「うっそー!! 詩織が???」
「ホントもホント。オオマジ。夕べの突撃Q、聞いてればよかったのにぃ」
「ね、ね、何の話? ひな〜」
「あ、ユキ。あのね夕べのラジオでね……」
きらめき高校のスピーカー、朝日奈夕子が快調に校内に噂を広めて回っている。
あの、マドンナ藤崎詩織がラジオのクイズ番組で全問正解して10万円を獲得した、というものだ。
もっとも、口から出任せではない。オオマジだ。

「でさ、……というわけなんだよ」
「へぇ〜あの藤崎さんが……やっぱりできる人は違うね……」
「だろ、お、沢田、ちょっといいか? 昨日のラジオでさ……」
こちらはこちらで早乙女好雄が同じように噂を広めて回っている。
「なるほどね……。俺も出てみようかな?」
「無理無理、そう簡単に正解できるもんか」
「だって……全問正解しなくても、1問できれば5000円だろ。ちょっとした小遣いだぜ」
「あ、なるほど……」
こうして、きらめき高校の生徒の間で次々とクイズ熱が高まっていくのであった。

「ふ〜……夕子、あんなもんでよかったのか?」
「あ、ヨッシー。OK、OK。これも、私の壮大な計画なんだからね」
「だからその計画ってなんだよ?」
「いいからいいから。今年の夏こそ……燃えるわよ!!」
帰り道、好雄と夕子が話ながら歩いている。
話の内容からして、夕子は意識的にクイズ熱を煽っているようだ。
「ところで、わすれていないだろうな?」
「忘れていないって。大丈夫。お弁当一週間分っしょ。ちゃんと沙希に頼んでおくから」
「当たり前だ。お前の弁当なんか食えるか」
「あ、言ったな!」
「何を! でも、本当に虹野が俺に弁当作ってくれるのか?」
「大丈夫、沙希は親友だからね」
「お前が思っているだけだったりして……」
「何ですって!」
結局はこの二人、いいコンビであるのはまちがいない。
「なぁ、夕子……」
「なに? ヨッシー」
「いったい、何を企んでいるんだよ」
「う〜ん、どうしようかな??」
夕子はしばらく考えた結果、
「教えて欲しい?」
「いや、いらねぇ」
「あ、素直じゃないんだ」
夕子はぷっと頬を膨らませた。
「あのね……」
夕子は計画を話し始めた。
「ほら、日本テレビの『全国高等学校クイズ選手権』ってのがあるでしょ」
「あぁ、毎年夏にやってる奴だろ、なんて言ったっけ?
 あ、そうそう『クイズの甲子園』ってやつだろ」
「あれにでてみないかな、なんてね」
「お前……マジか?」
「だって、優勝者はアメリカ旅行と賞金……あっと賞金って言っちゃいけないんだ。
 研修費用2000ドルだよ。燃えるじゃん」
「そりゃ、優勝すればの話だろ」
「大丈夫、そのために、シオリンを巻き込もうってわけよ」
「おまえ……計算高い……」
「へっへ〜朝日奈夕子様のする事に抜かりはないっしょ」
好雄はもう一つ疑問に思ってる事を尋ねた。
「ま、それはいいとして……じゃ、なんで学校の連中のクイズ熱を煽ってるんだ?」
夕子は少し考えて答えた。
「ん〜、ま、言うなれば『保険』って奴かな?」
「保険??」
「最悪、私が優勝できなくっても、きらめき高校からたくさん出しておけば、うまくすりゃ一チームくらい勝ち残れるかな、なんて思ってるわけ」
「それで?」
「うまくいけば、決勝戦かなんかで、『こちらきらめき高校です』なんて中継が入るかもしれないっしょ。
 最悪、テレビには映れるじゃん」
「そりゃ、一チームでも、決勝に残ればの話だろ?」
「だから、言うじゃん『下手な鉄砲も粕が撃てば当たる』って」
「おまえ……それは『数撃てば』だろ……」
「あ、そうともいうか?」
「そうとしかいわねぇよ」

こうして夕子の企みがうまくいったせいか、はたまたもともと、この学校に適正があったのか、きらめき高校ではクイズが盛り上がっていった。

「んじゃ、いくよ。『重さが4gの日本の硬貨は?』」
「え〜と……」
「はい、50円!」
「正解!」
「じゃ、次はあたしね、『歩く姿が人に似ている事から人の鳥、人鳥と呼ばれる鳥は?』」
「え、わかんなぁ〜い」
「ブーッ、正解はペンギンです」
休み時間ではあちこちでお互いがクイズを出し合っている姿がみられるようになった。
(ぉぃぉぃ……ホントかよ……(^^;)

そんなある日、詩織は自分の部屋でパソコンに向かっていた。
RT(チャット)でやるクイズ大会は今日はないので会議室を見て回っていた。
(だれかのレスがついてるかな??)
先日、詩織が会議室に書き込んだ発言はこうだ。

03442/03442 ******** シオリン    もりあがっちゃって……(^^;
( 9) 98/06/11 00:11

どうも、シオリンです
先日のラジオ「突撃Q」で全問正解しちゃったのが学校で話題になっちゃって
最近、まわりでクイズの話題がよく出ています。
私にしてみれば嬉しいんだけど……なんか違う方向で盛りあがっちゃってるのよ
ね。だって、私は純粋にクイズが好きだからやってるのに……みんなは賞金だと
旅行だとか……。そんなんじゃないんだと思うんだけど??

シオリン(********)

詩織がパソコンを操作をしていると、案の定、レスがついていた

03472/03477 ******** 北海の帝王   RE:もりあがっちゃって……(^^;
( 9) 98/06/12 22:15 03442へのコメント

シオリンさん、こん●●わ。
シオリンさんと同じ高校生の北海の帝王です。

最初のきっかけはどうでも、最終的にみんながクイズが好きになってくれれば
いいんじゃないでしょうか? 僕たちなんか、北海道の田舎町の高校ですから
目指せ! 東京・全国大会! で盛り上がってすけど。

また、暑い、「高校生クイズ」の夏がやってきます。今年こそ予選を突破して
東京の全国大会に行きたいです。シオリンさんも当然参加するんでしょ?
東京で会えるといいですね>シオリンさん

北海の帝王


(はぁ……)
回線を切ると詩織は大きなため息をついた。
(出たいな……高校生クイズ……公くんと……)
詩織は鞄から生徒手帳を取りだした。
そして、生徒規則の部分を開く。
『生徒規則 第52条 きらめき高校生徒のテレビ番組への出演は原則として禁止する。
 これは芸能活動にかぎらず、一般出演の番組も同等である』

この条文があるかぎり、高校生クイズには出られない。
先日のラジオの件も職員室で問題になったが、詩織の、
「生徒会規則には『テレビ』としか記載されていません。
 よってラジオである先日の件は問題ないと考えます」
という、職員会議での弁舌で結局不問となった。
しかし、……さすがにこれはむりだろう。
(出たいな……高校生クイズ……公くんと……一緒に……)

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜
サブタイトル02:「詩織、悩む」
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜, 藤崎詩織, 主人公, 朝日奈夕子, 早乙女好雄
感想投稿数43
感想投稿最終日時2019年04月11日 09時43分48秒

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  • [★★★★☆☆] 生徒規則がなければ、「すごく良かった!」になったのに・・・。私の勝手な感想です。