「朝日に輝く富士山頂で行われる全国高等学校クイズ選手権。
決勝に進んだ各チームを紹介いたします」
司会者の言葉と共に、カメラマンが向かって左端の館林女子高校にカメラを向けた。
「群馬代表・館林女子高校です」
カメラの中に、3人の女生徒が映った。
「菊池さん、菅原さん、黒崎さんの2年女子三人組。
持ち前のチームワークと運の強さもあってここまで勝ち進んできました。
全国大会に入ってからは2回戦と3回戦で一抜けを果たすなど、急速に力を付けてきたチームです。
そして……」
司会者の合図と共に、決勝戦の解答席の向かいに据え付けられていたモニターに灯が入った。
「あ!」
館林女子の三人が声を上げた。
『はい、こちらは群馬県の館林女子高校です。
早朝にも関わらず、たくさんの生徒達が応援に駆けつけています!』
画面に映ったのは館林女子高校の校庭からの生中継だった。
館林女子高校からの中継が終わると、カメラは真ん中のチームを映し出した。
「高知県代表・高知学芸高校です」
司会者が紹介を進めていく。
「小野坂君、上田君、高木君の3年男子3人組。
ガッツでここまで進んで来ています。
そして、もちろん応援団の準備ができています」
カメラには高知学芸高校からの全校生徒の応援団が映っていた。
「最後に、東京都代表・きらめき高校です」
カメラが詩織たちを捉えた。
「藤崎さん、主人君、虹野さんの3年生男女混成チーム。
ペーパークイズ全国一位ながら、その後は苦戦続き。
しかし、同じきらめき高校から全国大会に進んでいた朝日奈チームの屍を乗り越えて、ここまで来ました」
モニターに詩織たちの記憶にある建物が映った。
『はーい! ここは、きらめき高校の講堂でぇ〜すっ!』
「ひ、ひなちゃん!」
詩織が思わず声を上げた。
講堂からマイクを握ってレポートをしていたのは、夕子だった。
『あたしたちは、途中で負けちゃったんだけどぉ、シオリン達のチームを応援するために、こんなにたくさんの人が集まったんだよぉ!』
カメラがズームアウトした。
講堂に溢れんばかりに集まっている人混みが映った。
『ガンバレ!!!!!』
全員が一斉に声を出す。
「あ、早乙女君だ……未緒ちゃんも……伊集院君が真ん中にいるんだ……」
沙希が好雄たちを見つけた。
「片桐さんもいる……古式さん……鏡さん……清川さん……」
公も画面に仲間達を見つけていく
「メグ……館林さん……紐緒さん……優美ちゃん……」
詩織も、友人の姿を次々と見つけていく。
『なにより、きらめき高校のここまでの躍進を演出したのはこの人なんですねぇ』
夕子が脇にいた人物をカメラの前に押し出した。
『10年前の学生クイズチャンピオンの赤井先生、通称・ダッチマン赤井!』
『おい、朝日奈、俺は関係ないだろ……』
カメラの前に押し出された赤井が照れくさそうに夕子に抗議した。
『いいじゃんか……もう……
それに伊集院理事長と、有馬校長、穂積教頭……
みんなきらめき高校の日本一を信じています! ガンバレ!
以上、きらめき高校から、今年のベスト4・朝日奈夕子がお伝えしました!』
「もう……ひなちゃんたら……」
詩織が呆れたように呟いた。
「きっと、レポーターから無理矢理マイク奪い取ったんだよ」
公が詩織に言った。
「きっとそうね、ひなちゃんらしい……」
沙希も笑っている。
「でも、教頭先生の顔を見た?」
詩織が二人に言った。
「うん、苦虫噛みつぶして、『気にいらない』って感じだったね」
公が答えた。
「じゃ、教頭先生の鼻をあかしてやらないとね」
沙希の言葉に公と詩織が頷いた。
「校長……こんな馬鹿騒ぎを放っておいて良いんですか?」
教頭が生徒達と一緒に騒いでいる校長に抗議した。
「いいじゃないですか、教頭。我が校が日本一になるんですぞ」
「そうです、教頭先生。めでたいじゃないですか」
理事長も笑いながら教頭を諫めた。
「まぁ……理事長がそう仰るなら……不本意ですが……」
教頭は苦虫を噛みつぶした表情を変えることはなかった。
「各校の応援団も盛り上がってきました。
全国高等学校クイズ選手権・決勝。単純早押し、10ポイント先取。
間違い、お手つきはマイナス1ポイント」
司会者がルールを説明していく。
「では、始めます。ボタンに手を掛けて下さい」
詩織が目の前のボタンに手を乗せた。
その上に公が手を重ねる。沙希が最後に一番上に手を重ねた。
館林女子高校の三人も、高知学芸高校の三人もそれぞれボタンの上に手を重ねた。
「では、最初の問題です!」
司会者が問題を読み上げ始めた。
「日本語でバビブベボは濁音、パピプペポは半濁音……ではハヒフヘホ……」
ピンポーン!
館林女子高校のランプがついた。
「清音」
ピンポンピンポン……
最初の問題を正解したのは館林女子高校だった。
「魚介類を主な材料として作る、西洋の寄せ鍋風のスープを何という……」
ピンポン!
素早く沙希の手が動き、きらめき高校のランプがついた。
「チャウダー」
ピンポンピンポン……
きらめき高校も沙希の正解で1ポイントを獲得した。
「大相撲で、行司が一方の力士を『かたや』と読み上げたとき、もう一方……」
ピンポン!
今度は高知学芸高校のランプがついた。
「こなた」
ピンポンピンポン……
高知学芸が三問目を正解し、三チームが1ポイントで並んだ。
決勝は順調に進んでいった。
10問目を終了したとき、各チームのポイントは、館林女子3ポイント、きらめき高校4ポイント、高知学芸3ポイント。
ほぼ横一線状態だった。
「高校生クイズ、決勝にふさわしい戦いが繰り広げられています」
司会者が問題を一時中断して状況をコメントする。
「では、次の問題……」
クイズが再開された。
「おなじみの童謡、手のひらを太陽に、の一番の歌詞で歌われている動物は、ミミズとオケラと……あともう一つ……」
ピンポン!
公が素早くボタンを押して、きらめき高校のランプがついた。
「ミツバチ」
ブ、ブーーー……
「え?」
公が怪訝そうな顔をした。
「アメンボ……」
詩織が横から公に呟いた。
「あ……ご、ごめん……」
公が素早く謝る。
「ドンマイ! 根性で取り返せるわ」
沙希が素早くフォローする。
「そうよ、公くん。まだ大丈夫よ」
詩織もすぐに公を励ました。
しかし、この不正解できらめき高校はリズムが狂ったのか、続けて詩織が不正解した。
一方、館林女子高校が一気にリズムに乗って正解し、着実にポイントを重ねていった。
「現在、館林女子7ポイント、きらめき高校2ポイント、高知学芸4ポイント。
まだまだ、挽回できるぞ、きらめき、高知学芸。ガンバレ」
司会者が劣勢の二校を励ます。
「ふん……ほらご覧なさい、理事長。所詮こんな物なんですよ」
教頭が呟いた。
「それはあくまで結果です、教頭。
例え、負けても全国大会の決勝まで行った生徒達を誉めてあげようじゃないですか」
「理事長……」
教頭達の会話を聞いた赤井が会話に割り込んだ。
「まだ、終わってませんよ……」
「しかし……」
教頭が何かを言おうとしたが、赤井は無視してモニターを見つめていた。
(よし、まだ目は死んでいないな……なら大丈夫だ)
赤井は土壇場に強い詩織たちの実力を信じていた。
「本名を間黒男……」
ピンポン!
詩織が勝負を賭けた。
(このままずるずる行っちゃダメ……流れを取り返さないと……)
「早い、きらめき高校!」
余りの早い反応に驚いたのは司会者だった。
「ブラックジャック!」
ピンポン!
「正解です。本名を間黒男という外科医が活躍する手塚治虫の人気漫画は何でしょう?
正解はブラックジャックです」
これできらめき高校は3ポイントとなった。
館林女子との差は4ポイント。
「公くん、沙希ちゃん。一気に行くわよ」
詩織は山勘で押した問題を正解したことで、流れが自分たちに来たことを感じた。
「よし、わかった。ガンガン行くぞ」
「いいわよ、藤崎さん」
公と沙希も詩織の言葉に頷いた。
作品情報
作者名 | ハマムラ |
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タイトル | 栄光への道 第3部 全国大会編 |
サブタイトル | 21:「決勝開始」 |
タグ | ときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 第3部 全国大会編, 藤崎詩織, 主人公, 早乙女好雄, 朝日奈夕子, ほか多数 |
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感想投稿最終日時 | 2019年04月23日 02時52分19秒 |
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