「理不尽な事を強引に押し進める事、押すのは何車?」
ピンポーン!!!!
解答者席の前のランプに灯が点った。
「赤井先生!」
解答席のランプがついている赤井を、好雄が指名する。
「横車」
赤井は答えた。
ピンポンピンポン!
正解のチャイムが鳴り響いた。
赤井がまず1ポイント先取だ。
「さすがね……」
早押し機の状態をモニターしていた結奈がつぶやいた。
赤井 3.024…sec
藤崎 3.029…sec
主人 3.286…sec
問題が読みあがられてからボタンが押されるまでの時間。
赤井と詩織の差はたったの200分の1秒だった。
「これなら……案外勝負になるかもね」
「民話“大きなかぶ”、カブを抜くために最後に加わった動物は何?」
ピンポーン
またも赤井は「最後」のあたりで素早くボタンを押した。
「ねずみ」
ピンポンピンポン
これで2−0である。
「世界で初の動力飛行を行ったライト兄弟、彼らが初飛行を行った場所は?」
ピンポーン
「場」のあたりでボタンが押されるが、またも赤井がタッチの差で解答権を得た。
ランプがついたのは赤井であった
「キティホーク」
ピンポンピンポン
(余計なことは考えるな。全力だ……)
赤井は自分に言い聞かせた。
「人間の血管は大きく三つに別れます」
ピンポーン
「え??」
あまりの早い反応に詩織だけでなく、好雄、さらに会場も騒然となった。
「毛細血管」
ピンポンピンポン
「ちょ、ちょっとタンマ!
おかしいじゃん。問題を知ってるんじゃないの?
いくらなんでも今のところではわかんないっしょ!」
夕子が赤井に抗議した。
「うむ……言い方はともかく、私も同感ですな」
珍しく校長が夕子に同意した。
「赤井先生、ちょっと説明してもらえますか?」
理事長が赤井に声をかけた。
「問題を教えてもらっているわけではありません。
今の問題なら“血管が三つに別れる”と言う部分で【動脈】【静脈】【毛細血管】の三つのうちの一つを答えさせる問題であることは確実です。
で、この三つを見ると……どう考えても【毛細血管】以外に答えとなる選択肢がないんですよ。
普通、こういう問題で【動脈】【静脈】は答えとしては面白くないでしょう?
問題を作る立場になれば常識として【毛細血管】を答えにするはずです。
となるとこの問題の先は
『それは動脈・静脈とあともうひとつはなんでしょう?』
となるはずです」
「うぉーーーそうか!!!」
会場からどよめきが起こった。
(やられた……)
詩織は悔やんだ。
問題を作る立場になる。大事なことなのにすっかり忘れてしまっていた。
「詩織、まだ大丈夫だ。4−0になっただけだ。負けた訳じゃない」
公が詩織を勇気づけた。
「公くん……」
「最後まであきらめない。それが一番大事じゃないのか?」
公は諦め気分になっている詩織に言った。
「…………そうね。まだわからないわよね」
「シオリン、ファイトよ!」
夕子もまだやる気だ。
「がんばろ!」
詩織は自分に言い聞かせるように言った。
しかし、その後も赤井は2問連取し得点は6−0となった。
次は、第7問目である。
「大正時代、自由・民主主義の風潮が起きた現象を大正デモクラシーと言いますが、……」
(なんだ? どう展開するんだ?)
今までの問題とは毛色が違う。
赤井は必死で先を読もうとしているが、展開が読めない。
「では、ごく身近にある物が案外見つからないことを表すことわざは?」
ピンポーン
ランプが点いた。初めて、挑戦者のランプが……
「主人!」
好雄が指名する。
「灯台もと暗し」
苦笑いを浮かべながら公が答えた。
ピンポンピンポン
「やったぁーー!」
夕子と詩織が公に飛びつく。
挑戦者初ポイント。これで6−1となった。
(大正デモクラシー、灯台もと暗し……洒落か……『……ですが、では……』問題を変化球と言うが……さしずめこれは……フォークボールだな)
赤井も解答席で苦笑いを浮かべていた。
(公くんが初正解とは……やっぱり私の見込んだ人ね)
詩織が公の横顔を見つめていた。
「詩織、どうしたんだい。俺の顔に何かついている?」
自分を見ている詩織に気づいた公が言った。
「あ、ううん。なんでもないの。さぁ、反撃よ!」
詩織は慌てて正面を向き直った。
そんな二人を見た夕子が心の中でつぶやいた。
(公くんったら、ほんとにもう! 鈍いんだから……)
「『あゝ無情』を書いたのはユーゴー、ではピンクレディが昭和53年の日本歌謡大賞を受賞した時の曲は?」
ピンポーン
赤井のランプがついた。
(また、洒落か……飽きないもんだな……)
苦笑いを浮かべながら赤井は答えた。
「UFO」
ブ、ブーーー
不正解のブザーが鳴る。
「え???」
赤井が思わず声をあげた。
「馬鹿な……あってるはずだぞ」
「ダブルチャンス、挑戦者」
好雄が挑戦者を指名した。
すかさず夕子がにっこり笑って答えた。
「サウスポー!」
ピンポンピンポン
「どうしてだ!」
思わず赤井が大声を出した。
「ピンクレディが歌謡大賞を受賞したのは『サウスポー』です。『UFO』は同年のレコード大賞受賞曲です」
問題を読んでいる見晴が説明した。
(やられた……てっきりさっきと同じ洒落だと思ったんだが……それ以上の引っかけか……変化球どころか……消える魔球を食らった気分だな……)
赤井は一時パニックになった。
しかし、すぐに考え直し落ち着きを取り戻す。
(ま、いいか。
考えて見りゃ、彼女らに花を持たせても……いや、持たせた方がいいのかも……
ワザと負けるわけには行かないが……遮二無二勝たなくても……いや、負けていいわけがない。
全力で……全力で……)
ダブルチャンスを正解した挑戦者には2ポイントが加わり、赤井がマイナス1ポイント。
結果として、得点は5−3となった。
しかし、その後持ち直した赤井は2問を正解、得点を7−3とし差を広げる。
ここまで10問で正解したのは赤井が8回、公1回、夕子1回だ。
(どうしたの? ひなちゃんや……公くんががんばっているのに……私はまだ……)
詩織の顔に焦りの表情が見えてきた。
「世界で最も北にある首都はレイキャビク……」
(あ、!)
ピンポーン
詩織は慌ててボタンを押した。以前に公に出した問題だ。
「ウェリントン」
ブ、ブーーー
「え……??」
不正解のブザーに詩織は慌てた。
(そんな……いちばん南の首都はウェリントンのはずよ……)
「ダブルチャンス! 赤井先生。問題を最後まで聞いて下さい」
好雄が見晴に問題を最後まで読むように指示を出した。
「レイキャビクですが、これは何処の国の首都でしょう?」
「アイスランド」
赤井が答えた。
ピンポンピンポン
詩織チームはマイナス1ポイント、赤井はプラス2ポイント。
得点は9−2となった。
赤井は10点にリーチとなった。
(どうしよう……どうしよう……
私……問題を最後まで聞かなかったばっかりに……私のせいで……私のせいで……)
みるみる詩織の顔から血の気が引いていった。
作品情報
作者名 | ハマムラ |
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タイトル | 栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜 |
サブタイトル | 10:「公、答える」 |
タグ | ときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 〜きらめき高校日本一への挑戦〜, 藤崎詩織, 主人公, 朝日奈夕子, 早乙女好雄 |
感想投稿数 | 44 |
感想投稿最終日時 | 2019年04月11日 10時50分34秒 |
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- [★★★★★☆] 詩織ちゃんを救えるのは公君だけ!
- [★★★★☆☆] (’。’)おおおお!
- [★★★★★★] ありきたりかも知れないが先が読みたくなる展開。