「ひなちゃん、凄い……」
詩織は準決勝をトップで通過した夕子たちを見ていた。

「一足先に決勝進出決めちゃったね」
沙希がポツリと言った。
「俺達も……追い付かないと……」
「うん!」
詩織は大きく頷いた。
「何としても……勝たないとね……ひなちゃんが先に決勝で待っているわよ」
詩織は沙希と公に言った。


「一足先にきらめき高校・朝日奈チームが勝ち抜けました。
 残る座席はあと……3つです」

司会者が進行していく。
夕子たちはスタッフに誘導されてカメラの向こう側の勝者席に移動していた。
(ガンバレ……シオリン!)
夕子は祈っていた。
(あたし……信じてるからね……決勝やるんだからね!)


「では、封鎖を解除します。残り4チームで再開します」
スタッフが早押し席に貼られていた×の札を剥がしていく。
詩織たちは早押し席に戻った。
東大寺学園や館林女子高校も席に戻った。
「では再開します。4チームへ出題です」

「問題、絶対零度は摂氏何度?
すかさず、詩織の手が動いた。

ピンポーン!

しかし、ランプがついたのは東大寺学園だった。
class="quiz"
「マイナス273度!」

ピンポンピンポン……

正解のチャイムが鳴り響いた。

「東大寺学園、正解です。ではどのチームを封鎖しますか?」
司会者が東大寺学園を促した。
「きらめき高校を封鎖します」
東大寺学園のキャプテンが指名したのは、やはり詩織のチームだった。
詩織たちの目の前に×の札が貼られた。

「……はぁ……」
詩織がため息をついた。
「うまくいかないわね……」
「大丈夫よ、藤崎さん。根性よ、根性で何とかなるわ」
「そうね……虹野さんの言う通りね。あきらめないで頑張ろうね」
詩織は頷いた。
「それに……」
公が横から口を挟んだ。
「これで東大寺学園が通過してくれた方が楽なんじゃない?」
「え?」
詩織と沙希が同時に聞き返した。
「東大寺学園がこのまま連続正解して勝ち抜けてくれたら……」
「そうね。確かに……でも甘くないわよ」
詩織の不安はすぐに現実の物となった。

「問題、映画『伊豆の踊り子』で最初にヒロインを演じた女優は誰?

ピンポン!

東大寺学園が再び解答権を得た。
「東大寺学園!」
「田中絹代!」

ピンポンピンポン……

東大寺学園が連続して正解した。
「連続正解、東大寺学園! さて封鎖するのはどっち?」
「館林女子高校」
東大寺学園は即答した。
これで封鎖されずに残っているのは東大寺学園と高知学芸高校の2校になった。


「さぁ、東大寺学園、一気に来るのか?
 それとも高知学芸高校が逆転で決勝へのチケットを手に入れるのか? 問題!」

司会者が一気に進めていく。
詩織も後ろで手に汗を握っていた。
どちらが勝ち抜けるかで全然この後の展開が変わる。
(東大寺学園が通過してくれた方が……)
1914年、フランス人、マリー・ジャコブが二枚のハンカチを使って考案し特許を得た下着と言ったら何?

ピンポン!

三度、東大寺学園のランプがついた。
「決まるか? 東大寺学園!」
司会者が東大寺学園を指差した。
「……パンティ?」
自信なさげに東大寺学園のキャプテンが答えた。

(あ!)
詩織は顔を上げた。
(違うわ……)

ブ、ブーーー

ブザーが鳴った。
「残念、正解はブラジャーでした。東大寺学園、一回休みとなります」
不正解の東大寺学園は一回休みとなった。
「さぁ、チャンスだ高知学芸高校。一チームだけだぞ。慌てるな……問題」
司会者がたった一チーム残っている高知学芸高校のためだけに問題を出した。
神話の生き物で、ミノタウロスの頭は牛。ではケンタウロスの頭は何?

ピンポン!

最後まで問題を聞き終えてからゆっくりと高知学芸高校がボタンを押した。
「決まったか? 高知学芸高校!」
「人間」

ピンポンピンポン……

「高知学芸高校、勝ち抜け〜!!!!!」
司会者の絶叫と共に2チーム目の勝ち抜けが決定した。
高知代表・高知学芸高校である。

「封鎖を解除します。残り3チームの中で勝ち抜けるのは2チーム。
 残る席を手に入れるのはどの学校か?」

詩織たちは再び早押し席に戻った。

「こんどこそ……行くわよ」
「うん……」
「あぁ……」
詩織の言葉に沙希と公が頷いた。向こう側では夕子が心配そうに見ている。
(いつかと逆になっちゃったね……ひなちゃん)


(シオリン……勝ってよ……絶対に勝ってよ……)
夕子はひたすら祈っていた。
(一緒に決勝やるんだよ……約束だよ……)


「では、3チームへ問題です。
 問題、有名になった映画やテレビドラマの作品を小説化することを何という?

小説化という部分で公がボタンを押し込んだ。

ピンポン!

「きらめき高校!」
司会者が指差した。
「ノベライゼーション!」

ピンポンピンポン……

(よっしゃ!)
公は小さくガッツポーズをした。
(公くん……気合入っているね)
詩織は公を横目で見てにっこりと笑った。

「ではきらめき高校……封鎖するのはどちらですか?」
詩織はチラッと両方のチームを見た。
(東大寺学園を封鎖すると……館林女子との勝負よね。
 勝てる可能性は高いかも知れないけど……
 万が一、館林女子のと勝負に負けたら、東大寺学園と最後の席を争わないといけないのよね。
 先に館林女子を封鎖したら……東大寺学園と勝負か……
 厳しいけど、負けてももう一度、館林女子と最後の勝負ができる。
 どっち……どっちを封鎖すれば……どうしよう……)
詩織は悩んでいた。
「詩織……」
「公くん……」
公が詩織の肩を叩いた。
「力が入りすぎているぞ。気楽に行こう。余計なことは考えないで」
「そうよね……」
詩織は頷いた。
「そうよ、藤崎さん。普通にやればいいのよ」
沙希も詩織の緊張を解いた。
「うん、わかった……余計なことを考えるのはやめにするわ。正攻法で行きましょう」
頷くと、詩織は司会者に向かって言った。
「東大寺学園を封鎖します」


「東大寺学園が封鎖されました。きらめき高校と館林女子との勝負になりました」
(これでいいのよ。強いところから封鎖していく。下手な策を弄するのはやめね)
詩織は自分に言い聞かせた。
「ではどちらが3番目の通過を決めるのか、問題」
問題が出された。

漢文を訓読に従って、日本語の語順のまま、かなを交えながら書き直した文を何という?

ピンポン!

詩織の手が動いた。
沙希の手も動いた。
公の手も動いた。
しかし、同時に館林女子の3人の手も動いた。
ランプがついたのは……

「館林女子高校!」
司会者が館林女子の選手を指名した。
「書き下し文」

ピンポンピンポン……

「正解! 3チーム目の勝ち抜けは……群馬代表、館林女子高校!!!!
詩織はがっくりと肩を落とした。

「封鎖を解除します。東大寺学園、席について下さい」
東大寺学園の3人が席に着いた。
「こんな事態になると誰が予想したでしょうか?
 優勝候補の大本命である、きらめき高校・藤崎チームと東大寺学園の2チームが最後に残ってしまいました」

カメラが2チームを撮影する。
詩織はゴクリと生唾を飲み込んだ。
緊張感が増す。
(東大寺学園と勝負になっちゃった……)
詩織は不安に襲われた。
(勝てるのかしら……ううん……勝たないと……)

「勝ち残るのはどちらか……問題です」
司会者が問題文を読み上げ始めた。

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル栄光への道 第3部 全国大会編
サブタイトル16:「絶体絶命」
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 第3部 全国大会編, 藤崎詩織, 主人公, 早乙女好雄, 朝日奈夕子, ほか多数
感想投稿数1
感想投稿最終日時2019年04月09日 20時55分41秒

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