あれからどれくらい年が経っただろう。
同じ季節を何度繰り返しただろう。
花は咲き、そして散り、また木に帰る。そしてまた春には花を咲かせる。
春。
風の中に花の香りが混ざる春。


「委員長」
俺は、すでに呼ばなくなって久しい呼び方で智子を呼んだ。
「な、なんやの、いきなり」
智子も、その名前で言われる事に、戸惑いを見せているようだ。こっちの生活に馴染んでからは、あまり出さなくなった関西弁が出てしまったらしい。
今の智子は、あの頃とは違って、幾分髪が短くなっている。
お産に合せて短くした髪が、まだ伸びきっていないのだ。
「いやな、コイツが良く飲んでるもんだから」
俺は、智子の、子供を産んだことで、さらに大きくなった乳房に吸い付いている、まだ生後一ヶ月の息子である啓介を見ていた。
「それがなんなの?」
「ちょっと思いだしちまって」
「?」
智子は、怪訝そうな表情をして、俺を見ている。
「・・・またその笑いして、なんか変な事考えてるんと違う?」
言われて、自分がニマっと笑っている事に気が付いた。
「なんだよ、忘れたのか? 俺が昔、おまえのミルク飲みたいって言ったら、いつか飲ませてくれるって言ったぜ?」
「わたし、そんな事・・・・・」とそこまで言ってから、ハっとした風に目を見開いた。
「思い出したか?」
「・・・・」
無言が答えだった。
「って事だ。だから飲ませてくれよ。いいだろ?」
「・・・・・」
智子は黙ったまま俯いている。明らかに頬が赤い。
「ちゃんと約束は守ろうぜ?」
悪戯っけを出した俺がニヤニヤしながら言うと、智子は、
「・・・・え、ええけど」と、さらに頬を赤くしながら、ぼそっと答えた。
「よし、それじゃ早速飲ませてくれ」
「!?」
智子は、今いきなり言われるとは思っていなかったのか、驚いて、眼鏡の奥の目をさらに大きく見開いた。
「駄目やて、まだ啓介が飲んでるし」
「いいじゃないか、二つもついてるんだから」
啓介の飲んでいる方とは違う方の、シャツの下に隠れている乳房に向けて、向かい合わせの体勢のまま、手を滑りこませた。
赤ん坊が吸っているすぐ横で、服の間に手を滑り込ませるというシチュエーションに頭の奥が少し痺れたような感覚になっていく。
指に力を入れず、乳房のふくらみをただ感じるように、上から包み込む感じで鷲掴みにした。
「凄いな。ただでさでかかったのに、子供産んだだけでこんなでかくなるなんてな」
「こんどはちゃんとミルクも入ってる・・から・・」
「やっぱり、吸われてると、気持ちよくなるのか?」
少し固くなった乳首を掌に感じる。
「赤ん坊の吸い方と、あなたの吸い方を一緒に・・・せんといて・・・」
「なんだ、啓介の吸い方の方がいいっていうのか?」
「そ、そういう意味やないて・・・意地悪ばっかり」
ただ手をあてがっているだけにも関わらず、智子はますます頬を赤らめていく。
こんなシチュエーションに痺れているのは、俺だけはないようだ。
乳房を包んでいた指に力を入れてみた。
子供を産む以前とはまるで違う、まるで中から押し返されているかのような弾力で、俺の指を押し返してくる。
「すごいな。パンパンに張ってるぜ」
なんどもぷにぷにと力を入れたりして、ブラの上から指先だけで柔らかく揉んだ。
「・・・も、もう、そんなにいじらんといて」
恥ずかしそうに頬を染めながら、漏れ出すような声で言った。
「わ、わかったから。いじってばかりおらんと、吸いたいんならはよ吸ってや」
智子はそう言ってから、俺から啓介の方に視線を移した。
「変な気分になってまうやないか・・」
ボソっと小さな声で呟いた。
「・・・それもそうだな。んじゃいっちょ飲ませてもらうとするか」
シャツを肩からはだけさせようと思ったが、趣向を少し変えて、乳房の上の部分のシャツだけをはだけさせた。
ずれたブラをさらにずり上げて、乳房を丸だしにさせる。
「ほんとでかくなったなあ」
改めてまじまじと見ると、その大きさが実感出来た。乳首の色も少し黒ずんでいる。
「・・・・恥ずかしいから、はようしたって」
「あ、ああ・・」
とはいいながら、向かい合わせの体勢で吸い付くには、どうにも収まりが悪い。それに横では先客が吸ってる最中だ。
「・・・膝枕の要領でやったらええんとちゃう?」
俺がどう困っているのかを見透かしたのか、アドバイスをくれた。
「お、おう」
言われた通り、一応膝枕のようりょうで智子に一旦身体を預けようとすると、俺が吸い易いようにか、啓介を片腕だけで支えた。
「なんや、小さな子供がもう一人増えた気分やな・・・」
先ほどまでの恥ずかしそうな表情は影を潜めて、代わりに優しい母親としての表情が覗きだしてくる。
逆に照れくさくなったのはこっちの方だ。
「・・・っと」
膝枕の体勢では、さすがに乳首には遠いので、肘で上半身を支えて、なんとか乳首の位置まで頭を持っていった。
「んじゃ、ま、いただきまぁす」
とりあえず、乳首に吸い付いた。なんとなく、乳くささが鼻についたが、構わず吸ってみた。
「・・・?」
出てこない。
少し力を入れて吸ってみるが、なんかじわっと口の中に生臭い物が感じる程度で、液体が出てくるという状況とはほど遠い。
吸い方が違うのだろうか?
そう思ってさらに力を入れた時、智子が「いたっ」と小さな声をあげた。
俺はビックリして乳首から口を離す。
「あ、わ、わるい」
「歯たてんといて、なんか痛くてたまらんわ」
「そうなのか、いつもは平気なのに?」
「子供を産むとしばらくは敏感になるて、産婦のセンセ言うてたわ」
へえ、そんな物なのか。ひとつ勉強になったな。・・・と、今はそんな事を考えている場合じゃないか。
「やっぱ啓介の方がうまい」
「ちくしょう、負けてられるか。もう一回だ」
「なにムキになっとんの、赤ん坊の方がおっぱい吸うのがうまいんは当然やろ」
と言うものの、呆れ顔ではなく、ダダっ子を諭すような優しい表情だ。
言ってから、クスクスと笑ってさえ居る。これが、俺のチャレンジ魂に火をつけた。
「いや、これじゃ父親としてのメンツがたたねぇ。もう一回挑戦させて貰うぜ」
覚えている筈もないだろうが人間誰しも大抵は経験者だ、やってやれない事はない。
と意気込んでから、また乳首に吸い付いた。
無理に吸おうとするから悪いんだ。もっとこう・・・奥の方からミルクを引っ張り出すような感じでやりゃいいんだな。
鼻で大きく呼吸してから、落ち着いて考えた通りに吸ってみた。
すると、口の中にじょじょに液体がたまってきた。
舌先にそれを感じた時、なんとも言えない生臭さが口中に広がってくる。
・・・・・・正直、期待したほどうまい物じゃなかった。
とりあえず、口の中にある程度溜めてから、一気に飲み込んでから、口を離した。
「・・・」
「どう?」
「・・・・・うーん」
「まずかったやろ?」
そう言ってから、可笑しそうに微笑んだ。
「なんで知ってんだ?」
智子から離れてから、聞いてみた。
「啓介におっぱい飲ませた後、またすぐにミルクが溜まってきて、乳が張るねん。
そしたら、しぼっとかへんと、痛くなるし服も汚れるんよ。
だから、たまに絞っとかなあかんねんけど、その時、ちょっと飲んでみたんや」
「なるほどねぇ・・・」
「期待しただけ損してへん?」
「・・・・・・」
正直、うまい物かどうかはともかく、まずい物だとは思わなかったが、それに関しては確かにに期待は裏切られた・・・・が、一応願望だけは叶った形になった。
それはそれで結果はどうあれ満足には違いない。その事だけでも、まずい物がうまいとさえ思ってもいいかもしれない。
「おまえのだから、まずいなんて事もなかったぜ」
「お世辞言ってもなんも出えへんよ。べつにわたしが味作ってる訳やないし」
両腕で啓介を支え直しながら言った。表情は微笑みのまま。
「いや、お世辞じゃないぜ。ほんとだ」
「・・・・そう。そやったらええけど」
ニコリと笑ったその笑顔に、胸の鼓動が不思議な高鳴りをした。
胸を叩くほどの勢いとは違った、鼓動する度に、体中に暖かい何かが行き渡るような
そんな高鳴りだ。優しい気持ちになる。
「・・・なあ」
「ん? なに?」
「こいつも、大きくなったら、こーいう事考えんのかな?」
まだ飲んでいる啓介のぷにぷにとした頬をつつきながら言った。
「こういう事って?」
「ミルク飲みたいかとか、そーいう事」
「ば、馬鹿いいなや、そんなのはあなただけで十分や」
「いいや、わからないぜ。こいつは俺の息子だしな」
「ちゃうわ、わたしの息子」
俺の方を見ずに、啓介を優しい瞳で見つめている。
「あんたは父ちゃんみたいになったらあかんねんで」
ちゃかすように、啓介に語りかけている。
そんな姿に、また暖かい物を感じて、思わず智子の肩に手を置いてから、スッと頭を優しく引き寄せた。
「・・・・!」
「これからも、ずっと・・・一緒に居ような。
もう一人ぼっちには絶対に戻してやらないからな。
それに・・・・戻りたいって言っても駄目だぜ・・・」
俺は、ゆっくり、一言一言に想いを込めながら言った。
「・・・・・・・・・・・うん」
空気に溶けたような小さな返事が聞こえてきた。
見なくても、どんな表情をしているかわかる。
そんな返事だった。

Fin

後書き

 知っている人は、またこのパターンか!とお思いでしょう(爆
そうです、このパターンです。
(文の細かい中身はテキトーですので、誤解なきよう(^^;)

 いやぁ、委員長イイっすよ。
もうサイコーっす。
マイハートを激しくゲットしたキャラ・・ぅぅ(^^;
気の強い・・っていうか、意地っぱりな所がたまらんね。
強い子がみせる弱い部分を見せられた日には、漢としては
なんとかせにゃイカンって感じになってしまう。
俺的ベストキャラかもしれない。
Hシーン時の「い、いつか飲ませたってもいいけど」っていうあの台詞も効くッス。
あれは、こんな幸せが未来まで続いたらええっていう、彼女なりの
ぎこちない返事なんでしょうね。

 まあ、総じて主人公のHシーンの時の言動は、なんかすっかり
姓技の味方かおまえは!って感じで、どうしようもなく
イヤな時があったりして、、、(^^;
細かい描写にかまけ過ぎてて、肝心の「ハート」のあたりが、
若干薄いと感じる部分さえもあるっす。
もちろん「おお、ハートがあるな」っていうシーンもバッチリ
あるんですけどね(^^;>Hシーン。

 まあ、とにかく委員長(750ライダー)はいいって事で。オイ

 しっかし、まあ・・・・こーいうのを書くのも久しぶりです(^^;
昔は、詩織のではらわたが恥ずかしくてよじれそうになるのとか
たくさん書いてたのに・・(笑


作品情報

作者名 じんざ
タイトルTo Heart系のアレ
サブタイトル保科智子
タグToHeart, ToHeart/ToHeart系のアレ, 神岸あかり, 保科智子, 来須川綾香, 長岡志保, 藤田浩之
感想投稿数285
感想投稿最終日時2019年04月09日 23時58分49秒

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  • [★★★★★☆] ええはなし(?)や・・・。
  • [★★★★★☆] 目を付けるところが違う、こんなエピソードも「アリ」だよなぁと妙に一人で納得してました。
  • [★★★★☆☆] ありがとう。夢をかなえてくれて(笑)
  • [★★★★☆☆] arigatou.
  • [★★★★☆☆] 「飲みたいなあ」を実現するSSとは、やられました(笑)
  • [★★★★★☆] やはり、母乳を飲んでみたいってのは漢の浪漫ですな(笑)
  • [★★★★★☆] ゲームやってないけど読んで良かったと思える。ということはゲームやればもっと良いのくわっ?
  • [★★☆☆☆☆] HなSSは久しぶりに堪能しました。「瑠璃色の雪」か?
  • [★★★★★☆] この世界を覗くのは最近のことなのですが・・・まさかこの話がよめるとは・・・ただシチュエーション的にほのぼのはしてもHにはなんないですね。PCではすげーHかったのに、へへ。
  • [★★★★★★] 委員長最高でした。
  • [★★★★☆☆] すこし、はずかしいぞこれは。
  • [★★★★☆☆] これからもがんばってヾ(@^▽^@)ノ
  • [★★★★★★] ええ話…だろう。たぶん。最後だけ。こういうはシチューエーションは好き。問題なのはJINZA氏がなぜ味をしっているということだ
  • [★★★★★☆] 髪が短くなったという設定がけっこう萌え萌え
  • [★★★★★★] 委員長への「愛」が感じられる! イイです!
  • [★★★★★★] 委員長の新作SSまた読みたいです(*^○^*)
  • [★★★★☆☆] この作者で他の新しい委員長小説が読みたいです