職員室にはきらめき高校の教師が勢ぞろいしていた。
いちばん前の席に校長と教頭が座っている。
教頭が立ち上がって室内を見回した。
「まだ、全員揃っていないようですが……時間ですので始めます。
今朝から行われている一部生徒による校則改正……」
教頭が進行を始めたとき職員室の後ろのドアが開いた。
「遅くなりました」
入ってきたのは赤井だった。
「赤井先生、時間を守ってもらわないと……」
教頭が言いかけたとき、赤井に続いて詩織が職員室に入った。
「あ、赤井先生。何を考えておられるのですか!
今日は職員会議だと言ったはずですが」
「はい、議題は彼女らが行っている校則改正問題とも聞いています。
ですから当事者である彼女を連れてきました」
詩織が署名の束を持って校長の机の前に進んだ。
署名を校長の前に置くと毅然とした態度で言った。
「本日一日で657名、全生徒数の70パーセント以上の署名が集まりました。
この署名簿をお渡しします。同時に生徒規則第52条の削除を要求します」
「な、何という傲慢な態度!! 君は……」
頭から火を吹かんばかりで教頭が怒鳴りだした。
「まぁまぁ、教頭先生。
そう熱くならないで。ここは職員室ですよ。冷静に話をしましょう。
赤井先生も席について下さい。それと……藤崎さんはそこに座ってもらいましょうか」
そう言うと、校長は職員室の反対側にある椅子を指さした。
そこは校長と教頭に向かう形になる席だった。
「夕子、お前どうして一緒に行くのを止めたんだよ」
3Aの教室では好雄が夕子に詰めよっている。
「そうだよ、詩織一人じゃ校長のタヌキ親父に丸め込まれちまうぜ」
公も納得行かないという表情だ。
「だから、行かなかったのよ。
まっかしといて! 強力な助っ人がもうすぐ来る予定なんだから」
そう言っているときに教室におさげ髪の女の子が入ってきた。
「あのう……夕子さん……は……こちらに………………あら、夕子さん…………わたくし……探しましたよ……」
「あ、ゆかりぃ! 待ってたんよ。ささ、こっちこっち!」
呼ばれた少女・古式ゆかりは教室の中に入ってきた。
「あの……朝日奈さん? どうして古式さんが強力な助っ人なんだ??」
公が夕子にたずねた。
それを聞いていたゆかりが困った表情になって言った。
「あら、まぁ……どうしましょう……わたくし……まだ宇宙には……行ったことが……ございませんので……」
「そりゃ、ゆかり、ロケットやがな!」
「では、ドラえもんさんが……便利な……道具を……」
「そりゃ、ポケットやがな!」
「では……トゥルー・ラブ・ストーリーの本田智子さんが買っている犬……」
「そりゃ、ココットやがな……って漫才やってどうすんのよ!」
「ボケの時間は終わったか?」
好雄が夕子に言った。
「誰がボケやねん……ってそれはこっちにおいといて。
シオリンは正面突破をしてくれているんだから、私たちは裏口から攻めようかな、って思っているワケ」
「あれ? 職員室に裏口なんかあったっけ??」
公が職員室の構造を頭の中に思い浮かべている。
「その裏口じゃないの」
夕子は怒った表情で話を切り替えた。
「ゆかりはね、伊集院君とは大の仲良しなんだよ」
「あ!」
公と好雄が同時に声をあげた。
「なるほど……詩織ちゃんが校長ラインから攻めると同時に……こっちは理事長ラインから攻めるってわけか……。
でも、これって……お前が考えたんじゃないだろ」
夕子の思考形態を誰よりも理解している好雄らしい言葉だ。
「あ、やっぱわかるぅ? 今朝、シオリンに電話で頼まれていたんだよ」
「やっぱり」
夕子の言葉に思いっきり納得する公と好雄だった。
「あのう……私……いったい……何をすれば……」
わけのわからないゆかりはその横でキョトンとしていた。
職員室では詩織が苦戦していた。
「だったら……水泳部の清川さんはどうなんですか?
インターハイなどで試合が何度もテレビに映っていますが……あれは校則違反じゃないのですか?」
「あれはTVに出るのが目的ではない。部活動の試合をたまたまTVが中継しているだけだ。
道を歩いていたらTVの生中継があって映ってしまったのと同じ様なもんだろう」
教頭が反論する。
「詭弁です!」
赤井が立ち上がった。
「赤井先生。発言は許可を得てからにしてもらわないと」
校長がたしなめる。
「しかし……」
赤井は机の上を拳で叩いた。
「というわけで、伊集院君にゆかりから頼んでもらえないかな。
理事長さんにうまく頼めるように……」
夕子がゆかりに事情を説明してた。
「なるほど。左様な事情があったのですか。
……夕子さんは私の心からの友人。私でできる事でしたら……伊集院さんに……」
その時教室のドアが開く音がした。
「僕が、なんだって」
声がして4人は一斉に声の方を振り返った。
「どうしたんだね。庶民の諸君! 放課後に何の相談だね」
入ってきたのは伊集院レイだった。理事長の孫である。
「なんだ。夕子くんか……。
今朝からTVにでるために何かやっているようだが……そんなにTVに出たいのなら僕に一言言ってくれれば、伊集院家私設TV局であるINNの衛星放送網を使って全世界に放送してあげてもいいのだが……」
「あのう……伊集院さん?」
伊集院は後ろ姿のゆかりに今まで気付いていなかった。
「げげ! こ、古式ゆかり!」
「あのう……わたくしから、お願いいたします。校則改正の件、伊集院のお爺様に頼んでは、いただけないでしょうか??」
「し、しかしだな……」
「伊集院さんの頼みなら伊集院のお爺様が断るわけがありません。
なにしろ伊集院のお爺様は、目の中にいれても痛くないほど伊集院さんを可愛がっておられます。
それは、たった一人の孫娘……」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
ゆかりの言葉を遮るように伊集院が叫び始めた。
「な、なんだいったい??」
公がびっくりして言った。
「し、仕方がない。
きょ、今日はお爺様は理事長室にきているはずだ。これから行くから君達も一緒に来たまえ」
「はい、お供いたします」
「じゃ、ソッコーでいこうよ」
「じゃ、行くか」
「しゃぁねぇな」
ゆかり、夕子、公、好雄も伊集院に続いて理事長室に向かった。
作品情報
作者名 | ハマムラ |
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タイトル | 栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜 |
サブタイトル | 05:「ゆかり、協力する」 |
タグ | ときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜, 藤崎詩織, 主人公, 朝日奈夕子, 早乙女好雄 |
感想投稿数 | 44 |
感想投稿最終日時 | 2019年04月10日 06時05分53秒 |
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コメント一覧(クリックで開閉します)
- [★★★★☆☆] 古式さんに頭が上がらないのは高校時代だけかな?
- [★★★★★★] 伊集院ネタは反則のような気が(^^
- [★★★★★★] とにかく笑えた。