(よし、流れが来ている……行けるぞ……)
モニターを見ながら赤井は考えていた。
(日本一だぞ……藤崎……)


「問題、泡雪そば、泡雪揚げなど、泡雪という言葉がつく料理に使われる……

ピンポン!

沙希が素早い反応をした。
「きらめき高校!」
「卵白」

ピンポンピンポン……

沙希の正解できらめき高校が4ポイントになった。


「問題、『北海道新聞』『中日新聞』『西日本新聞』のように、いくつかの県にまたがって販売される地方紙を……

ピンポン!

「館林女子高校!」
「ブロック紙!」

ピンポンピンポン……

館林女子高校も負けてはいない。流れが変わりつつあるのを察知して押してくる。


とても手に入らないようなコンサートチケットなどを金よりも価値がある……

ピンポン!

公が反応した。
「きらめき高校!」
「プラチナペーパー!」

ピンポンピンポン……

決勝は完全にきらめき高校と館林女子高校の戦いになりつつある。
館林女子高校8ポイント、きらめき高校5ポイント。高知学芸は4ポイント。


その後、詩織と沙希が正解し、きらめき高校は7ポイントまで持っていった。
しかし、館林女子が1ポイントを取り返し、9ポイントとリーチを賭ける。

「さぁ、館林女子高校、リーチがかかった。
 追い付くかきらめき高校。一気に決めるか館林女子。
 ガンバレ、高知学芸」


「問題、電気アンプを使っていないギターを、エレキギターに対して何と……

ピンポン!

館林女子の菊池よりも一瞬早く詩織の手が動いた。
「きらめき高校!」
「アコースティックギター」

ピンポンピンポン……

「きらめき高校も8ポイントまで来た!」
司会者が絶叫する。
きらめき高校8ポイント、館林女子9ポイント。

「頑張りなさい……藤崎さん……あと一点ですよ……」
理事長が画面を見ながら呟いた。
「理事長! 何を計算違いしているんですか!」
横から教頭が顔を真っ赤に染めながら抗議した。
「勝つためには、あと2ポイントですわい!」
教頭も興奮している。
その目は食い入るように画面を見つめている。
「そうですね……はい、教頭先生。その通りです。あと2ポイントです」
理事長が笑いながらそう言った。
(やはり、一生懸命やると、人を引き込むんですね。
 藤崎さん……教頭先生も、あなたたちの味方になりましたよ……)

「問題。
 その国の特色を『家の数より寺院が多く、人の数より神様が多い』と言われるアジアの国は……

ピンポン!

館林女子高校のランプがついた。
(あ!)
詩織は目を閉じた。
(ここまでか……)
公も俯いた。
(お願い……)
沙希は手を合わせて祈る。

「決まったか! 館林女子高校!」
「タイ!」
館林女子高校の菅原が叫んだ。


一瞬の静寂……


ブ、ブーーーー


「残念、正解はネパールです。館林女子高校マイナス1ポイント、そして……」
司会者が目の前のポイント表を見た。
「これで館林女子高校ときらめき高校が並びました。共に8ポイント!」

その後、マイナスポイントを警戒し、慎重に進めるきらめき高校と館林女子に対して高知学芸が勝負を賭け、3ポイント連続正解した。
しかし、その後2問を不正解し、差引、合計5ポイントになった。


「さぁ、館林女子かきらめきか……それとも高知学芸か」
司会者が続いて問題を読み上げた。
お寿司で助六といえば、海苔巻きと……

ピンポン!

「館林女子高校!」
「いなり寿司!」

ピンポンピンポン……

館林女子高校が正解し、再度リーチをかけた。

「さぁ、一気に決めるのか館林女子高校……それとも追い付くかきらめき高校」


「シオリン……」
夕子もモニター画面を食い入るように見つめている。


「問題、日本の南極観測船第一号となった船の名は?

ピンポン!

公の腕が素早く動いた。
「きらめき高校!」
「宗谷!」

ピンポンピンポン……


「きらめき高校もリーチ! さぁ、いよいよ大詰め高校生クイズ決勝……」


「この問題で決まるのでしょうか……次の問題はこれです!」


司会者が問題を読み上げ始めた。

「問題、火星には衛星が二つあります……ひとつはフォボス……

(あ!)

詩織と公の腕が同時に動いた。

(まちがいない……初めて詩織に出題された問題だ……)

(初めて、公くんに……出題した問題……)


ピンポン!


「きらめき高校!」

司会者の指名の声が遠くに聞こえる。


(シオリン! あたしと日本一を目指そうよ!)
夕子のクイズ出場への誘いの言葉が詩織の脳裏を横切る。


(俺はお前たちにあの高校生クイズを体験させてやりたい)
校則改正の口火を切ってくれた赤井の言葉が公の脳裏を走る。


(高校生時代の思い出として、日本一になることを願っています)
理事長の言葉が再び詩織の頭の中を駆けめぐる。


(沙希をあたしの親友とみこんで、この朝日奈夕子様が頼むんよ)
沙希の脳裏には自分を信頼し、詩織のパートナーに指名してくれた夕子の姿が思い浮かぶ。


(当たり前っしょ。優勝よ、絶対に優勝だかんね……)
昨日、別れ際に夕子の叫んだ言葉……三人は決して忘れてはいなかった。


「きらめき高校!」
司会者が再度指名した。
詩織が公と沙希を見た。
コクンと二人とも無言で頷く。


「ダイモス!」



富士山頂が静まり返った。
スタッフ達が一瞬息を呑んだ。

館林女子と高知学芸の6人も、息を飲み込む。



きらめき高校でも夕子や好雄を中心に全員が息を呑んで見守る。
あれほど騒がしかったきらめき高校の講堂が静まり返った。



ピンポンピンポン……



「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

正解のチャイムが鳴り響くと同時に、詩織と公と沙希が互いに抱き合った。
三人の目からは大粒の涙が零れ始めていた。

「決定!
 全国高等学校クイズ選手権、優勝は、東京都代表・私立きらめき高等学校!!!」

司会者が絶叫した。



「やっりぃぃ!!!!」
「やったぜぇぇぇ!!!!」

きらめき高校講堂も歓喜の輪に包まれた。

その時、山頂ときらめき高校の両方のスピーカーから音楽が流れてきた。


タンタッタタン タンタータタン


(あ……)
詩織が公と沙希を見た。
二人も気づいたようだ。


タタタンタンタンタータン


きらめき高校の講堂でも音楽に気づき始めた。
全員が立ち上がり、姿勢を正した。
山頂の三人は東の太陽の方を向いて姿勢を正すと、音楽に合わせて歌い出した。


黎明かがやく 緑の森の
きらめき かがやく 学舎(まなびや)で


山頂の詩織たちと同時に、きらめき高校でも全員が大合唱を始めた。


自由と博愛 叡智の道と
理想の教(おしえ)を いざ 究めん


詩織たちの声は涙でかすれていた。
しかし、それを補って余りある声がきらめき高校の講堂から響いた。


あゝ きらめけ きらめき高校
永久(とわ)に かがやく 我らが母校

こうして、きらめき高校の暑い夏は幕を下ろした。
カメラには、涙を流して校歌を歌う、三人の男女の姿が。
そして講堂で肩を組み、声を上げて歌う、大勢の高校生が映っていた。


きらめき高校は、今、日本一という栄光をその手にした。

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル栄光への道 第3部 全国大会編
サブタイトル22:「栄光への道」
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/栄光への道 第3部 全国大会編, 藤崎詩織, 主人公, 早乙女好雄, 朝日奈夕子, ほか多数
感想投稿数0
感想投稿最終日時2019年04月09日 02時56分06秒

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