね、昨日お姉ちゃんと一緒に寝たんだ」
嬉しそうに俺を見ている。
「へぇ‥‥‥そうなんだ。良かったね」
想像するだけで、なんとなく微笑ましくなりそうだ。
お姉さんをしている詩織を見てみたかったような気がする。
「一杯お話ししたのよねぇ」
ねぇの部分に、子供っぽさが混ざっている。
「うん」
「いいなぁ‥‥‥」
「えっ!」
思わず口から出た言葉は、言った俺自身と詩織を慌てさせるには十分だった。
「あ‥‥だ、だから、その‥‥‥」
「お兄ちゃんも一緒が良かったなぁ‥‥‥」
知子ちゃんの言葉が、更に俺の混乱に拍車をかける。
心臓が荷重労働で悲鳴を上げそうだ。
「ま、また今度ね」
苦し紛れにしては、苦しすぎる言葉だった。
「それじゃ、約束ね」
知子ちゃんは、俺の手を離して小指を出してきた。
「し、詩織‥‥‥」
どうにも困り果てて詩織を見ると、頬を染めてそっぽを向いている。
恥ずかしいのは、確かに詩織の方かもしれない。
「そ、そうだ。知子ちゃん、遊園地に行ったら何に乗りたい?」
守れるかどうか、俺一人ではどうにもならない事を約束するわけにはいかない。
なんとかごまかそうとした。
「そんなのより、お兄ちゃん、約束」
せがむような目で見られて、俺はもう一度詩織を見つめた。
まだ困ったような顔をしている。
それでも、頬が紅い。
「‥‥‥わかったよ」
俺は知子ちゃんが出している小指に自分の小指を絡めた。
「ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本の〜ます」
楽しそうに指切りしている知子ちゃんを見て、少し胸が痛んだ。
針千本飲む羽目になるかもしれない‥‥‥と。
指切りをした後、もう一回知子ちゃんと手をつなぎながら小さい声で「ごめん、勝手に‥‥」と、俺が詩織に謝ると、詩織は首を小さく横に振った。
小さく柔らかく微笑みながら。
本当に優しいな‥‥‥詩織は。
「知子、遊園地に行ったらね。観覧車に乗りたいな」
「知子ちゃん、観覧車好きなのよね」
「うん」
「どうして知ってるの?」
歳は離れていても、やはり女の子同士だからだろうか?
なんとなく、学校で耳にする女の子同士の会話に雰囲気が良く似ている。
「内緒なの。ね、知子ちゃん」
「うん」
子供っぽく、楽しそうに笑う詩織の笑顔を見るのは何年ぶりだろう。
いつから見なくなったのか‥‥‥良く思い出せない。
それでも、昔は良く見ていた事だけは間違いない笑顔だった。
「知子ちゃん、パパに内緒はいけないな」
詩織の笑顔を見れたうれしさからだろうか、自然に言えた。
「だってほんとに内緒なんだもん」
楽しそうにはしゃぎながら、俺の手を離して、詩織の手を両手で掴んだ。
そうしている姿を見ると、なにか本当の親子を見ているような気分になる。
その時、ふと思う。
いつの間にか、俺達はこんなに大きくなったのか。
早く大人になりたかった自分は、今はもう居ない。
今は、いつまでもこうしていたい自分が居る。
もしかしたら、先に進むのが恐いのかもしれない。
いつか、詩織の気持ちを知る日が来る事が‥‥‥恐い。
離れていくのではないかという不安が、いつでもある。
知子ちゃんも、大きくなったらこの気持ちがわかる時が来るかもしれないな。
詩織は‥‥‥どうなんだろう。
秘めている想いを言えなくて、思い悩む事はあるのだろうか‥‥‥
伝えられる本当の気持ちを恐れる事があるのだろうか。
俺に伝えてさえくれれば‥‥‥
「もっともっと内緒の事が一杯あるの」
知子ちゃんがそう言うと、詩織の顔がさっと赤くなったような気がした。
「と、知子ちゃん」
困ったような顔で、知子ちゃんを見ている。
「でも、お兄ちゃんには絶対に内緒なの」
「あとでこっそり教えてくれないかな? 遊園地でおいしい物を一杯買ってあげるから」
俺の言葉に、知子ちゃんは少し考えた風に黙ってしまった。
冗談のつもりだったのに。
「あ、物でつるなんてずるい」
そう言って、知子ちゃんの手をひいてから。
「ずるいパパね。知子ちゃんはあんな風になっちゃ駄目よ」
楽しそうに笑いながら言った。
「うんっ」
やれやれ、すっかり俺はパパだよ‥‥‥
悪い気がまったくしないのは言うまでもない。むしろくすぐったいほど心地良い。

(3)

「高いね。すごいね」

知子ちゃんが、楽しそうに観覧車の窓にはりつくようにして外を見ている。
良く晴れたせいか、遠くまで見渡せた。
「ほら、あっちの方がお姉ちゃん達のうちのある方よ」
知子ちゃんの隣で、負けないくらい楽しそうにしている詩織が窓の外を指指している。
どっちが子供だかわからないな‥‥‥
でも、そんな姿を見ていられるだけでよかった。

やがて、俺達の乗ったゴンドラがちょうど真上あたりに来たところで、ガクンという揺れがきて、ゴンドラが止まった。
詩織の表情が一瞬凍り付く。
それにしても、なんて良く止まるゴンドラだ‥‥‥

ふと、袖に重みがかかった。
ん?
見ると、詩織が片手で袖を摘んでいる。
表情が思いっきり固い。
そういえば、前に一度止まった時はすごくこわがってたな‥‥‥
前ほどじゃないのは、知子ちゃんが居るからかな?
少し残念な気はする‥‥‥
「止まっちゃったね」
知子ちゃんは、嬉しそうにしている。
詩織は相変わらず無言のままだ。
袖をつかんでいる手が、微かに震えているのが伝わってくる。
「お兄ちゃん、楽しいね」
「そ、そうだね」
そう言いながらも、俺はさりげなく袖をつかんでいる詩織の手に自分の手を重ねると、ちょっとだけぎこちないながらも、微笑みが返ってきた。
ふと、こんな時にしか出てこない勇気が少し憎らしい。
でも、ここの良く止まる、問題の多い観覧車に少しだけ感謝だな‥‥‥
「お姉ちゃん‥‥‥どうしたの?」
知子ちゃんが不思議そうな顔して、詩織を見つめていた。
「べ、べつに‥‥‥大丈夫よ」
「恐いの?」
「こ、恐い事なんて‥‥」
俺の袖をつかむ力が入ってきた。
よほど恐いに違いない。
「お姉ちゃん‥‥‥」
知子ちゃんが、詩織のもう片方の手を握った。
心配そうに見ている。
「‥‥ありがとう。知子ちゃん」
そう言ってから、次に俺を無言で見てくれた。
表情は───微笑み。
こわがっているような表情は、もうほとんど無い。
その時、ガクンという震動と一緒に、再び観覧車が動き出した。
すぐに、安心したような表情になる。
観覧車に限らず、以外と高い所に弱いのかもしれないな‥‥‥
俺の袖を把んでいた手を離して、両手で知子ちゃんの手を握った。
「ありがとう、知子ちゃん。お姉ちゃん嬉しかった」
そう言ってニッコリ笑うと、知子ちゃんも同じように笑う。
仲の良い姉妹みたいだな。
長いような短い時間のあと、俺達はゴンドラを降りる時がやってきた。


「次は、どれにしようか。知子ちゃん、どれにする?」
「あれに乗る」
知子ちゃんが指さしたのは、ジェットコースターだ。
「あれは知子ちゃん乗れないのよ‥‥‥」
困った風に苦笑している。
「どうして?」
「まだ知子ちゃん小さいから」
「乗りたい。お姉ちゃん達と乗りたい」
詩織はますます困っている。
ふと、俺はピンと思い出した。確か‥‥‥
「そうだ‥‥!
 知子ちゃん。あっちにもう一つジェットコースターあるんだよ。
 そっちなら知子ちゃんでも乗れるから、お兄ちゃんと一緒に行こう」
小さい時、俺も知子ちゃんみたいな事言って、親を困らせた事があったっけ。
「‥‥‥うん。行く!」
少し考えてから、ニッコリと笑って俺の手をつかんできた。
「知子ちゃん、お姉ちゃん困らせたら駄目だよ」
「‥‥‥うん。ごめんなさい」
「別に怒ったんじゃないんだよ」
知子ちゃんの頭を優しく撫でると、嬉しそうに頷く。
「いいのよ、知子ちゃん。でも、わかってくれてお姉ちゃん嬉しいな」
詩織が、知子ちゃんに優しく微笑みかけた。
「うん‥‥ごめんなさい。お姉ちゃん」
「いいのよ。そんな事より、早く行こ」
詩織が笑うと、知子ちゃんも負けずに笑う。
こんな二人を見れただけでも、冬の陽気でも暖かく感じる。
遊園地に来て本当に良かった。


「ほんとうに乗らなくていいの?」
ジェットコースター好きな詩織から出た、わたしは見てるから、という言葉が信じられなくて、思わず聞き返した。
「うん、わたしはここで見てるから。知子ちゃんと一緒に乗ってきて」
「そうか‥‥‥それじゃちょっと乗ってくるよ」
「お姉ちゃんも一緒に乗ろうよ」
「いいから、お兄ちゃんと乗ってきて。手振ってあげるから」
「‥‥‥うん」
知子ちゃんも、残念そうな表情をしたものの、詩織が変わらず笑顔で居るせいか安心したように頷いた。
俺もなんとなく安心する。
「じゃ、行こうか」
知子ちゃんの手を引いて、ジェットコースター乗り場へと向かった。

「あ、ほら。お姉ちゃんがいるよ」
子供用のジェットコースターにしては、ずいぶん高いところまであげられている。
頂上に来たあたりで下を見ると、こっちに気づいた詩織が軽く手を振っているのが見えた。
「お姉ちゃん」
知子ちゃんは大きく手を振って喜んでいる。
俺も手を振ろうと思った瞬間、いきなりガクンと下がりだした。
子供用だと思ってなめていたかもしれない。
そういう事にしておこう。
「わぁぁっ!」
短い悲鳴をあげながらも知子ちゃんを見ると、楽しそうに笑っている。
詩織んとこの家系はみんなそうなのかな‥‥‥とくだらない事を考える余裕はあまりなかった。


「やれやれ‥‥‥子供用だと思って甘く見たよ」
「そうみたいね」
大きいジェットコースターには及ばないものの、小気味良い動きをしたコースターにふいをつかれて、ちょっと足元がおぼつかない俺を見て、小さく笑った。
「でも、結構楽しかったよ。詩織も乗ればよかったのに」
「わたしは‥‥いつでも来れるから」
いつでも‥‥‥か。
「それじゃさ‥‥‥今度一緒に来ようよ」
さりげなく聞いた。
「‥‥うん」
柔らかい微笑みと同じような、優しい返事がかえってきた。
本当に嬉しそうな感じに見えるのは、俺の思い上がりだろうか‥‥‥
とりあえず次に来る時は、側に居る事は出来そうだ。
「お姉ちゃん。早く次行こう!」
「はいはい」
知子ちゃんに手をひかれ、せかされながらも優しい笑顔。
俺はそんな二人を見ながら、ゆっくりとついていった。

「そろそろ腹減ったなぁ。なんか買ってこようか?」
昨日とは別人のように元気な知子ちゃんに振り回されたせいか、昼ごろには、腹の虫が盛大な音を立てていた。
「あ‥‥‥大丈夫よ」
「え? 腹減ってないの?」
「ううん‥‥‥」
詩織は肩からリュックを下ろした。
「お弁当作ってきたから」
「え? ほんとに?」
「ほんとだよ。お姉ちゃん一生懸命作ってたもん」
知子ちゃんがニコニコ顔で俺を見上げている。
「一緒に遊園地行ってくれるお礼に‥‥って、ちょっと変かもしれないど」
少し頬を赤らめている姿に思わず見とれた。
「そ、そんな事ないよ。すごく嬉しいよ」
ただ単に、一緒に行って遊ぶくらいだと思っていただけに、思わぬうれしさがあった。
「ねえ、早く食べよう」
知子ちゃんがせかすように俺のジャンパーの袖を引っ張った。
「そうだな。それじゃ、あそこらへんの芝生の上にでも座って食べようか」
「うん!」

広い芝生の上では、家族連れやカップルが、暖かさを貯め込むようにしてくつろいでいた。
冬の寒さも暖かさに変わるのだろうか。
子供を見つめる母親の目は限りなく優しく、恋人同士で、肩に手を置く男に女は穏やかな微笑みを贈っている。
これから先、あのようになれるだろうか。
俺の想う人と。すぐ近くに座っている人と。
「だんだんあったかくなってきたね」
「天気がいいからなぁ‥‥‥」
芝生に腰掛けた詩織が、小さく流れる風を感じているのか、目を細めながら耳もとの髪をかきあげた。
チラっと見える形の良い耳に、鼓動が騒ぎ出した。
そういえば‥‥‥‥
こんな風にちょっとした仕草に、鼓動の高鳴りを感じ出したのはいつからだろう。
目を閉じれば、微笑む姿が浮かぶようになったのはいつからだろう‥‥‥
「お姉ちゃん。お弁当お弁当。はやく」
「はいはい」
やわらかく苦笑しながら、弁当を取り出した。
どんな弁当なのか、俺も気になる。
大きな包みを二つ取り出した詩織は、一つを、俺と詩織との間に座っていた知子ちゃんに預けた。
「じゃ、知子ちゃんこれ開けてね」
詩織に言われて知子ちゃんが可愛らしい布の包みを解くと、紙の箱が出てきた。
「あ、おにぎり」
蓋を開けた知子ちゃんが嬉しそうに声を上げる。
「これ‥‥‥握ってくれたの?」
「ちょっと‥‥形が悪いかもしれないけど‥‥‥」
詩織は、照れくさそうに微笑んだ。
「いや、そんな事ないって」
言うほど形は悪くはない。
伊集院のクリスマスパーティーで出るどんな豪華料理よりも、おいしそうに見える。
どんな気持ちでこのおにぎりを握ってくれたのかな‥‥‥
「はい。こっちはおかずだから、適当につまんでね」
詩織が差し出したプラスチックの弁当箱には、手で掴めるようなタイプのおかずがぎっしりと入っている。
「すごいなぁ」
「あ、この林檎のウサギ、知子欲しい」
「じゃ、俺はこっちのタコウィンナーもらおうかな」
指さしながら、いろいろ言っていると、スッと小さく丸められたタオルが差し出された。
受け取ると、ひんやり冷たい。濡れタオルか。
「二人とも。食べる前にちゃんと手を拭かないと駄目よ」
「お姉ちゃん、ママみたい」
「はははっ‥‥確かに。でも、ママの言う事はちゃんと聞かなきゃ駄目だよ」
「はぁい」
端から見たら、俺達は一体どういうふうに見られているのだろう。
小さい子が一緒だけど親子でもないし、二人で居るけどカップルでもない。
まあ‥‥‥どういう風に見られようが、俺は全然構わない。
詩織が困ってさえいなければ‥‥‥
「いただきま〜す」
知子ちゃんが元気一杯な声で言ってから、おにぎりを食べ始めた。
「それじゃ俺も食うかな。いただきます」
一つ取って、がぶりと食べた。
うん、塩味もほどよく効いててうまい。
「どう?」
俺と知子ちゃんを交互に見ながら心配そうに聞いてきた。
「うまい」
「おいしい」
知子ちゃんと同時に言った。
「よかった」
ホッとしたように、胸をなで下ろしている。
「コンビニなんかのとは全然違うよ。めちゃくちゃうまい」
「おにぎりなんだし、そんなに変わらないわよ」
そう言いながらも、照れくさそうに微笑んでから、自分でもおにぎりを一つ取ってぱくりと食べ始めた。
「なんかあったかい味がするよ。うまい」
そう言うと、詩織は目と唇だけでニッコリと笑った。
本当に嬉しそうだ。
「お兄ちゃん、このタコさんソーセージおいしいよ」
知子ちゃんが持っている爪楊枝の先っぽには何もなかった。
刺さっていた物はいま口の中だろう。
「ああ、知子ちゃん、それ俺が狙ってたタコさんウィンナーだったのに‥‥‥」
「それじゃ、代わりに知子のうさぎあげる」
なんとなく、小さい時の詩織とイメージがダブる。
ほんと‥‥優しい子だな。
「いいよ。俺はいつでも‥‥‥」
チラっと詩織を見ると、小さくうなずいてくれた。
言いたい事が言わずに伝わった事が、少し嬉しい。
その場しのぎの約束かもしれない‥‥‥と思ったが、今まで詩織が俺との約束を破った事はないのを思い出した。
「いつでも食べれるからね。知子ちゃん好きなだけ食べていいよ」
「いつでも? いいな‥‥知子も食べたい」
「また今度うちに遊びに来た時に、一緒にお弁当持ってどこか行こうね」
詩織がにっこりと知子ちゃんに微笑みかけた。
「ほんとに?」
「ほんとよ」
「お兄ちゃんも一緒?」
その問いに、今度は詩織が俺の方を見た。
どういう意味の眼差しだろう。
俺の思っている意味でなら、否はない。ある筈がない。
一つ詩織に向かって頷いてみせた。
「うん‥‥‥お兄ちゃんも一緒よ」
知子ちゃんに向ける微笑みには、嬉しさの色が濃い気がする。
気のせいでなければ、俺はその微笑みの意味に応えたい‥‥‥
「よし、知子ちゃん。次来た時には動物園にでも行こうか」
「知子、動物大好きなの」
「そうか。それじゃ約束だ」
今度は俺の方から小指を出した。
すぐに小さな小指がそれに絡まる。
約束‥‥‥か。次、知子ちゃんはいつ来るかわからない。
次に来た時に、もう一度三人でこうやって楽しくする事が出来るだろうか。
知子ちゃんとの約束は、詩織との約束でもあるのだから。
もし、これから先、詩織が俺ではない他の誰かを選んでしまったら‥‥‥
それとも、すでに誰か意中の奴はいるのか。居ないとしても、俺がもしここで告白したら、それを受け入れてくれるか‥‥‥
すべてがうまく行かなかった場合、俺は知子ちゃんとの約束を守れる自信が無い。
無理な約束だったのかもしれない。
「お兄ちゃん。どうしたの?」
少し考え込んでいた俺を見て、不思議そうに思ったようだ。
「あ‥‥ごめんごめん」
「変なお兄ちゃん」
そう言いながらも、にっこりと笑っている。
「動物園の次は、わたし水族館がいいな」
詩織が冗談っぽく笑った。
「はいはい。どこへでも付き合いましょ」
「なぁに、その投げやりな言葉。いいわよ、それなら知子ちゃん渡さないから」
知子ちゃんの頭に軽く手をおいて、「ねえ」と言いながら微笑んだ。
「あ、ひどいな。親戚権乱用だ」
俺も笑いながら返した。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんが一緒じゃなきゃヤ」
知子ちゃんが不満そうにむくれた。
その言葉と表情に、詩織と顔を見合せると、おかしくてつい笑いがこぼれ出る。
「大丈夫よ。一緒だから‥‥‥ね?」
言葉の最後の部分を俺に向けてきた。
少し真剣な色の濃い眼差しと一緒に。
胸の中でいつも思う事が、今なら言えそうな気がする。
「ああ、一緒だよ」
ずっと‥‥‥そう続けようとしたのを、詩織の笑顔が止めた。
それで十分よ‥‥。とでも言うような笑顔。
俺にどんな答えを求めていたのか‥‥‥
笑顔から判断するには、鼓動が忙しく働きすぎて、その分頭がまわらない。
ただ、鼓動が高鳴って頭がまわらなくなるほど、輝いた笑顔だったのは確かだ。
最後まで言えなかったのは悔しいが、言わなくても良かったのかもしれない。
「よかった」
知子ちゃんが、安心したように笑った。
「あ、そうそう。お茶もあるの。飲むでしょ?」
話を切り替えるようにそう言って手を打ち合わせた
「あ、ああ‥‥‥それじゃもらおうかな」
俺の言葉に頷いてから、リュックの中から水筒を出し、カップに中身をそそぐと湯気がほわほわと立ち昇る。
冬の空気が、すぐにその湯気をさらっていく。
「はい」
差し出してくれたカップから立ちのぼる湯気の向こうには───笑顔。
「ありがと」
カップを受け取る時に、触れた指にドキっとした事を隠すのに苦労したのを詩織に気づかれてはいないかな。
「お姉ちゃん。知子も飲む」
「はいはい。ちょっと待っててね」
やわらかく微笑んで、もう一つのカップに注いで知子ちゃんに渡した。
受け取った知子ちゃんが、カップに口をつけるなり、すぐに離す。
「あつい」
困ったような眼差しを詩織に向けている。
「しょうがないわね」
小さく笑って、カップを知子ちゃんの手ごと取って、小さく息を吹きかけている。
「知子もふーふーする」
二人で、楽しそうに一緒に熱いお茶を冷ましているのを見ていると、まだ冬だというのに、春の最中に居るような気分になった。
「詩織、なんか落ち着いててお母さんしてるって感じがするよ」
やはり、面倒見が俺なんかよりいい。
「ふふふっ‥‥‥ありがと」
「でも、今日お姉ちゃん、知子のママでしょ?」
「そうね。知子ちゃんいい子だからママ助かるな」
詩織の言葉に、嬉しそうにニコリと笑った。
本当の親子の様にも見えるし、本当の姉妹のような気もする。友達のようにも見える。
女の子同士は、本当に不思議だ。
「ほめられちゃった」
笑顔のまま、俺の方を向いた。
「そっか。知子ちゃんはいい子だからなぁ」
素直だし優しい。
大きくなったら、きっと今の詩織みたいになるかもしれないな。
俺と詩織からほめらたのが嬉しかったのか、これ以上無いというくらい嬉しそうだ。
「‥‥‥こういうのって、いいね」
ふと、詩織が、自分でもお茶のカップを持ちながら誰にともなく囁いた。
視線は芝の上。
もしかしたら、地面の中で眠る春に向かって言ったのかもしれない。
春が目を覚ませば‥‥‥俺達の高校生活は終わりを迎える。
「また絶対来ようよ。それでまた三人で弁当食ってさ」
絶対‥‥の部分に、力を入れた。自分でも入れたかどうかわからないくらい
小さく‥‥‥でも、確実に。
「知子もぜったい遊びにくる」
俺と知子ちゃんの言葉に、詩織は微笑んだ。微笑みがこんなに輝いて見える事はそうそう無いかもしれない。
そんな笑みだった。
「そう‥‥そうよね。
 またこうやって一緒にお弁当食べて‥‥‥話して‥‥それから‥‥‥」
今詩織が見つめている物はなんだろう‥‥

近い未来?

夢?

目の前の人以外には、答えを教えてもらう事さえ出来ない。
おにぎりを食べたら、そんな事がわかるかもしれない。
そう思って一気に食べた。

(4)

昨日と同じ、いや、ずっと前から同じ。
陽が西に傾けば、東の空からは、微かに夜の足音が聞こえてくる。

かなり急いだ冬の夜の冷たい足音。
これだけは変わらない。
変わったのは、詩織が肩にかけているリュックがほんの数百グラム軽くなったのと、俺の体重が、リュックの中身が減った分の三分の一ほど増えたくらいかもしれない。
いや、俺の場合、背中にもう一つ‥‥‥
「ごめんね‥‥‥重くない?」
詩織が苦笑しながら訊いてきた。
「ああ、大丈夫だよ」
おんぶした知子ちゃんからは、小さな温もりが伝わってくる。
ジャンパーを知子ちゃんの背中ごと羽織っていたが、背中全体がやわらかな暖かさで満たされてて、寒いという事はなかった。
「もう‥‥‥ぐっすり寝ちゃって‥‥ふふっ」
「一番元気だったのは知子ちゃんだったからなぁ」
昼ご飯の後、知子ちゃんに目一杯付き合って、遊園地の大半のアトラクションを楽しむ羽目になったが、別に俺は構わなかった。
こんな冬の一日、二人の楽しそうな笑顔が見れるだけでも十分だ。
「でも‥‥今日はホントにありがとう。つき合ってくれて‥‥‥」
「いいよ。俺も暇だったし‥‥それに‥‥‥」
詩織が一緒だから。そう続けるつもりだった。だった‥‥‥が、言うのをやめた。
今こうしている時間だけでいい‥‥‥とだけ思うのは、やっぱり度胸が無いせいだろうか。
「それに‥‥‥なに?」
問いかけるようなのは、言葉だけじゃない。
まっすぐに見つめてくる眼差し。
その眼差しに、どうしようもなく胸が騒ぎ出す。
「すごく楽しかったしね」
それだけは間違いは無いなかった。
「そう‥‥よね」
そう言って微笑んだ。どこか寂しげに。
いつだったか、詩織が日曜に誘ってくれて、用事があるからと俺が断った時に詩織が見せた笑顔に良く似ていた。
その時「そう‥‥‥あ、ううん、いいの。別に大した用事じゃないから‥‥」と残念そうに言ったのを覚えている。
今と同じ笑顔‥‥もしかしたら‥‥‥
いや、気のせいか‥‥‥‥
「それにしても、知子ちゃん‥‥‥ホラーハウスに強いんだなぁ」
「わたしの方がこわがっちゃって、情けなかった」
そう言って、苦笑した。
「俺だってああいうの、苦手だよ」
「でも‥‥‥全然恐がってなかったじゃない」
「袖つかまれてたんじゃ、俺がこわがる訳にもいかないしね」
「もうっ、意地悪」
ジャンパーの袖を掴まれていた事に気を取られて、実際、ほとんど恐い気はなかった。
「‥‥‥‥ん‥‥‥」
背中から小さな声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん‥‥‥」
「あ、知子ちゃん。起こしちゃったか」
「知子、おりる」
「そっか‥‥‥」
俺は腰をかがめると、詩織が知子ちゃんの背中にかけていた俺のジャンパーを持ってくれた。
「知子ちゃん、寒くない?」
詩織が、俺にジャンパーを渡してから、知子ちゃんの手を取りながら訊いた。
「平気だよ。お兄ちゃんの背中あったかかった」
「そうなんだ‥‥‥良かったね」
ニッコリと微笑む詩織と、その笑顔に寝起きの緩やかな笑顔で応える知子ちゃん。
ジャンパーの袖に手を通しながら、そんな二人を見ているだけで、気温じゃない暖かさを感じる。
「お兄ちゃん。手つないで」
そう言って俺に手を伸ばしてきた。
もう片方は詩織とつながっている。
握った小さな手は、変わらず暖かい。
こんな風に、俺が詩織の暖かさを感じれる日は、いつか来るだろうか。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんの手ってあったかい」
「ほんとう? お姉ちゃんうれしいな」
思わず詩織と目があった。
おかしくて笑った。
どちらからともなく。
「さ、日も暮れてきたし、急ぎましょう」
詩織が空を見上げながら言った。
「そうだ。知子ちゃん、お兄ちゃんとお姉ちゃんの手をしっかり握って」
俺の言葉に、知子ちゃんより詩織の方が不思議そうな顔をした。
「うん」
知子ちゃんは素直に俺の手を強く握ってきた。
きっともう片方の手も詩織の手を強く握っているだろう。
「持ち上げるぞっ」
そう言った時、すぐに納得してくれたのか、目で頷いてくれた。
「よいしょっ」
力を入れて、知子ちゃんの手を持ち上げた。
ばんざいの格好のまま持ち上がる。
「きゃはは」
楽しそうな知子ちゃんの声。
「詩織、走ろっ」
詩織に合図して、知子ちゃんを持ち上げたまま、小走りで駆け出した。
重くはなかった。
重さを分け合えているから。
三人なら、夜の足音から逃げるのも楽しい。
そんな一瞬だった。

空は、オレンジと黒のグラデーション。
西の方角の町並みは、黒い影。
詩織の家の前で、知子ちゃんは、詩織のスカートを小さく握っている。
「今日はどうもありがとう」
門の前で詩織が微笑んだ。
「‥‥‥‥」
「どうしたの? 知子ちゃん」
寂しそうに、黙って俺を見ている知子ちゃんに向かって、詩織が声をかけた。
「お兄ちゃん、帰っちゃうの?」
「ああ、でも知子ちゃんが帰る時になったらまた来るから」
そう言うと、詩織のスカートから手を離して、俺のズボンの裾を掴んだ。
「お兄ちゃん、ごはんいっしょに食べよう。知子が帰るまでいっしょにいよう」
「知子ちゃん‥‥‥」
しっかり掴んだ手は、もう離れないような気がする。
俺を見上げる瞳を見ていると、胸が苦しい。
「駄目だよ。無理言ったら‥‥‥」
手を頭の上にポンと置いて笑ってみせたその時、不意に詩織が声をかけてきた。
「‥‥ねえ、もし良かったら‥‥‥
 知子ちゃんのお願い、聞いてあげてほしいんだけど‥‥駄目かな‥‥‥?」
「えっ?」
瞬間、訳がわからなかった。どういう事か考えつく前に、また詩織が言う。
「ご飯、うちで食べていって‥‥‥お母さんにお願いしておくから」
「お兄ちゃん、いいでしょ」
少し混乱した俺に、追い討ちをかけるように知子ちゃんのせがむような声。
「でも‥‥‥」
「わたしは‥‥構わないから‥‥‥」
今日一日の、まだ楽しかった余韻は残っている。
正直、その余韻を、出来るだけ長く知子ちゃんや詩織と一緒に味わっていたいという気持ちはあった。
俺もそこまで望んでいたのかもしれない。
ただ、言われるまでは思い付いてもいなかった。
「邪魔じゃなければ‥‥‥それでもいいけど」
藤崎家に対しての邪魔と、詩織に対しての邪魔‥‥‥
両方の意味をこめた。
どちらかといえば、詩織に対して‥‥‥の方が強い。
「ううん‥‥そんな事‥‥‥」
俺が思っていたよりも、ずっとずっと暖かい微笑みをくれた。
それならば‥‥
じっと待っているような表情で見上げている知子ちゃんに、ひとこと答えた。
「知子ちゃん。一緒にご飯食べようか」
「うんっ!」
昨日、今日の中で、一番元気な答えが返ってきた。
「あ、それじゃちょっと家に帰って母さんに言ってくるよ。詩織のとこで飯食べるって」
「わたしもついて行く」
「え‥‥別にいいよ」
「良くないわ。…の所、夕飯準備しちゃってるかもしれないし‥‥
 おばさまにわたしからも謝らないと‥‥‥」
「いいって、そんな事」
「だって‥‥‥わたしが誘ったんだし、そうもいかないわ」
「知子もお兄ちゃんところ行く」
ズボンの裾をつんつんと引っ張りながら知子ちゃんも言った。
「ね、いいでしょ‥‥?」
「わかったよ。じゃ行こうか」
「うんっ」
知子ちゃんと詩織が、同時にうなずいた。

(5)

「あら、いいのよ。そんな事」
玄関に出迎えた母さんが、詩織に事情を聞くなり、明るく答えた。
「それじゃ、詩織ちゃん。よろしく頼むわね」
「はい」
嬉しそうに返事をした。
「…、詩織ちゃんのところに迷惑かけないようにしなさいよ」
「わかってるよ‥‥‥」
やれやれ、いつまでも子供扱いだな‥‥‥
「知子ちゃん、よろしくお願いね」
「うんっ‥‥‥あ‥‥はいっ」
「あら、えらいのねぇ」
きちんと言い直した知子ちゃんに、そう言いながら微笑みかけた。
ここらへんは、やはり母親だけあって、扱いが慣れている。
女の子の扱いも、小さい時の詩織で慣れたのかもしれない。
「それじゃ、おばさま」
「ふふふっ‥‥‥」
「‥‥‥?」
小さな笑いを洩らした母さんに、詩織が不思議そうな顔をする。
「‥‥‥ごめんなさいね。知子ちゃん見てたらあなたの小さい時思い出しちゃって。
 ずいぶん変わったって思ったらつい‥‥」
「やだ‥‥‥おばさまったら」
頬を赤らめて、困ったような顔をしている。
「そこらへんでいいだろ。もう行こうよ」
「あ‥‥‥そうね。それじゃ失礼します」
詩織が軽く頭を下げると、知子ちゃんもそれにならって頭を下げた。
ほんとに素直でいい子だな。
十年後。どんな風になっているのか楽しみだ。
その時、俺は詩織と一緒に知子ちゃんと会う事が出来るだろうか‥‥‥
「知子ちゃん、ばいばい」
母さんが手を振ると、知子ちゃんも嬉しそうに手を振った。

「知子、今日はちゃんといい子にしてた?」
「うん、してたよ」
食卓を囲んでご飯を食べている時に、知子ちゃんのおばさんが言った。
詩織の親父さんは、仕事で遅くなるとの事で、食卓で男なのは俺一人だ。
「知子ちゃん、いい子でしたよ」
「そうよね。知子ちゃん」
俺達がそう言うと、本当に嬉しそうにニコっと笑った。
「ほんとに今日はありがとう。…君」
知子ちゃんのおばさんが、知子ちゃんとそっくりな笑顔を見せた。
「いえ‥‥‥僕も楽しかったですから」
「そういえば‥‥‥ …君、小さい時から面倒見良かったものね。
 随分詩織の面倒見てもらったし‥‥‥」
「お母さん!」
詩織が、顔を赤らめながら困ったような表情で言った。
照れているのだろうか。
それとも、恥ずかしいのだろうか‥‥‥
「なぁに、詩織ちゃん。照れてるの?」
「叔母さんまで‥‥‥」
困っている詩織を見て、俺は苦笑した。
面倒見が良かったなんてとんでもない。
覚えているのは、小さいながらも詩織を守りたいと思ってただけだ。
いや、守りたい‥‥‥というより、あの頃は、ただ単に悲しい顔とか泣いた顔とかが見たくなかっただけかもしれない。
それが、いつから「守りたい」に変わったのだろう‥‥‥
守りたいと同時に、胸の高鳴りもついて回った事を、いつか伝えられるだろうか‥‥‥
「知子ね、またこんどお兄ちゃんとお姉ちゃんといっしょに遊びに行くんだ」
割り込むようにして、知子ちゃんがおばさんとおふくろさんに向かって嬉しそうに言った。
「あら‥‥‥ほんとにごめんなさいね。知子のわがままで‥‥」
ゆるやかに苦笑しているおばさんに、詩織は小さく首を振った。
「違うの叔母さん。わたし達が誘ったの‥‥‥だから」
俺はその言葉にうなずいた。
わたし「達」か。
なぜかだか、少しだけ嬉しい気がする。
「ええ、だからまた知子ちゃん連れて遊びに来てくださいよ」
「ね、ママいいでしょ?」
「そうね‥‥‥知子が小学校に入学したらまた来ましょうか」
「ほんと?」
「ほんとよ。でも良い子にしてないと、お姉ちゃん達だって遊んでくれないわよ」
「知子、いい子にしてるもん」
どこか必死な表情。
そんなにまでして約束を守ってくれようとしているだけで十分だよ。知子ちゃん。
嬉しさで一杯だ。
「知子ちゃん、次来た時にはもっといろんな所行こう。だから必ず遊びに来てくれよ」
「お姉ちゃん達、待ってるからね」
「うん!」
元気な返事と笑顔。この笑顔を裏切る訳には絶対にいかないな‥‥‥
「…、おかわりする?」
詩織が俺の茶碗を見ながら言った。
「え?‥‥あ」
空になっている事に今気づいた。
「それじゃ‥‥‥もらおうかな」
「うん、遠慮しないで一杯食べてね」
ニッコリ笑って、差し出した茶碗を受け取った。
「知子も食べる。おかわり」
それを見たおふくろさんが、おかしそうに笑いながら
「詩織の小さい頃にそっくりね。知子ちゃん」と、可笑しそうに笑うと「お、お母さん!」
詩織があわてながら言った。
「そういえば、そうでしたよね」
「やだ、納得しないで」
俺が冗談まじりに言うと、さらに困った表情を付け加えた。頬の紅みも一緒に。
こんな時間を過ごせる事が、たまらなく楽しい。
隣同士だから‥‥‥か。
いいな。こういうの。
おふくろさんやおばさんの笑顔。
知子ちゃんの笑顔。
そして‥‥‥詩織の笑顔。
うちの家族に笑顔が乏しいという訳ではないけど、
やはりいつもと違う笑顔があるというのは、新鮮だ。
ましてや‥‥‥‥一番好きな笑顔がそこにあるとなれば。
その一番好きな笑顔を浮かべてくれる、一番好きな人から受け取ったおかわりのご飯が盛られた茶碗が空になるまでは、この時間は続きそうだ。

「それじゃ、姉さん。お世話になったわ」
「また‥‥知子ちゃん連れて遊びに来なさいね。詩織も…君も待ってるんだから」
「うん‥‥‥」
おばさんとおふくろさんが話しているのをよそに、俺達は知子ちゃんと一緒に居た。
玄関の明かりが、少し弱々しく感じるのは、別れの時間だからだろうか。
外の冷たい空気も、いつもより身に染みる。
「知子ちゃん‥‥‥お姉ちゃん。とっても楽しかった」
しゃがみこんで、知子ちゃんの手を両手で掴んでいる。
「また遊びに来てね。お姉ちゃん達待ってるから」
「‥‥‥」
黙ったままの知子ちゃん。何も言おうとしない。
最初に俺と会った時にも似た表情。
「知子ちゃん。そんな顔してたら、お姉ちゃんが困るよ」
俺もしゃがみこんで、目線を合わせた。
「やだ。帰りたくない」
子供らしいわがままな顔が出てきた。
つつけば泣き出してしまいそうなほど、不安定な表情に見える。
「知子ちゃん‥‥‥わかって。
 お姉ちゃん達と約束したでしょ?
 今度遊びに来た時一緒に遊ぶって。その時までいい子にしてるって。
 だから‥‥‥ね」
詩織の表情に寂しさの色が濃くなっていった。
俺にもどうすることの出来ない表情に。
「わがまま言ってたら、お兄ちゃん達、ほんとに遊んであげないよ」
「やだ。そんなのやだ」
「だったら‥‥‥」
そんなわがままが、ふと可愛くなって、俺は知子ちゃんの頭に手を置いた。
「俺だって‥‥‥お兄ちゃんだって、知子ちゃん帰っちゃうのは寂しいと思ってるけど、また来てくれるって約束してくれたから、平気だよ」
「‥‥‥‥」
「お姉ちゃんも、今は寂しいけど‥‥‥でも、お兄ちゃんと同じだな」
詩織の寂しそうな瞳が、優しさに変わっていく。
その瞳に、安心したのか、知子ちゃんの表情にも柔らかさが出て来た。
「‥‥うん」
「ありがとう。お姉ちゃん、すごく嬉しい」
そう言って、知子ちゃんをそっと抱き締めた。
俺はただなにも言わずに、そんな二人を見ていた。
笑顔な二人の方が、ずっといい。
知子ちゃんが、チラっと俺を見て、小さく小さく微笑んだ。
「詩織ちゃん、…君。ほんとにありがとうね」
おばさんが、微笑んだ。母親の顔で。
詩織にも、いつかこんな微笑みを浮かべられる日はくるんだろうな。
「いえ、お礼を言うのはこっちの方です。
 また‥‥‥必ず知子ちゃん連れて遊びに来てください」
「ええ、もちろんよ」
「良かったなぁ。知子ちゃん」
そう言うと、詩織に抱き締められたままの知子ちゃんは、にこやかに笑いながら頷いた。
「それじゃ‥‥ね。知子ちゃん」
ゆっくりと知子ちゃんを離しながら、柔らかく微笑む詩織。
その微笑みに、一瞬目を疑った。
さっきのおばさんの、優しい微笑みと同じ笑顔に。
‥‥‥そうか、短いとはいえ、詩織は知子ちゃんにとってお姉ちゃんでもあり、ママでもあったわけか‥‥
「さ‥‥‥行きましょ。知子」
おばさんが知子ちゃんの手を握った。
「それじゃ、姉さん。またね」
おふくろさんは無言で頷く。
「詩織ちゃん、…君‥‥‥またね」
「お姉ちゃん、お兄ちゃん。さようなら」
寂しそうに、知子ちゃんが小さく呟いた。
「‥‥‥違うよ。こういう時は、「またね」って言うんだ」
俺もしゃがみこんで、知子ちゃんの頭にポンと手を置いた。
「またね‥‥‥知子ちゃん」
「‥‥‥うんっ! またねっ。お兄ちゃん、お姉ちゃん」
パッと明るい笑顔が広がっていく。
その笑顔は、今日見た知子ちゃんの最後の笑顔‥‥‥
今度会った時は、もっと元気な笑顔を見せてくれそうな予感がする笑顔。
門を出て、おばさんと知子ちゃんがどんどん遠ざかっていくのを、おふくろさん、詩織と一緒に見ていた。
夜の闇に溶けていきそうなほど離れたころだろうか。
知子ちゃんが振り返って手を振った。
俺より先に、詩織が手を振り返す。
「またねぇ。知子ちゃん」
その言葉に、きっと知子ちゃんは嬉しそうに、ニッコリ笑ったに違いない。
やがて、おばさんと知子ちゃんの姿は夜の闇に霞んで見えなくなった。

「今日は‥‥‥本当にありがとう」
うちの門の前まで来てくれた詩織が、そう言って微笑んだ。
「うん‥‥‥」
何度も聞いたありがとうの言葉。
なぜだか、俺もそう言いたい気分だ。
「とっても楽しかった。それに‥‥‥とっても嬉しかった」
「え‥‥‥どうして?」
嬉しかった。その台詞にドキっとさせられた。
「だって‥‥‥」
「ん?」
聞き返すと、小さく首を振った。
「なんでもない。なんでもないの‥‥‥‥」
それでも、変わらない微笑み。
「そっか‥‥‥」
いつでも、言葉より微笑みが、たくさんの事を伝えてきてくれたような気がする。
「それより‥‥‥今度知子ちゃん来た時、どこへ行きましょうか?」
「そうだなぁ‥‥‥って、確か動物園行くって事になってたんじゃなかったっけ」
「ちゃんと覚えてたのね。えらいえらい」
悪戯っぽく笑いながら口元に手をやっている。
「俺、なんかすっかり知子ちゃんと同じ扱いされてないか?」
「そうかも」
可笑しそうに笑っている。
「‥‥‥良かった」
その笑顔を見て安心したせいか、思わず口からこぼれた。
心の中だけで言おうとしていた言葉だったのに‥‥‥
「え? なにが?」
「いや、知子ちゃん帰って、寂しがってるんじゃないかと思ってさ‥‥」
そう言うと、詩織は、小さく‥‥‥目だけでうつむいた。
「また‥‥また来てくれるって、約束したから‥‥だから‥‥‥」
「そっか‥‥‥そうだよね」
「でも、やっぱり‥‥寂しいな‥‥‥」
消え入りそうな言葉と一緒に、微笑みを浮かべた。
微笑んでいるのに、寂しそうだ‥‥‥
寂しいのは、俺も同じだった。
明日になったら、また知子ちゃんが詩織に連れられて、うちに来るような気さえする。
「詩織‥‥‥」
「あ‥‥‥ごめんなさい。こんな事じゃお姉ちゃん失格ね」
そう言って、苦笑する姿が胸にチクっと刺さった。
こういう表情、見るのが辛いのは昔から変わらない。
「そんな事ないって。
 知子ちゃんと居る時の詩織、すごい優しそうで、どこから見てもお姉ちゃんって感じだったよ」
「‥‥‥ほんとに?」
「ほんとだって。でも‥‥あんな優しそうな詩織見たのって、初めてだよ‥‥‥‥」
「‥‥‥ありがと。嬉しいな」
苦笑が完全に消えた。代わりにドキっとするような嬉しそうな微笑み。
「べ、別にお礼言われる事じゃないけど‥‥‥さ」
気恥ずかしくなって、詩織から視線を反らして鼻の頭を小さく掻いた。
「ふふっ‥‥」
いつもこうやって笑ってくれる。
子供っぽい微笑みを浮かべていた詩織が、いつのまにこんな風に優しく笑ってくれるようになったのだろう‥‥‥
あの時よりも、ずっとずっと俺の胸を高鳴らせる。
ふと、星空を見上げながら、詩織が呟いた。
「知子ちゃんが入学した頃か‥‥‥桜、咲いてて綺麗だろうなぁ‥‥」
俺も同じ星空を見上げた。
空気が綺麗なせいか、星が良く見える。
知子ちゃんが入学した頃か‥‥‥「俺達」はどうなっているんだろうか。
その頃までに、俺は自分の気持ちを伝える事が出来るのだろうか。
詩織の本当の気持ちを知る時が来るのだろうか‥‥‥
それとも、まだ知らないままなのだろうか‥‥‥
「俺達も、その頃には高校卒業してるんだよな‥‥‥」
「卒業‥‥‥そうよね‥‥‥‥」
そういえば、小さい時も、こうやって一緒に星空を見上げた事があったな。
その時は、今ほどの不安は微塵もなかったっけ‥‥‥
ただ、あの頃は詩織と一緒に居るのが楽しかった。
今はそれも変わってはいない‥‥‥胸が高鳴るようになった事を除けば。
「そうだ。卒業したら‥‥‥」
俺は頭にふと思い浮かんだ事を口に出した。
「知子ちゃんが来る前に、こっちから遊びに行くってのはどう?」
「え‥‥‥‥」
俺がどういうつもりで言ったのか、詩織には伝わっただろうか。
小さな驚きの後の沈黙が気になる。
しばらくの沈黙の後、詩織は小さく一つ頷いた。
「え?」
正直、「うん」と言ってくれるとは思っていなかった。
「うん」と言ってくれる事を期待しながら‥‥‥
そんな事で、思わず聞き返してしまった。
あの伝説の事をすぐに思い出した。
もし、卒業するときに、詩織があの伝説を信じていたら。
もし、伝説を信じるほど好きな相手が居たとしたら‥‥‥
もし‥‥その相手が俺じゃなかったら‥‥‥
そんな状況になっても、卒業したら詩織は、俺と一緒に知子ちゃんの所へ行ってくれるんだろうか。
また今度一緒に知子ちゃんと遊んでくれるよね? と言ってくれた。
その言葉、どう受け止めていいのだろう。
それとも、俺がいろいろ深く考え過ぎなのだろうか‥‥‥
ただの幼なじみとして、俺と接しているだけなのかもしれない。
「知子ちゃん、びっくりするかな‥‥‥ふふっ」
俺の混乱をよそに、悪戯っぽく笑っている。
「いいの? ‥‥‥俺と一緒で?」
「だって‥‥‥約束したじゃない。知子ちゃんと…とわたしの三人で遊ぶって」
「そ、そうだったっけな‥‥‥」
詩織の真意。
今、この場で聞きたかったが、どこかでブレーキをかける俺が居た。
「知子ちゃんのところ、ちょっと遠いけど、大丈夫?」
「え? あ、ああ‥‥‥全然構わないよ」
「わたしと一緒でも?」
「‥‥‥さっき、約束したって言ったのは詩織じゃないか」
「そうよね。ごめんなさい‥‥」
どこか安心したように微笑んでいるように見えるのはなぜだろう。
ふと黙ってしまったまま、少し沈黙がやってきた。
「‥‥‥」
「‥‥‥」
一人足りないせいかもしれない。
三人のペースで話してきた、昨日今日。
そのリズムに慣れてしまったせいだろうか。
こんな時に「お兄ちゃんお姉ちゃん」という声が聞こえない事の寂しさが、今になって染みてきた。
「それじゃ‥‥‥わたしそろそろ‥‥」
先に詩織がそう言った。
「あ‥‥‥」と、俺が呼び止める理由も無いのに呼び止めようとした時、
「あら‥‥二人ともそんなとこで何してるの?」
と、玄関から声がした。
母さんの声だ。
「なんか話声がすると思ったら、あなた達だったのね。ちょうど良かったわ。
 今お茶入れるから、詩織ちゃんも一緒に飲まない?」
母さんの誘いに、詩織は俺を見た。
「寄ってってよ。さっきごちそうになっちゃったしさ」
呼び止める理由が出来た。
母さん、ナイスタイミング。
「ふふっ‥‥‥」
「な、何かおかしいかな?」
詩織の可笑しそうな笑いには、いつも何か意味があるような気がしてならない。
「ごめんなさい。前にもこんなような事があったなぁ‥‥って。
 ほら、今年の秋にわたしが風邪引いた時にお見舞いに来てくれたでしょ? あの時に‥‥‥」
「あ、確かに」
あの時に詩織が浮かべていた笑顔。
もしかしたら、今の俺と同じ心境だったと思うのは、自惚れすぎかもしれない。
「それじゃ‥‥‥お邪魔していい?」
「ああ、歓迎するよ」
知子ちゃんが居る時のクセで、思わず手を出してしまった。
それに気づいて、引っ込めようとした手にそっと手が重なった。
外に居たせいか、少し冷たく‥‥‥でもほんのりと暖かくて柔らかい感触。
「‥‥‥!」
驚いて詩織を見ると、ニッコリと、それでもどこか恥ずかしそうに微笑んでいる。
その微笑みのせいで、鼓動が高鳴ったまま収まらない。
この鼓動を抑えられるのは、もう一人しか居ない事を、詩織に伝える事が出来ればどんなに楽になるだろう。
「また‥‥‥知子ちゃんと一緒に手つなげるといいね」
「あ、ああ‥‥‥そうだね」
ドキドキしながらも、返事が出来たのは奇跡かもしれない。
「と、とにかく‥‥入ろう」
「うん‥‥‥」


門から玄関に入るまでの短い時間。
俺はつながった手から、想いが詩織に届くようにと願った。
声にならない想い。
鼓動と一緒に届け。
そう願った。


春は、まだ少し遠い。
桜の蕾は、深い眠りの中。
蕾が眠りから覚める頃になったら、俺達は───────

anecdote : Shiori Side

「詩織、知子ちゃんをお風呂に入れてあげてよ」

お母さんが、わたしの部屋を開けるなり、そう言ってきた。
夕飯を食べ終えてから、部屋に戻って、特にすることもなくベットに座り込んで、カーテンの隙間から見える向かいの窓の向こうに居るかもしれない…の事を考えていた時だった。

「え‥‥‥わたしが?」
「お姉ちゃん。はいろ」
知子ちゃんが、お母さんと一緒にわたしの部屋をお母さんよりずっと低い位置でのぞき込んで、わたしを見つめながら、にこやかに笑った。
さっき…と遊んで帰ってきてから、ずっと楽しそうにしてる。
でも、知子ちゃんだけじゃない‥‥わたしも‥‥‥
思い出すだけで、軽く心臓が踊り出すのを感じる。
顔も火照ったようにあったかい。
いつからかな‥‥‥こんな風になったのは。
気が付けば、いつも近くに居てくれたあの人。
単なる幼なじみだと思ってたのに、いつのまにか‥‥‥
「そうね‥‥‥それじゃ一緒に入ろっか」
なぜだか気恥ずかしくなったのを隠したくなった。
お母さんや知子ちゃんにはわからないのに。
「うんっ」
知子ちゃんの元気な返事。
こんな笑顔‥‥わたしも…の前で出来たらいいな‥‥‥
そしたら、笑ってくれるかな‥‥‥
そしたら、気持ち‥‥伝わるかな。
「それじゃ頼むわよ」
お母さん、そう言い残して行ってしまった。
後に残ったのは知子ちゃんだけ。
「ねえ、早く入ろ」
「今準備するから待っててね」
一人以上でうちのお風呂入るなんて、何年ぶりだろ。
そういえば‥‥小さい時‥‥‥
「お姉ちゃん、どうしたの? お顔真っ赤」
「な、なんでも無いのよ」
知子ちゃんに見透かされたような気がして、あわてた。
わたしったら何を考えてるんだろう。
‥‥‥あの時の事、…は覚えてるのかな。
そんな事を思い出してたら、おかしくなった。
ふふっ‥‥
「さ、行きましょ」
知子ちゃんを促して、部屋を出た。

「肩までつからなきゃ駄目よ」
「はぁい」
明るく返事して、肩までお湯の中に入った。
湯船に自分以外の人が入ってるってのも、なんかいいなぁ‥‥‥って感じる。
「お姉ちゃん、今日は楽しかったね」
「そうね。お兄ちゃん遊んでくれたもんね」
そういえば‥‥‥ …と今日みたいにして遊んだのって、久しぶり。
小さい頃は、よく一緒に遊んでたのを思い出した。
あの頃はお互い、男の子とか女の子とか‥‥‥そういうのは無かったっけ。
「知子、遊園地楽しみなんだ」
「あら、お姉ちゃんだってそうよ」
「観覧車に乗りたい。観覧車好きなの」
「そうなんだ‥‥‥でも、お姉ちゃんは観覧車ちょっとだけ苦手かな。
 高いところで揺れたりするし」
‥‥‥揺れても、止まっても、…が居てくれたから、恐くはなかったけど‥‥‥
そう思いながら、なんとなく腕から肩にかけて手を滑らせた。
お湯の流れが心地いい。
「大丈夫。知子がついててあげるから」
得意そうに微笑んでる。
「そう、ありがとう。お姉ちゃん心強いな」
わたしがそう言うと、ますます嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
「さ‥‥‥もう身体洗いましょ。お姉ちゃんが背中流してあげる」
「じゃ、知子もお姉ちゃんの背中洗ってあげる」
「ふふっ‥‥ありがと」
もし妹が居たら、小さい時はこんな風にしてたのかも。
お姉ちゃん‥‥‥てのも悪くないね。


「お姉ちゃんみたいな長い髪がいいなぁ」
「知子ちゃんは短い方が似合うと思うけど‥‥‥どうして?」
湯船の中で、知子ちゃんを背中から抱えながら言った。
「だって‥‥‥お兄ちゃん、お姉ちゃんの髪とか見てるもん」
「え? ほんとに?」
信じられない気持ちで、知子ちゃんに聞き直した。
わたしの事‥‥見てくれていたのかな‥‥‥
「ほんとだよ。だから知子も髪伸ばしたい」
「知子ちゃん、お兄ちゃん好きなの?」
「うん。好き」
「そう‥‥‥」
こんな風に、素直に言える知子ちゃんがうらやましい。
いつかわたしも‥‥‥言えるかな。
「‥‥さ、知子ちゃん。もうそろそろ出ましょう」
「まだだよお姉ちゃん。ちゃんと五十数えてから出ないと駄目」
「ふふっ‥‥はいはい。知子ちゃんしっかりしてるのね」
わたしより、ずっとずっとしっかりしてる。
苦笑して、知子ちゃんと一緒に五十まで数えた。

「しょっと‥‥‥」
ベットに腰掛けて、お母さんに借りてきた本を開いた。
料理の本。
明日作るお弁当‥‥‥なんにしようかな。
パラパラとページをめくっていくと、わたしに作れるかどうかわからないようなおいしそうな料理が次々と目に飛び込んでくる。
どんなお弁当作って行ったら喜んでくれるかな‥‥‥
夏に…が入院した時、お見舞いに持っていったお弁当、おいしそうに食べてくれたけど、また喜んでくれるかなぁ‥‥‥
「駄目ね‥‥‥」
そのまんまベットに倒れこんで、ため息一つ。
まだお風呂のあったかさが残っていて、身体がほわほわと暖かいけど、気持ちがなんとなく落ち着かない。
その時、ドアが開いた。
「お姉ちゃん。あそぼ」
知子ちゃんが顔を覗かせていた。
「うん、いいわよ」
思い悩んでるより、なんかしてたほうがずっといい。そう思ってわたしはうなずいた。
「わぁい」
喜びながら、知子ちゃんがベットの上にちょこんと座った。
わたしが昔着ていたパジャマを着ている。お母さんったら、ちゃんと取っておいたのね。
「このパジャマ。お姉ちゃんが昔着てたのよ」
「知子、このパジャマ好き」
嬉しそうに笑う知子ちゃんを見て、ふと頭を思い出が頭をよぎった。
昔、一回だけ…がうちにお泊りしに来た時、その時着てたパジャマが確かこれだったっけ‥‥‥
「詩織、このパジャマ好きなの」ってわたしが言った事、…は覚えてるかしら。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
思い出していたせいか、少し笑っていたわたしに気づいて、不思議そうにしている。
「ううん。なんでもない」
知子ちゃんを軽く抱き締めると、知子ちゃんは、きゃっきゃとはしゃいだ。
「あ、そうだ。知子ちゃん。そこのカーテンをそっと開けてみて」
「どうして?」
「いいから」
笑いながら言うと、知子ちゃんもそれに答えて微笑み、ベットから飛び降りて窓際に行った。
「いい? そーっとよ。そーっと」
「うん」
声を落とす必要も無いのに、なぜか声が落ちる。
知子ちゃんがそーっとカーテンを開けた。
「おとなりの窓見えるでしょ?」
「うん。見える」
「あそこ、お兄ちゃんの部屋なのよ」
「え! お兄ちゃんのお部屋?」
「そうよ。で‥‥‥今‥‥お兄ちゃんいる?」
「カーテンしまってて中見えないよ」
「そう‥‥‥」
もし居たら‥‥‥わたしはどうしてたんだろう。
少しがっかりしたような‥‥ほっとしたような‥‥‥複雑な気持ち。
「お兄ちゃん呼んでみようよ」
「えっ!」
窓を開けようとした知子ちゃんを、あわてて言葉で止めた。
「え、だってお兄ちゃん一緒の方が楽しいのに」
「それはそうだけど‥‥‥」
言ってから、あっと思ったけど、相手が知子ちゃんだったのを思い出して胸を撫で下ろした。
「知子ちゃん。もういいわよ」
「つまんないなぁ‥‥‥」
言葉どうり、つまらなさそうにして、ベットに戻ってきてちょこんと座る。
「お兄ちゃん一緒なのは、今度ね」
「ほんとに?」
「うん‥‥‥」
今度‥‥それよりも、もっとずっと先の未来、わたしの側に‥‥居てくれるかな‥‥‥
「あ、お兄ちゃん」
突然の知子ちゃんの言葉にドキっとする。
知子ちゃんの視線は‥‥‥机の上。
「そ、それは‥‥‥」
「どうしてお兄ちゃんの写真があるの?」
それがどういう事なのか、まだ知子ちゃんにはわからないのね‥‥‥
そう考えると、誰にも言えなかった事が言えそうな気がした。
「それはね‥‥‥お姉ちゃん、お兄ちゃんが好きだからなの」
言うと、なぜかスッキリした。
今まで、自分の胸の中だけにしまって置いた言葉‥‥
自分にしか聞かせた事の無い言葉‥‥‥
初めて人に聞かせた。
次は‥‥‥
「じゃあ、知子とおんなじだね」
「ふふっ‥‥‥そうね」
こんな風に素直に…の前で言えたらどんなにか楽になるかわからないけど、言えるだけの勇気なんて‥‥‥いまは無い。
「知子ちゃん、今のは絶対にお兄ちゃんには内緒にしてね」
「えぇ、どうして?」
「どうしても。ね、いい? 絶対シーよ?」
人指し指を立てて、口の前に持っていく内緒の合図をしてから、小指をたてて知子ちゃんに向けた。
「うん」
少しつまらなそうにしながらも、わたしの小指に小さな小指を絡めてきた。
「ゆびきりげんまん。嘘ついたら針千本のーます」
つまらなそうな顔が、すぐに明るくなっていく。
「ゆびきった」
切るころには、満面の笑顔。
「お兄ちゃんとはね、まだお姉ちゃんが知子ちゃんくらいの時からのお友達なの」
「いいなぁ」
うらやましそうにして、わたしをじっと見てる。
いいなぁ‥‥‥か。今まで‥‥気づかなかったけど、…が隣に住んでいるのが不思議。
そんな巡りあわせ‥‥‥誰に感謝したらいいのかな‥‥‥
「知子ちゃんは、お友達とか一杯いるの?」
「うん、居るよ」
「へぇ‥‥‥そうなんだ」
最初に知子ちゃんに会った時は、少し大人しい子だな‥‥って思ったけど最近になって会った時は、ずいぶん明るくなってたっけ‥‥‥
友達が一杯居るのもわかるような気がする。
「まみちゃんに、なるみちゃんに、あやちゃんに‥‥‥」
指折り友達を数えている知子ちゃんに割り込むようにして言葉をかけた。
「知子ちゃん。男の子の友達は居るの?」
「‥‥‥いないっ」
少し考えてから、プンと怒ったように頬を小さくふくらませた。
とってもわかりやすい。居ると言っているような物。
「いるんでしょ。白状しなさいっ」
言いながら、知子ちゃんの脇をくすぐると、はしゃぎながら身をよじって笑った。
なんか、ほんとに妹が出来たような感じがする。
妹って‥‥‥こんな風なのかな‥‥
「くすぐったいよぉ」
「正直に言わないと、もっとくすぐるわよ」
知子ちゃんに影響されてか、子供に戻ったような気がする。
あの頃、…と一緒に遊んでいた時みたいに。
こんな風なわたし見たら、…はなんて思うかしらね。
思い出した小さな微笑みも、知子ちゃんをくすぐる楽しさの笑みにそっと隠れた。
「言う、言うよぉ」
笑いながらそう言った。
「じゃ、やめてあげる」
わたしがやめても、まだ影響が残っているのか、おかしそうに笑っている。
知子ちゃんって、意外と笑い上戸なのね。
「‥‥‥ゆういち君って言うの」
「ゆういち君かぁ‥‥どんな男の子?」
「知子に意地悪するの」
「そう‥‥‥でも、知子ちゃん以外には意地悪しないんでしょ?」
「なんで知ってるの?」
不思議そうな顔をしている。
「お兄ちゃんと一緒だから」
言ってから、頭の中の止まった記憶が動き出した。
「え? お兄ちゃんもお姉ちゃんに意地悪したの?」
「意地悪っていうか‥‥‥」
そう‥‥意地悪っていうより、良くわたしに対して気の無いフリみたいなのをしてたみたいな感じ‥‥‥
学校でわたしをちょっと避けてみたり‥‥そのくせ、うちに帰ったり近所で一緒に遊ぶ時は楽しそうにしてたりして。
でも‥‥意地悪とかは絶対にしてこなかったっけ‥‥‥
根っから優しい人だから。
「‥‥‥そうね。まあ意地悪かな」
その頃は、それを意地悪とわたしも少しだけ思っていた。
「じゃ、明日お兄ちゃんに怒らなきゃ」
「いいのよ。知子ちゃんにもわかる時が来るから」
腕を訓で怒ったポーズをした知子ちゃんを見ていたら、おかしくなって口元を軽くおさえた。
「知子ちゃん。
 こんどゆういち君に意地悪されたら、こう言ってみて。
 『知子の事好きなの?』って」
「ええ〜、やだよ。
 知子、ゆういち君嫌いだもん」
「ほんとに?」
「‥‥‥‥‥うん」
すぐには答えない。それがどういう事なのかわかる。
素直すぎる知子ちゃんが可愛くなって、思わず抱き締めた。
「知子ちゃんも大きくなったら、きっとわかるから‥‥‥ね」
「知子、子供でもいいもん」
「うふふっ‥‥‥」
わたしにも、そんな事を思っていた事があったなぁ‥‥‥
今は、大きくなって良かったって思う。
…と一緒だから。
「お姉ちゃん、知子の事もお兄ちゃんには内緒にしてね」
「うん、わかったわ」
束の間の妹との話、まるで子供に戻ったような時間。
明日があるから、楽しく感じるのかもしれない‥‥‥
そんな時間が心地よかった。

「それじゃ、詩織ちゃん。お願いね」
叔母さんが柔らかく微笑みながら言った。
お母さんと居間で何やら話している所に顔を出したら、そう言われた。
「はい‥‥‥それじゃ、おやすみなさい」
わたしはそう言って、小さく頭を下げて居間の戸を閉めた。
お母さんと叔母さんも、小さい時はよく一緒に寝てたのかな‥‥‥
部屋に戻ると、知子ちゃんはすでにわたしのベットに入っていた。
「ここで寝ていいって」
そう言うと、嬉しそうに布団から顔を出して、押える事を知らないかのような笑顔を見せてくれた。
ホントに素直‥‥‥とってもうらやましい。
布団に入ると、一人じゃないあったかさを感じる。
昔、お母さんのところでわたしが一緒に寝た時も、お母さんも、同じ風に感じてたのかな。
わたしも、いつか‥‥‥子供とこんな風にする事がくるかもしれない。
ささやかだけど‥‥‥夢。
「お姉ちゃん‥‥あったかい」
「ありがと」
知子ちゃんの言葉に嬉しくなった。
「ねえ、知子ちゃん。明日お弁当作るんだけど、何がいいかな」
「お弁当?」
知子ちゃんの顔にパアっと笑みが広がっていく。
「知子ちゃんは何が好き?」
「知子、なんでも好きだよ」
「そう、偉いのね」
そう言うと、得意そうな笑顔が返ってくる。
「でも、おむすびとか大好き」
「おむすび‥‥‥」
頭の中でもやもやしていた物が形になった。
どんな物を作ったら喜んでくれるか、いろいろ考えていたけど、いまひとつピンと来るものがなかった‥‥‥
そっか‥‥おにぎりか‥‥‥
想いを込めて握ったのを食べてくれたら、気づいてくれるかな‥‥‥気持ち。
「楽しみだなっ。お弁当お弁当」
「知子ちゃんたら‥‥‥」
可笑しくて笑った。
自分が、知子ちゃんに負けないくらい楽しみにしている事に気づいたから。
「それじゃ、もう寝ましょう」
照明から伸びたスイッチの紐をひいて電気を消した。
暗くなった部屋。カーテンから消え入りそうなくらい弱い光が入ってくる。
まだ‥‥寝てないのかな。何してるのかな。わたしが電気消した事に‥‥‥
気づいてくれたかな‥‥‥
「知子、まだ眠くない」
「駄目よ。明日お兄ちゃんと遊園地行くんでしょ」
「だって‥‥‥」
「それじゃ、もう少しだけよ」
「うんっ」

「羊が六十一匹‥‥‥」
そこでいったん数えるのをやめた。
しばらく黙っていても、知子ちゃん、なにも言ってこない。
小さい寝息だけが聞こえる。
「ふふっ‥‥」
微笑みを洩らすと、その分自分も眠くなってくるのがわかった。
だんだん‥‥‥頭がほわっとしてきて‥‥
「おやすみなさい‥‥‥」
知子ちゃんと‥‥‥隣の窓の向こうに居る人に向けて、小さく言ったらゆっくりとまぶたが下がってきた。
おやすみなさい‥‥‥また明日。
おやすみなさい‥‥‥夢の中で会えたらいいね‥‥‥‥‥

ピンポーン。

玄関のチャイムが鳴った。
約束の時間。
わたしはリュックを肩にかけた。
中には、想いを一杯入れたお弁当。
「知子ちゃん。お兄ちゃん来たみたいよ」
「わぁい」
知子ちゃんが玄関を開けると、…が居た。
柔らかく微笑む姿。
わたしの鼓動が小さく弾む。
「お兄ちゃん、おはよう!」
知子ちゃんが…に飛びついた。
「知子ちゃん、おはよう」
…がニッコリ笑いながら言う。
「あ、…おはよう」
わたしは、来た事を、わざと気づかなかった風な言葉で出迎えた。
「おはよう」
そう返す…。
いつもと変わらない挨拶。
でも‥‥‥でもね‥‥‥‥‥
真っ先に出迎えたかったのは‥‥‥


わたし。

after story - Tomoko

「知子お姉ちゃん。どうしたの?」
「え‥‥‥あ、なんでもないわ。香織ちゃん」
知子は、ふと思い出したように笑う。
苦笑しているようであり、懐かしむようでもある。
「香織ちゃん、しっかり紗織ちゃんの手を握ってないと駄目よ」
「うん」
香織は、ニコっと笑いながら、紗織とつないだ手を振った。
「知子おねえちゃん。パパとママは?」
紗織が、ちょっとだけ不安そうな顔をして、知子に聞いた。
「大丈夫よ。すぐに戻ってくるから‥‥‥ね」
知子は優しそうに笑う。
彼女が見ていたのは、自分が香織や紗織くらいの歳だった頃の思い出。
お姉ちゃん。
この言葉が自分に向けられている事の不思議さと‥‥楽しさを、実感していた。
「兄さんと姉さん‥‥‥こんな感じだったのかな」
そう思いながら、知子はクスっと笑った。
香織と紗織は、なんだかわからない風でもあったが、笑顔には敏感に反応して楽しそうに笑う。
「あ、ほら。パパとママ来たわよ。一緒に行こ」
知子は、香織に手を差し出すと、香織はその手を小さな手でキュっと握った。
紗織がうらやましそうに見ている。
「紗織ちゃん、こっちきてお姉ちゃんと手つなごう」
「うんっ」
途端に輝くばかりの明るい笑顔になって、一つ頷いた。
「お姉ちゃん‥‥‥か。なんかくすぐったいな」
そんな風に思えるのも、つながった二つの小さいけど柔らかくて暖かい手のせいなのだろう。
「兄さん、姉さん!」
初めて会った時から、ずっとそう呼んできた二人の名前を呼んだ。
知子の兄と姉は、思い出の中の時と、ほとんど変わっていない。
知子にはそれが嬉しかった。

Fin

後書き

=3月14日=
よーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーやく
完成だ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
は〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
長かった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一ヶ月近くかかっちゃったよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ツカレター
でも、感無量。


39作目。
実質上、40作目突破。
30作目からは、かなりペースダウンしたけど、どうにかこうにかここまでやってきたって感じです。100作まであと60かぁ(^^;
サターン版出るまでに、60くらいまで行きたい感じ。
なんか3本ほど50Kを越えそうな勢いの物を3本も抱えて、同時進行してたからすっかり遅くなってしまった。
その間にできたTOKI44はちょっとアレだったかも失敗かなぁ‥‥‥‥
無かった事にしてください。とまで言っていいかも。
朝日奈さんファンの方、あれは無し。無しって事で(^^;
思い当たる方、すいません(^^;;;;

と、まあそんな事はいいとして。


親戚の知子ちゃん。
年齢設定が幼稚園卒業後。あるいは小学一年生。
どっちかにしようと思ったんですが、小学一年生だともうじき二年生って事で、ちょっと年齢上がりすぎてしまうので結局小学校入学前。
うーん。どうなんかなぁ
この作品のために、街で自転車とか乗ってるとき、「あ、あの小さい子は年齢いくつなんだろう?」とかそーいうのを観察するようになってしまった。
危険ですね‥‥‥
でも、直接聞けないから、わからないです。
「お嬢ちゃんいくつ?」とか「お子さん、小学生?」とかって聞く訳にもイカンし(^^;
ま、いいか‥‥‥もう完成しちゃったし。
でも、完成に一ヶ月かかった。
以前は、短いのを3時間ほどで仕上げたのに。
うーん、一体何が。

卒業寸前ってことで、揺れ動いている互いの気持ちってのを多少なりとも表現できたらな‥‥とか思いつつ、実は全然表現出来てなかったり‥‥‥やれやれ
以前出した香織よりは小さい子度が高くて、それなりにお姉さん&ちょっと母親する詩織‥‥‥なんてもいいかな。とか小さい子のお守りは、とにかくたいへんなのは身に染みている‥‥‥という実体験があるので、なんとなくそれを生かせればとか思うんですが、ずいぶん昔の事だったので忘れました(^^;
やれやれ‥‥‥(^^;
と、まあもう40作目ですね。
本当に早い。
毎日やってればこれだけたまって行く‥‥という事がわかっただけでも良しっ!(^^;

ときパで出した、あの時の詩<番外編>でこの39のXXXバージョンを出したんですが、39を読まないとわからない・・・というのをわかっていて買ってくれたのだろうか(^^;
ちょっと心配です‥‥‥(^^;
とりあえず、本を買ってくれた方の為に
TOKI39XXX.TXTは1、2日遅れてアップする事になります。
まったく同じ内容なんですが、買った人だけ早めに‥‥‥っていうまあ、気の回しすぎかもしれないですが‥‥‥そんな特典などを。
でも、結局アップしちゃうので、買ってくれた方、ごめんなさい(T_T)

(編者注…TOKI39は23話本編、同XXXは詩織編を指します)

詩織編です。
TOKI39.TXTと併せて読んでいただけると、1.5倍ほど楽しめるかも。
楽しめないかもしれない(^^;
それはおまかせしますが(^^;;;

「理想的な部分」を多く含む文章になってしまいました。
詩織が一人で居る時とか。(^^;

TOKI39XXX.TXTが、女性(しおり)の一人称って事で、監修‥‥というか意見を聞いた人に、
「女の子の実際なんて、ヒドイもんですよ(笑)」という参考意見をもらった(笑
そうだったのか・・・(笑
いずれ参考意見が生きる時があるかも(^^;

と、まあそんな感じですが。
TOKI39XXX.TXT
よろしくおねがいします(__)


作品情報

作者名 じんざ
タイトルあの時の詩
サブタイトル24:知子ちゃんといっしょ
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/あの時の詩, 藤崎詩織
感想投稿数283
感想投稿最終日時2019年04月09日 10時40分14秒

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  • [★★★★★★] 知子ちゃんかわいいぞ
  • [★★★★★★] とってもいいです!知子ちゃんも詩織ちゃんも最高です! 大作、読み応え十分でした!(^^)
  • [★★★★★★] 面白かったです。詩織ちゃん一人称と言うのも、中々イケてますね。知子ちゃんも可愛くて良いです。(^^) またまた香織ちゃんと沙織ちゃんが出てきたのは意外性があって良かったです。
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