詩織の「高校生クイズに出たい」と言う気持ちは日に日に大きくなっていった。
しかし、校則の事がある以上どうしようもない。
詩織は悩んだ末、パソコン通信仲間に相談する事に決めた。
同じようにクイズが好きで、でも、校則の壁で、と言う経験をした人は必ずいるはずだ。
早速、会議室に書き込みをした。

03501/03501 ******** シオリン    出たいのに……
( 9) 98/06/14 23:47

どうも、シオリンです

高校生の私にとって、「高校生クイズ」という存在はとても大きいです。
でも、私にとってそれ以前の大きな壁があります。それは「校則」なんです。
「テレビ出演禁止」という校則が、わがK高校にはあるんです。
みなさんのなかで、こういう経験のある人いますか?
いたら、どうやったらいいか教えて下さい。
私、どうしても出たいんです。>高校生クイズ

シオリン(********)

(これで、よし!)
詩織は、適切なアドバイスが得られる事を願って、床についた。

翌日、詩織が昼休みに中庭で友人達とお弁当を食べていたとき、一人の訪問者があった。
「やっほー! シ〜オリンッ!」
この呼び方をするのはパソ通のメンバーを除けば……ただ一人である。
「朝日奈さん、どうしたの?」
詩織は口の中の卵焼きを慌てて飲み込んで返事をした。
「ちょろっと、シオリンに話があんだけど〜、いっかな?」
「私は別にいいけど……食べながらでいいでしょ」
返事を聞くや否や、夕子は詩織の肩を掴むと、
「シオリン! 私と日本一を目指そうよ!」
「???」
夕子の言ってる意味が理解できない詩織は返事をする事が出来なかった。
「だーかーら! 私と頂上を目指さない?」
「朝日奈さん、何の話か聞いていないんだけど?」
「うん、まだ言ってないからね」
詩織の隣にいた友人が思わずガクッとずっこけた。
「そこのあんた、御協力感謝!」
余計な突っ込みを入れた後、夕子は続けた。
「あのね、私さ、シオリンと高校生クイズで日本一を目指そうかなぁ、なんて思ったりしてるわけ。
 シオリンと私が組めば百人力、絶対優勝できる!かもね」
「あの……」
詩織が返事しようとしたとき、詩織の横に座っていた女の子があきれた様子で夕子に言った。
「ひなぁ……あんた、もっかい生徒手帳読んだ方がいいよ」
「何がよ」
「だから、生徒手帳開きなさいって」
横で、詩織も夕子に向かって目配せした。
しぶしぶ、夕子はセーラー服のポケットから生徒手帳を取りだし開いた。
「朝日奈さん、生徒規則第52条を見てくれる?」
詩織は夕子に言った。
夕子は生徒手帳をめくった。
「……え〜と……………………あ、ここだ。なになに?……………!!!!!!
 ガガーーーーンンンンン!!!!!!」
夕子は思わず後ろにずっこけた。そこに誰かいたのか、背中がぶつかった
「痛っ! 誰よ、後ろにいるのは? なんだミオじゃないのぉ。どったの?」
「あ、その……呼ばれたような気がしましたので……これで、失礼します」
未緒は『ガガーーーーンンンンン!!!!!!』と書かれた看板を持って立ち去っていった。

「だからね、朝日奈さん。テレビに出られない、ということは、……」
全部説明を受けるまでもない。それくらいは夕子にも理解できる。
「出場できない……ってこと?」
詩織は無言で頷いた。
「どうしてもだめなの?」
「多分……」
「ウッソーーーー!」
落胆する夕子を見た詩織はつけ加えた。
「だからね、私も何とかしたいな、って思ってるの。何とか方法は見つけるから。
 朝日奈さん……その時は協力してくれる?」
「もちろん! で、どうやんの?」
「それは今考えてるんだけど……」
話をしているところに、社会科の教師である赤井が通りかかった。
「ん、藤崎じゃないか。この間の職員室での剣幕は凄かったな。校長先生も驚いてたぞ」
「あ、赤井先生……」
この赤井という教師はけっこう博学で通っていた。いろんな事を知っているのだ。
「しかし、意外だったな。藤崎がクイズに熱中しているなんてな」
そう話していた赤井が突然詩織に向かって言った。
「問題・もともとポルトガル語では貴族、スペイン語では王族、イタリア語ではローマ法王に使われた敬称といえば何?」
「『ドン』です」
「さすがだな。じゃ問題・サッカーでJリーグチャンピオンと天皇杯優勝チームが戦う試合を何という?」
「え〜と……」
詩織が考えていると
「ゼロックススーパーカップ!!」
夕子が手をあげながら答えた。
「正解、ほう、こういう問題は強いんだな、朝日奈」
「もちよ!」
「その勢いで、今度の日本史のテストも頑張ってくれや。
 あ、言っとくが、この前のようなカンニングがあったら、俺はもう庇わないぞ」
「あいた〜、先生、それは勘弁してよ〜」
「ほら、チャイムがなるぞ。授業の準備急げ」
そう言って、赤井は職員室へと走って行った。
詩織達も弁当を片づけると教室に急いだ。

帰宅した詩織がアクセスすると、昨日の発言にレスがついていた。
それはクイズフォーラムの常連、ダッチマン氏だった。
結構、物知りのダッチマン氏は水曜のクイズ大会でも頻繁に優勝しているアクティブメンバーだ。
詩織もよくチャットで話をする。

03505/03512 ******** ダッチマン  あきらめるな!
( 9) 98/06/15 01:15 03501へのコメント

シオリンさん、どうもです。

そういう校則のある学校って、あるんですよね。
クイズ好きの一個人としては、
「あきらめるな! 校則を変えるように努力せよ!」
とアドバイスしたいです。

#最悪、黙って出ちゃう、という裏技がありますが……(笑)
退学とかになったらたいへんですもんね。

校則を変える。先生達を真剣に説得すれば……道は開けると思います。
味方になってくれそうな先生いませんか? そう言う人を巻き込みましょう。
何はともあれ、シオリンさんが無事、出場する事を願っています。

ダッチマン

(そうよね……最初から諦めていちゃだめよね)
ダッチマン氏のアドバイスに詩織は校則改正要求を職員会議に出す事を決めた。
(赤井先生なら……味方になってくれるかな? あの先生は結構クイズ好きそうだもんね)
詩織はレポート用紙に、嘆願書を書き始めた。
(あ、署名もあった方がいいわね)
そう考えて、詩織は夕子に電話をかけた。


Trrrrr……Trrrrr……ガチャ

「もしもし朝日奈です」
「あ、朝日奈さんですか。私、藤崎と申しますが……」
「あ、シオリン、夕子だよ!」
「あのね……明日から校則改正の署名を集めようと思うんだけど……朝日奈さん、手伝ってくれる?」
詩織は夕子のパワーに期待した。それに夕子の人脈を使えば……署名もかなり集まるだろう。
策士といわれようと、とにかく校則改正をすることが詩織にとって最優先の目標だった。
「え、やるの? シオリン。もち、協力するよ。一緒に出ようね」
もちろん夕子にも異存はない。アメリカ旅行……もとい、遠大な計画のためだ。
「じゃ、明日から集めようと思うんだけど……朝7時半に学校の校門でいいかな?」
「げ、7時半……早すぎるよ……」
毎日、ぎりぎりの時間に登校する遅刻常習犯の夕子にとって7時半は早すぎる。
「だって……みんなが登校する時に集めようと思ったら、それくらいに行かないとだめでしょ」
「…………」
夕子は考えた。
(一応「行く」って言っておかないと、まずいよね……。でも、起きる自信ないしな……
シオリン一人で署名集めさせるのかわいそうだし……あ、そうか!)
「ねね、シオリン。二人でやるの?」
「そのつもりだけど」
「こういうのは人数いた方が便利なんだよ。
 ヨッシーにも手伝わせるからさ、シオリンは公くんに声かけておいてよ。
 4人で集めたほうが早いって!」
こういう悪知恵はよく働く。
最悪自分が行かなくても、3人いればなんとかなるだろう、というのが夕子の考えだった。
「ん〜、それもそうね。じゃ、早乙女くんには朝日奈さんから連絡しておいてくれる?
 公くんは私が言っておくから」
「OK! じゃ、明日だね。それと……その朝日奈さん、ってのやめてくれない?
 これからは、同じ目標を持った戦友なんだから」
「あ、そ、そう? え〜と……それじゃ……」
「『ひな』でいいよ」
「じゃ、ひなちゃん。明日からがんばろうね」
「OK!シオリン!」
夕子が受話器をおいたのを確認して、詩織も電話を切った。
(公くんにも手伝ってもらおうかな。一緒に全国大会に行きたいもんね)
そう考えながら詩織は短縮の1番をプッシュするのだった。

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜
サブタイトル03:「詩織、決意する」
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜, 藤崎詩織, 主人公, 朝日奈夕子, 早乙女好雄
感想投稿数43
感想投稿最終日時2019年04月09日 05時13分15秒

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