ピピピピピピピ……

目覚まし時計がなっている。針は朝の6時30分を示している。
「ふぁぁ……」
布団の中からニョキッと腕が出てきた。
その腕は目覚まし時計をつかみ、なにやらゴソゴソとやっている。
しばらくはベルを止めようと片手であれこれやっていたが、面倒くさくなったのか、いきなり掴んでいた時計を床に投げた。

ガシャン!

音を立てて時計は壊れ、ベルの音は止まった。
「じゃ、シオリン、今日はよろしくね」
そう言うと、朝日奈夕子は再び眠りに落ちていった。
しかし、その瞬間だった。

Trrrrr…… Trrrrr……

枕元にある電話のベルが鳴った。
「!!!」
目をこすりながら夕子は受話器に手を伸ばした。
「あによ……朝っぱらから……」
ブツブツ言いながら、耳に当てる。
「もしもし……朝日奈夕子は今寝ております。ご用の方は……」
そこまで言いかけたときだった。受話器の奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「おはよ、ひなちゃん。朝ですよ」
声を聞いたとたん、夕子の目はいっぺんに覚めてしまった。
「シオリン!!」
電話の相手は藤崎詩織だった。
「まだ寝てたんでしょ。こんなことだろうと思った」
「な、なんで〜??」
「ひなちゃんのことだから絶対寝坊すると思って……モーニングコール。
 さ、頑張って署名を集めに行きましょ」
受話器の向こうからは詩織の含み笑いの声が聞こえる。
「わかったわよ……起きるわよ」
(やられた……シオリンの方がうわてだった……)
「それとねぇ……ひなちゃん……お願いがあるんだけど……」
「ん? なに?」
「あのね……………………………………ってどうかなって思うの……お願いできるかな??」
「あ、なるほど……さっすがシオリン! いいよ、任しといて」
「お願いするね。それじゃ、校門のところでね」
そう言うと、詩織は電話を切った。
夕子はベッドから降りると大きく伸びをした。
(さて、やるとすっか!)
夕子は、パジャマ替わりに着ているTシャツを脱ぎ捨てパンティ一枚の姿になると、タンスの中から今日着けるブラジャーをどれにするか選びはじめた。

夕子が校門のところにやってきた。7時45分。夕子にしては早く到着した方だろう。
そこでは詩織と公、そして好雄が早くも署名集めをはじめていた。
「校則改正要求の署名をお願いします」
「高校生クイズ選手権に出られるよう、校則改正に御協力お願いします」
夕子は急いで、3人の前に走って行った。
「おっはよ〜!」
「こら! 夕子、何が『おっはよ〜』だ!
 人を呼び出しておいて自分は遅刻するか、普通……」
好雄が夕子に小言を言い始めた。
「だって〜、女の子は朝は時間がかかるのよ〜」
夕子はここぞとばかりに自称『悩ましい声』で言ったが……
「あら、その割に気持ちよさそうに寝てたみたいだけど。私が電話した時」
詩織にすべてばらされてしまう。
「あ、あれはね……その……」
詩織の追求にしどろもどろになっている。そこに公が助け船をいれた。
「詩織、いいじゃないか。朝日奈さんだって悪気があった訳じゃないんだし」
「ありがと! 公くん! 今度デートしてあげるね!」
公が夕子の味方をするので詩織はプッとふくれた。仕方がないので夕子に言った。
「ほら、無駄口叩いてないで。ひなちゃん、これ用紙よ」
「OK! まっかしといて! 朝日奈夕子様をなめんじゃないよ!」
夕子は詩織から用紙を受け取ると、早速、通りかかる生徒に声をかけ始めた。


「10、11、12枚と……4人……で124人。早乙女君は?」
放課後、詩織達は3年A組の教室で今日一日で集めた署名を集計していた。
「おれは97人だ」
「こっちは108人」
公も計算を終えた。
「これで、合計が329人。全校生徒が917人だから……半分……最低450人は欲しいわね。
 あとはひなちゃん次第だけど……」
詩織は机の上につっぷした。今日一日学校中を回った疲れが出てきたようだ。
「それにしても遅いな……夕子の奴」
「ま、時間通りに現れるとは考えてないけどな」
好雄の愚痴にタイミングよく公が突っ込みをいれた。
「プッ……フフフフフフ……」
「ハハハハハハハハハ……」
「ハハハハハハハハハ……」
あまりのタイミングの良さに3人が笑い転げていると、教室のドアが開いた。
「おっまたせ〜!!」
夕子が署名の束を持って教室に飛び込んできた。
「相変わらず遅いぞ……」
好雄が文句を言おうといた時、夕子が持っていた束を机の上に置いた。
バサッ
音をたてて束は机の上に広がった。
「な、なんだこの量は?」
公が数えようとしたとき、夕子が詩織に言った。
「あたしの分。328人分あるからね」
「さ、さんびゃくにじゅうはちにんっ?!」
公が慌てて署名簿の束をチェックしていく。
「どうやってそんなに集めたの??」
「朝日奈夕子様をなめちゃいけないって言ったっしょ。
 休み時間毎に全部の教室回ったんだからね」
「は……やるもんね。これはひなちゃんに助けられたわ」
詩織はあきれたという様子で、束を全部一つにまとめた。
「全部で657人分。全校生徒数の7割を越えているわ。これで職員会議に提出すれば……」
「校則が変わるの?」
夕子が諸手をあげて万歳しそうになっている。
「ううん。先生たちが考慮してくれる、かもしれない、ってとこかな」
「え〜! これで変わるんじゃないの?」
「そりゃ、朝日奈さん。簡単には変わらないよ。
 でもこの数字は無視できないよ。場合によっては理事会が召集される可能性もあるんじゃないかな」
落胆している夕子を公が慰めた。

その時、再び教室に一人の人物が入ってきた。
「お、ここにいたのか」
社会科教師の赤井だった。その顔はすこしひきつっている。
「どうだ、署名は集まったか?」
「あ、先生。どうしたんですか?」
詩織が難しい顔をしている赤井に聞いた。
「おまえらが、朝から派手にやっているからな。緊急職員会議が召集された」
「え?」
「校長と教頭が、お前らが要求をもって乗り込んでくる前に職員会議で潰してしまおうと言う腹だろう」
「そんな……」
「で、署名は集まったのか?」
「え、ええ。657人分です」
「よし、それだけの数があれば、校長と教頭に一泡吹かせてやれる」
「先生、俺たちの味方していていいんですか?」
公が赤井の立場を心配して言った。
「俺は、お前たちにあの高校生クイズを体験させてやりたい。
 俺も昔経験した。あの頃はまだ十分クイズをわかってなかったから地区予選で負けちまったけどな。
 あれは俺にとっても思い出だ。だから校則は変わるべきだと思う。
 さ、藤崎、署名を持って一緒にこい」
詩織は赤井を味方に得た事で決心し、署名簿を手にすると席を立った。
慌てて、公と好雄も詩織に続こうとした。
「あ、シオリン一人の方がいいよ。私たちはここで待っているから」
夕子がついて行こうとした好雄と公の制服を掴み引き留めた。
何か言いたそうな夕子の表情を見て公と好雄は足を止めた。
「それじゃ、詩織。任せたからな」
「わかったわ。それじゃ……いってくるね。ひなちゃん、あのことお願いね」
「任しといて」
夕子に後を託すと詩織は赤井と共に職員室に向かった。
後には公、好雄、夕子が残った。

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜
サブタイトル04:「夕子、行動する」
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜, 藤崎詩織, 主人公, 朝日奈夕子, 早乙女好雄
感想投稿数43
感想投稿最終日時2019年04月12日 02時06分48秒

旧コンテンツでの感想投稿(クリックで開閉します)

評価一覧(クリックで開閉します)

評価得票数(票率)グラフ
6: 素晴らしい。最高!14票(32.56%)
5: かなり良い。好感触!14票(32.56%)
4: 良い方だと思う。12票(27.91%)
3: まぁ、それなりにおもしろかった2票(4.65%)
2: 可もなく不可もなし1票(2.33%)
1: やや不満もあるが……0票(0.0%)
0: 不満だらけ0票(0.0%)
平均評価4.88

要望一覧(クリックで開閉します)

要望得票数(比率)
読みたい!42(97.67%)
この作品の直接の続編0(0.0%)
同じシリーズで次の話0(0.0%)
同じ世界観・原作での別の作品0(0.0%)
この作者の作品なら何でも42(97.67%)
ここで完結すべき0(0.0%)
読む気が起きない0(0.0%)
特に意見無し1(2.33%)
(注) 要望は各投票において「要望無し」あり、「複数要望」ありで入力してもらっているので、合計値は一致しません。

コメント一覧(クリックで開閉します)

  • [★★★★★☆] ヒナちゃん凄いね〜
  • [★★★★★★] 赤井先生、グッド!!(≧▽≦)こういう先生はいつの