「し、詩織?」
「コ、公君??」
二人は慌てた。どう見ても目の前にいるのは自分自身だ。
「どういうこと、これ?」
公になった詩織が言う。
「そんなこと……こっちが聞きたいよ」
詩織になった公が言う。
「もしかして……石段から落ちたショックで……体が入れ替わっちゃったのかしら?」
「そんな、馬鹿な……小説じゃあるまいし……」(作者注:小説です(笑))
「でも、それ以外に考えられないわ……」
「詩織……オレの体で、そんな女言葉使わないでくれよ」
「公君も……私の体で、そんな乱暴な言葉遣いしないで」
二人は黙り込んでしまった。
「どうする?」
「どうしよう?」
思いがけず二人が同時に口を開いた。
「どうするって言ってもなぁ……元に戻る方法なんて……わかんないし。詩織はわかる?」
「私だってわかる分けないわよ」
公の格好をした詩織はしばらく考えていた。そして、
「石段を転がり落ちてこうなったんだから……もう一回転がれば……」
「そうか! そうしよう!」
二人は大急ぎで石段の上に駆け上がっていった。
「いいかい。行くよ」
「うん」
二人は同時に転がり落ちた。
「痛〜い!!」
「イテテテテテ……」
腰や頭を押さえながら二人は下半身に手を移動させて自分の体をチェックする。
「ある……」
「ない……」
二人はその後お互いを見て、元に戻っていないのを再確認した。
「公君……私の体……あまり触らないで……」
胸や下腹部に手を持っていった公を見て詩織が言う。
「詩織だって……オレの……その……」
「私だって……触りたくって……触ってるんじゃ……」
気恥ずかしさでお互いに目をそらした。
「どうする?」
「どうしよう?」
二人はまた同時に口を開いた。
「とにかく家に帰ろう……」
公が泣きそうになってる詩織を促した。
「帰るって……私はどっちの家に帰ればいいの?」
「どっちのって……あ、そうか……自分の家には帰れないよな……
事情を話して……って理解してもらえないよな」
「当たり前じゃない。
『公君の格好をしてるけど実は私は詩織です。
私の格好をしてるけど実はこっちが公君です』
……そんな話、誰が信じてくれるの?」
「俺自身が信じられないんだからな」
二人は考え込んだ。そして……
「とにかく一度家に帰ろう」
「家に帰りましょう」
という結論に落ち着いた。
「一度オレの部屋で考えよう」
そう言って公は自分の格好をしている詩織を主人家に連れていった。
「ただいま」
詩織の姿の公が言う。
「おじゃまします」
公の姿の詩織が言う。
「??????」
母親はからかわれていると思ったのだろう。
「二人とも、からかうのはよしなさい」
「からかっていないんです」
と公の姿の詩織が言った。
「アレアレ……公はずいぶん丁寧な口を聞くのね。
何か欲しい物があるのね。でも、小遣いの前借りは許しませんよ」
「違うんだよ、母さん」
詩織の姿の公が言う。
「あら、やだ。詩織ちゃんにお母さんって言ってもらえるなんてね……
公がもう少ししっかりしていれば……詩織ちゃん、こんな馬鹿な息子だけど、面倒見てやってね。公を見放さないでね。
ほら、公、お前も詩織ちゃんに嫌われないように……」
「ダメだ……詩織、オレの部屋に行こう」
詩織の姿の公が言う。
「うん」
公の姿の詩織が言う。
「????????」
母親は訳が分からなかった。
公の部屋で二人は相談をしていた。
「やっぱり……詩織はオレの格好をしている以上、この部屋にいるしかないだろ」
「じゃ、公君は私の家に帰るの?」
「それしかないんじゃないかな?」
「元に戻れるのかしら?」
「それに関しては、いい考えがあるんだ。あした学校で何とかなるかも知れない」
「本当?」
「あぁ、こういうときに役立つ人がいるだろ?」
「え?」
「ヒント1、科学部……」
「あ、わかった」
「だろ? 彼女に相談すれば……」
「公君、言葉は正しく使わないと。『こういう時しか役立たない』って言うのよ」
「あ、そうか。そうだよな……」
二人はお互いに笑いあった。そして、希望が見えてきたので安心した二人はそれぞれの部屋に戻ることにした。
「ただいま」
恐る恐る詩織の姿の公は藤崎家の玄関を開けた。
「あら、詩織、お帰り」
詩織の母親が出迎える。
「あ……た、ただいま」
「どうしたの? 変な子ね」
「あ、ううん……なんでもない」
公は詩織の部屋に入った。
「これが詩織の部屋か……久しぶりだな……」
制服姿のまま、ベッドに横になって考え事をしていると、その時、電話のベルが鳴った。
「はい、主人……じゃなかった……藤崎です」
「な、公君……」
「詩織か? どうした?」
「おトイレ行きたいの」
「行けば? 場所はわかってるんだろ。幼なじみだし何度も家に来てたじゃないか」
「そうじゃなくて……どうやってするの? ……その……オシッコ……」
「あ! ………………ハハハハハハハハ……」
「もう笑い事じゃないわよ……私……わかんないもん」
「トイレに行くだろ?
蓋を開ける。便座を上げるのを忘れるなよ。
で、前のジッパーを下ろす。パンツの前に開く口があるからそこから出してするんだ」
「出すって……どうやって?」
「どうやってって……そりゃ……指で摘んで……」
「え????」
「どうした?」
「だって……指でなんて……」
「そんなこと言ってもしょうがねぇだろ。今は詩織は男なんだから」
「うん……そうよね……わかった。やってみる」
詩織は覚悟を決めてトイレへと向かった。
トイレのドアを開けて中に入る。
詩織はズボンの前を開け、パンツの穴から指を入れた。
(うわっ……)
詩織は目の前にある物をまじまじと見た。
(小さいときは一緒にお風呂に入ってたから見てたんだけど……でも大人になるとずいぶん違うのね。
立ったままするのって……何だか落ち着かないな……)
用を終えると、その先をトイレットペーパーで丁寧に拭き、詩織はトイレを出た。
そして重要なことに気がついた。
(私が公君の体でおトイレに行くってことは……)
詩織の顔は真っ赤になっっていった。
(公君も私の体でトイレに行ったりお風呂に入ったりするんだ……)
そのころ……藤崎家。
「詩織……お風呂が沸いたから入るんなら先に入っちゃいなさい」
と詩織の母親が詩織の部屋に向かって呼んでいた。
作品情報
作者名 | ハマムラ |
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タイトル | 転校生 |
サブタイトル | 第2話 |
タグ | ときめきメモリアル, ときめきメモリアル/転校生, 藤崎詩織, 主人公, 他 |
感想投稿数 | 101 |
感想投稿最終日時 | 2019年04月09日 14時12分31秒 |
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