決勝は進んでいった。

詩織チームは沙希の正解をきっかけに流れを完全に掴んだ。
「漬け物にその名を残す沢庵和尚、彼は何宗の僧でしょう?」
「根性!!」
詩織たちの目の前のランプがつく。
「きらめき高校・藤崎チーム!」
「臨済宗!」
ピンポンピンポン
詩織の解答と共に正解のチャイムが鳴り響いた。

「囲碁で三方を相手に石に囲まれ、後一手で石がとられる状態を何と言うでしょう?」
「根性!」
「きらめき高校・藤崎チーム!」
「アタリ!」
公が正解する。
きらめき高校・藤崎チームは波に乗ってきた。


「さて、整理しましょう」
一息入れるように司会者が途中経過を整理した。
「ここまで、きらめき高校・藤崎チーム 3ポイント
 国立高校 3ポイント
 堀越学園 2ポイント
 開成高校 2ポイント
 きらめき高校・朝日奈チーム……ポイントがありません」

夕子達は未だにポイントを上げられないでいた。
それどころか、未だに解答権がとれない。
「朝日奈チーム、ガンバレ」
司会者が夕子達に声援を送る。
「うっしゃ!」
好雄がかけ声一発気合いを入れた。
「ハイ!」
未緒も大きく返事をした。
(ヨッシーも未緒もアツクなってんじゃん……あたしも、やるっきゃないね……)
「よーし!!」
夕子も気合いを入れた。


「さて、では次の問題いきましょう」
司会者が再開を宣言した。
「『無駄話はさておいて』と言う意味の、話を元に戻す時に使う四字熟語はなんでしょう?」
「超ラッ…………キー!!!!!!!!」
周りの物がびっくりするほど大きな声が響いた。
叫ぶ途中で未緒が一瞬迷ったため、“ラッキー”の“ラ”の部分に妙にアクセントがかかった発音になってしまった。
実際にはそれが幸いしたのだが……
(如月さん……あんな声が出せたんだ……)
公と詩織は反対側にいる未緒が大声で叫ぶのを見て唖然としていた。
「来た、きらめき高校・朝日奈チーム!」
司会者の指名と同時に未緒が真剣な目つきで答えた。
「閑話休題!」
ピンポンピンポン
「さぁ、反撃開始か? 朝日奈チームにポイント!」
司会者もノリに乗ってきた。


「わかりました、夕子さん!」
未緒が夕子に声を掛けた。
「どしたのよ、未緒」
「ほら、今、私、“ラッキー”の“ラ”の部分にアクセントがかかっちゃったでしょ?
 一瞬迷ったからなんですけど……」
「それが……どうしたんだ?」
好雄が聞き返した。
「だから、声ですよ。
 “ラッキー”じゃ語尾がIの発音になっちゃって大声になりにくいんです。
 今、わかりました。
 だから……“ラッキー”の“ラ”の部分にアクセントをおいて引っ張るようにすれば……解答権をとりやすくなると思うんです」
「……なるほど……」
好雄と夕子が同時に頷いた。
「よし、反撃開始よ!」
夕子が気合いを入れ直した。

「懐かしのテレビ番組の敵組織、ショッカーと言えば仮面ライダー、ではギャラクターと言えば?」
「超ラッ!……キー」
夕子が解答権を得た。
「科学忍者隊ガッチャマン!」
ピンポンピンポン
夕子チームは2ポイント目を上げた。


もちろん、きらめき高校以外の3チーム……国立高校、堀越学園、開成高校も負けてはいない。
夕子や詩織達がポイントを上げれば、負けじと取り返していく。
東京の決勝は希に見る好試合となった。
そして……
「切った魚を、氷を入れた水の中で冷やし、身をしまらせた刺身を一般に何と言うでしょう?」
「根性!!」
沙希が叫んだ。
「あらい!」
ピンポンピンポン……
「きらめき高校・藤崎チーム、4ポイント目、全国大会にリーーーーチ!!!」
司会者が叫んだ。

「後一つよ……頑張ろう!」
詩織が公と沙希に声を掛ける。
「よし」
「うん」
公と沙希が返事をした。
詩織達は4ポイントでリーチ。国立と堀越と開成が3ポイント。夕子達は2ポイント。
(負けないモン……絶対に……まだ、逆転できるよね)
夕子は祈った。
「夕子さん、肩の力が入りすぎですよ」
未緒が夕子に声をかけた。
「たとえ、藤崎さんたちが勝ち抜けても、後一つ枠があるんですから。焦りは禁物ですよ……」
「そういうこった。
 強い詩織ちゃん達には先に抜けて貰って、あとから大逆転で俺達が2チーム目って言うのが、ドラマチックで良いだろ?」
好雄も夕子に向かって笑いながら言った。
「未緒……ヨッシー……」
夕子は二人に言った。
「余裕じゃん、そうこなくっちゃ!」

「アメリカの大リーグで名投手を記念して創設された年間最優秀投手賞は何賞と言われる?」
「根性!!」
公が叫んだ。
もちろん、他のチームも負けじと叫んだ。
一瞬早く、公たちの目の前のランプがともった。
「さぁ、きらめき高校・藤崎チーム、これで決まるか!」
「サイ・ヤング賞!」
ピンポンピンポン!
「決定!!!!!!」
司会者が詩織達を指差し叫んだ。

「やったぁ!!!!」
「公くん!!!」
「すっごぉーーい!!!!」
公と詩織、沙希はその場で飛び上がると、抱き合い喜びを分かち合った。
「全国大会よ! 全国大会よ!!」
涙を流しながら、詩織が叫んだ。


「やったじゃん、シオリン……」
「そうだな……」
「追い付かないといけませんね……」
夕子の言葉に、好雄と未緒が言葉を返した。
夕子は詩織達を目で追った。
スタッフに誘導されて解答席を降りる詩織達がチラリとこちらを見た。
何かを言いたげなその目に夕子はこくんと頷いた。
(ひなちゃん……次は、ひなちゃんの番よ……)
(わかってるって、まっかせときなさい!)
詩織と夕子はお互いの目で会話を交わした。

「さて、再開します。
 現在、国立、堀越、開成が3ポイント、きらめき高校・朝日奈チームが2ポイント。
 まだわかりません」

司会者が再開を宣言する。
「郵政省の広告付きハガキの愛称をなんという?」
「超ラッ!……キー」
好雄が叫び解答権を得た。
「エコーハガキ」
ピンポンピンポン
「追い付いた! きらめき高校・朝日奈チーム追い付いた!」
司会者が叫ぶ。

「足の速い人がよくたとえられる、インドの神様は誰?」
「国立高校!!!」
国立高校が叫んだ。
「超ラッ!……キー」
未緒も叫んだ。
一瞬早く、国立高校のランプが点った。
「韋駄天!」
ピンポンピンポン!
「さぁ、国立高校がリーチをかけました。
 このまま行くのか? それとも他のチームが阻止するのか?」

(ひなちゃん……がんばって……)
詩織は祈っていた。
(いっしょに……全国大会に行くんだったよね……だったら……負けないよね……)

緊張感が漂う中、司会者が問題を読み上げた。
「我が国初の国産テレビアニメのタイトルは?」
「超ラッ!……キー」
夕子が叫んだ。
「国立高校!」
国立高校も叫んだ。
ランプはきらめき高校に点いた。
「鉄腕アトム!」
ピンポンピンポン
「追い付いた! きらめき高校、追い付いた! 2チームがリーチだ!」
司会者も熱戦に興奮してきている。

「ヨッシー、未緒……勝負所だかんね……一気に行くわよ……」
夕子が二人に声を掛けた。
「おおよ!」
「はい!」
夕子に巻き込まれる形で参加した好雄と未緒だったが、その顔は立派なクイズプレイヤーになっていた。

「アメリカ大リーグで野茂のいるドジャースはナショナルリーグ所属、では……」
「超ラッ!……キー」
夕子が叫んだ。
夕子達の目の前のランプが点った。
「きらめき高校・朝日奈チーム!」
司会者が指名した。

詩織達も夕子の前のランプがついたのを確認した。
「ひなちゃん……よかった……」
詩織が一息ついた。

ゴクリ、と息を飲み込むと夕子がゆっくりと答えた。
「アメリカンリーグ!」

「ひなちゃん……やった!」
詩織がそう思ったときだった。

ブ、ブーーー!!

不正解のブザーが鳴った。
「え?」
「慌てた、きらめき高校。
 問題は『では、野茂が日本でプレイした近鉄が所属するリーグを略さないで言うと?』
 で、正解は……」

司会者がそこまで言ったとき、夕子が後を続けた。
「パシフィックリーグ……」
「だったんです。残念! 一問のお休みです」
司会者が言った。

「ごめん、ヨッシー、未緒……」
「しゃぁねぇ……おれだってアメリカンリーグだと思ったんだから……」
「仕方ないですよ……」
好雄と未緒が慰めた。
「あとは……次の一問で決まらないことを祈るのみだね……」
夕子はチラリと国立高校を見た。

「ひなちゃん……」
詩織が夕子の表情を見た。
「まだあきらめていないみたいね……」
「そうだよ。あの朝日奈さんが簡単に諦めるもんか」
公が詩織に言った。
「そうですよ。こういうときこそ、根性だから……」
沙希もそう言った。
「でも、一問休みと言うことは……他力本願だから……自力では阻止できないのよね」
詩織が不安そうに言った。


(たのむよ……堀越、開成、ここは止めてよ……)
夕子の祈りを余所に、問題が出された。
「川底が周囲の土地より高くなっている川を何と言うでしょう?」
「国立高校!!」
「ファイヤー!!」
「勝つぞ!!」

3チームが同時に叫んだ。
そして、ランプがついたのは……

「国立高校、これで決まるか?!」
解答権をとったのはリーチがかかっている国立高校だった。
(お願い……間違えて!)
夕子が、未緒が、好雄が、詩織が、公が、沙希が祈った。
国立高校の選手が答えた。
「天井川!」
ピンポンピンポン!!
「決定!!
 希に見る大激戦を制し、全国大会への切符を手にしたのはきらめき高校・藤崎チームと国立高校です!!」

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル栄光への道 第2部 関東大会編
サブタイトル12:「運命の一瞬!」
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 第2部 関東大会編, 藤崎詩織, 主人公, 朝日奈夕子
感想投稿数39
感想投稿最終日時2019年04月09日 02時54分03秒

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  • [★★★★★☆] 全国いきましたね。朝日奈チームが負けたのはご愛敬ってとこでしょうか?
  • [★★★★★★] 僕は昨年高校生クイズの地区決勝で負けたんですが結構というか素晴らしく完成されてますね。パーフェクトです。
  • [★★★★★★] 夕子たちが運大王で決勝に行くとかないのかな?
  • [★★★★★★] すげーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!! かなり満足