「青春まっただ中! ファイヤー!!!」

司会のアナウンサーが壇上で叫ぶ。

「うぉーーーーー!!!!!!」

ステージに向かって高校生が叫ぶ。
いよいよ、全国高等学校クイズ選手権・関東大会が始まった。

「ファイヤー!!!!!」
「オォォォーーーー!!!!!!」


高校生の大歓声は西武球場正面ステージだけでなく駅前まで聞こえてくる。
「おい、始まったみたいだぜ……」
好雄がチラチラと球場の方を見ながらいった。
「そうですね……。どうしましょうか?」
未緒も不安そうだ。
夕子の大遅刻、さらに迎えにいった筈の詩織も一向に追いついてこない。
このままではこの二チームは戦わずして敗北してしまう。
「大変だ!」
駅の改札まで様子を見にいっていた公と沙希が走ってきた。
「大変よ! きらめき線が……」
「ど、どうした」
真っ青な顔をしている沙希を見て好雄が尋ねた。
「きらめき線が……止まってるの……」
「ええ!!」
好雄が叫んだ。
「あぁ…………目眩が……」
ショックの余り未緒が倒れる。慌てて公が抱き止めた。
「来れるのか? 夕子と……詩織ちゃん……」
好雄は誰に聞くともなく言った。
「ダメかも……しれない……」
公が未緒を抱き止めたまま呟いた。

「諦めちゃだめよ!」
沙希が叫んだ。
「最後まで諦めない。最後の最後まで信じましょうよ。きっと二人は来るわ!」
好雄と公に向かって沙希が言った。
「沙希ちゃん……」
公が沙希を見ながら言った。
「よし! 好雄、第一問を見てこよう。
 詩織達がきたらすぐに会場に入れるように、答を考えておこう。
 最後までジタバタしてみようぜ」
公の言葉に沙希と好雄が頷いた。

「それでは、栄えある今年の第一問を発表したいと思います」
司会者の言葉に会場が静まり返った。
「第一問は……これだぁ!!!
後ろの幕がさっと取り払われる。
そこには問題文が書かれていた。

「それでは、問題。
 “日本の郵便制度の父と呼ばれた前島密は切手の肖像にもなりましたが、
 この切手には、お札と同じように透かしが入っている”

 YESかNOか?」

読み上げられた問題に会場から“ウォォーーー”と声が上がった。
「YESと思えば1塁側スタンドへ、NOと思えば3塁側スタンドへそれぞれ入って下さい。
 入場の際は三人一緒に入場すること、それと入場〆切は、今から1時間後の午前11時とします」
合図と共に高校生達が移動を始めた。
ある者はさっさと入場口に向かっていく。
またある者は公衆電話に走って行った。
またある者は用意周到に携帯電話を取り出した。


「伊集院君、わかります?」
魅羅が伊集院に尋ねた。
「前島密か……確か……1円切手が前島だったと思うのだが……」
「左様でございます……前島さんは1円切手の肖像なんですよ」
ゆかりが答えた。
「よし、ちょっと待ちたまえ」
そう言うとレイは電話を取り出しどこかにかけ始めた。
「あぁ、僕だが……そこに1円切手はあるかね? 無い! すぐに用意しろ!
 10分だけ待ってやる! 10分後にもう一度かける」
レイは電話の向こうの側近を叱り飛ばした。
「それと……例の件だが……うん……そうか、頼んだぞ」
それだけ言うとレイは電話を切った。
「今、側近に調べさせている。すぐに答は出るはずだ」
レイを取りまいていた魅羅とゆかり、そして魅羅の親衛隊達はにっこりと笑って答が判明するのを待った。


「見晴ちゃん……わかる?」
「え……愛ちゃん……わかるわけないじゃない」
愛と見晴が頭を突き合わせていた。
そして、お互い頷き合って、そっととなりに立っている人物に目をやった。
「くだらないわね……」
その人物、紐緒結奈は呟いた。
「透かしがあるかないか……そんなことがどうして重要なの? くだらないわ」
「あのね……紐緒さん……」
愛がなにか言おうとした。
「もっとも、私が世界を征服した時は世界中の切手やお札が私の肖像になるのよ。
 なんだったら、あなた達も肖像を使って上げましょうか?」
「そうじゃなくって……」


「えーーー!!! 優美、わかんなぁい! 先輩わかります?」
「スタンプ? 切手のことは良くわからないわ。
 私は、テレフォン、電話ばっかりだから……」
優美、彩子、望も3人で頭を突き合わせていた。
「あ、なんかみんなあっちへ行くみたいですよ。優美達もあっちにしましょうよ」
きらめき高校の生徒だけでなく、かなり大量の高校生が移動し始めたのを見て優美が言った。
「ダメだよ、優美ちゃん。人の真似はダメだって言われてるだろ。
 自分達で考えようぜ」
「清川先輩……」
「ザッツライト! その通りね、望。自分達で考えましょ」
再び三人は考え始めた。


「おい、前島密って何円切手なんだ?」
好雄が3人に聞いた。
「前島密は1円切手の肖像です」
意識を取り戻した未緒が言った。
「おぉ! ラッキー!!」
好雄が背中のデイパックを降ろし、ゴソゴソとやりはじめた。
「何やってんだ?」
公がその様子を見て言う。
「お、あったあった」
好雄はバッグの奥から好雄メモなる手帳を取り出した。
皮表紙に怪しい目つきのコアラの模様が入ったシステム手帳だ。
「これだ!」
好雄は手帳の間から切手を取り出した。
「それって……1円切手??」
沙希が言うとおり、好雄が取り出したのは1円切手だった。
「どうして、そんな物持ってるんだ?」
公が聞いた。
「ま、色々事情はあるがな。いいじゃないか……さて、透かし透かし……と……」
好雄は切手を天にかざして透かしの有無を調べ始めた。
「お! 透かしは……無い!!」
「あ、早乙女君!」
そう言って沙希が好雄の口を塞いだ。
「フゴ……フゴ……」
「早乙女さん、そんな大きな声を出したら、周りのチームに聞こえてしまいます」
未緒が沙希の意図をくみ取って好雄に言った。
「もう、遅いぜ……」
公が指さした方を三人はみた。
そこではこちらを見ながらなにか相談している高校生達が大勢いた。
「無いってよ……」
「ホントに?」
「だってあそこの連中、切手見て確かめていたから……」
「じゃ、答はNOか?」
「よし、急げ!!」
周辺の高校生達が一気に3塁側の入り口へと移動し始めた。
伝言ゲームのように伝わっていく。
次々と会場周辺の高校生が“答はNO”の噂を聞きつけ、移動し始める。
「あぁぁ……馬鹿な奴ら……」
そう言って公は3人を引っ張って再び駅の方へ移動を始めた。


「どうしたんだよ、公」
駅前にやってきた好雄が公に言った。
「答がわかったところで、詩織達がこないとダメなんだろ。
 駅前で待つのがいちばん確実じゃないか」
公が言った。
「そうね……来てくれるかな……」
沙希が呟いた。
「大丈夫です。きっと来てくれますよ……」
未緒が言った。
「それと……」
公が言った。
「なんですか?」
未緒と沙希が同時に言った。
「いや、後で言うよ」
公の言葉は意味ありげだった。

「どうする?」
夕子がきらめき駅前で詩織と相談をしていた。
予想外の事態、きらめき線の事故によるストップで彼女らは会場に行く事ができない。
「タクシー……も、無理よね……」
「あぁん……空でも飛ぶしかないじゃん!」
夕子が天を見上げた。
「ごめんね、シオリン……あたしのせいで……」
「ううん……ひなちゃんのせいじゃない……」
「だって……」
その時だった。

ババババババババババババババババババババ……

上空から大きな音を立てて何かがやってきた。
「ちょ、ちょっと……何よあれ!」
夕子が指さした方には芥子粒のような物が浮かんでいた。
「あれって……」
詩織が言おうとした時、その物体はだんだん大きくなってきた。
「ヘ、ヘリコプター!」
二人は同時に叫んだ。
ボディに“REI”と書かれたヘリコプターがきらめき駅前の広場に降りてきたのだ。
「ちょちょっと、こんな所に何よ……」
その時、ヘリのドアが開いて夏にも関わらず上下黒づくめのタキシードを身に纏った男が降りてきた。
その男は一直線に詩織と夕子の元へと走ってきた。
「藤崎詩織さん……と、朝日奈夕子さん……ですね」
「あ、はい……そうですけど」
詩織が答えると、その男は
「急いで下さい、ヘリコプターで会場までお連れいたします」
と言った。
「え? でも……あなたは……?」
「私、伊集院レイ様の元で働いております外井雪之丞ともうします。
 レイ様の指示でお二人をお迎えに上がりました」

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル栄光への道 第2部 関東大会編
サブタイトル05:「発表! 第一問」
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 第2部 関東大会編, 藤崎詩織, 主人公, 朝日奈夕子
感想投稿数36
感想投稿最終日時2019年04月11日 12時19分21秒

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