26:また明日‥‥ [あの時の詩]

「さよなら・ばいばい・またね」

手を振る時に、そう何度も心の中で繰り返した。
また会うための、内緒のおまじない。
家が隣同士。
でも、今日はわたしは一緒には帰れない。
あなたがあなたの時間を持っているように、わたしもわたしの時間が今日はあるの。
出来るならば、あなたとの時間が多い方がいい。
でも、今日はあなたとは別々の時間。
離ればなれの寂しい時間・・・

「ああ、それじゃまた」

あの人はそう言って手を振ってくれた。
また明日会える笑顔で。
明日まで会えない笑顔で。
ちょっと胸がキュっと締め付けられる。
この切なさ。どうしてなの？
わたしも小さく手を振り返した。

「さよなら・ばいばい・またね」

心の中で繰り返す。
振り返って歩きだしてから、五歩目で後ろを振り返ると、あの人はまだ背中を見せていなかった。
わたしがそれに気づくと同時に、あの人は照れくさそうに背中をみせる。

「さよなら・ばいばい・またね」

わたしは、あの人の背中に向かって、心の中でまた繰り返した。
微笑みも伝わるように。
気持ちも伝わるように。

「さよなら・ばいばい・またね」

また明日・・・