「詩織〜?
何やってるの! 早く起きなさい!」
ベッドで寝ぼけ眼の公は飛び起きた。慌てて鏡を見る。
「戻っていないか……」
鏡に映った姿はやはり詩織のままだった。
「ふぁぁ……ふぁてと……」
あくびをしながら、寝ぼけ眼の公はタンスを開けた。
「何を着ればいいのやら…… … …… ………zzzzzz」
タンスの前に突っ伏してまた眠りに入っていく公だった。
その頃、詩織は悩んでいた。
「これって……病気なのかしら……」
朝起きると……体の様子が変なのだ。もしかしたら病気になったのだろうか?
詩織は真剣に悩んでいた。
そして、受話器を取り上げると短縮の一番を押した。
「ふぁ……主人です」
受話器の向こうからは寝ぼけた様子の自分の声、つまり公の声が聞こえてきた。
「公君、寝ぼけてるの? 主人じゃなくって『藤崎です』でしょ」
「あ、詩織か……元に戻っているか?」
「ううん……公君は?」
「おれもだ……」
「いつになったら戻れるのかしらね……」
「それより何のようだ? こんなに朝早く」
「あのね……病気みたいなの」
「病気? 具合悪いのか?」
公は元の自分の体と詩織の両方を心配した。
「それがね……あの……」
「どうしたんだよ、はっきり言わないとわかんないんだろ」
詩織は覚悟を決めた。
「朝起きたらね……あそこが……」
「あそこってなんだよ?」
公も鈍い奴である。
「だからあそこよ! オチンチン! …………が大きくなってるの……腫れてるの……」
最後の方は消えそうな声で詩織は言った。
「プッ……」
受話器の向こうから吹き出して笑いを堪えている様子が聞こえてくる。
「どうしたの? 公君」
「いや、なんでもない。あのね、それがいわゆる…………」
「なぁに?」
「朝立ちって奴だよ」
「え????」
「放っておくか、トイレに行けば治るよ」
「そ……そうなの??」
「大丈夫だって、病気じゃないよ。健康な男だったら誰でもなるよ。若いうちだけどな」
「わかった、ありがとう。それじゃ」
「ふぁ……俺はもう一眠りするかな……」
「ダメよ、公君……起きないと!」
言いかける詩織を無視して公は受話器を置いた。
「もう! 公くんったら! 遅刻しちゃうわよ!
女の子は準備に時間がかかるのに!」
詩織は慌てて着替えだした。
「公! 早くおきな……って……あら? 珍しい……もう起きてるの?」
「うん、行ってきます」
「あら、ずいぶん早いのね」
「あ、詩織と一緒に行くから……」
そう言って公になってしまった詩織は早朝から家を出た。
「どうせ……公君のことだから……」
自分になってしまった公が気になった詩織は詩織の家のチャイムを鳴らした。
「はい……あら、公君? ……どうしたの?」
「あ、コウ……じゃない……詩織いますか?」
「さっき起きてたみたいだけど……」
「失礼します」
そう言うと詩織は家に飛び込み、詩織の部屋に入っていった。
「公君……起きてる?」
部屋にはいると詩織になった公が着替えもせずパジャマのままでタンスの前に座って寝ていた。
「ほら、公君! 起きて!」
詩織になってる公のほっぺを叩いて起こすとタンスを開けた。
「ちゃんとブラ着けてね。それと……スリップはここにあるから。あ、髪もちゃんとしてない……もうさっさとしてよ!」
ブラジャーをうまく着けられず悪戦苦闘している公人を手助けして着替えさせると後ろからブラシで髪をとかし始めた。
「ふぁ……サンキュ……」
「もう、ちゃんとしなさい!」
「行ってきます!」
元気よく二人は家を出た。
「大丈夫? 公君?」
「ふぁ……多分……」
二人は久々に並んで学校への道を歩いていった。
学校の手前で向こうをみると、やってくるのは早乙女好雄だ。
「お、公に詩織ちゃん……今日は一緒か?」
「おう、好雄か……おはよう」
詩織にそう言われてびっくりしたのは好雄だ。
「詩織ちゃん……どうしたの?」
「あ……いや、詩織ったら……夕べ徹夜してたらしいから……まだ半分寝ぼけてるんだ」
あわてて公になった詩織がフォローする。そして……
「あいててて!」
「詩織ちゃん、どったの?」
突然叫び声を上げた詩織に好雄は怪訝そうだ。
「いや……あ、ううん……なんでもないの」
お尻をさすりながら詩織になった公人は好雄に答えた。
(詩織の奴……思いっきりつねりやがって……「きゃ、エッチ」とでも言ってやろうか……)
「あ、詩織ちゃん……おはよう」
反対側から美樹原愛が現れた。
「あ、メグ……おはよう」
「主人さんに……メグって呼んでもらうなんて……きゃ……恥ずかしい……」
公にメグと呼ばれて愛は顔を真っ赤にしていた。
「もう……公君……メグをからかったりしちゃダメだよ」
「あ、はは……はは……」
詩織になった公にそう言われて……公になった詩織も苦笑いをしていた。
「いったぁーい!!!」
公になった詩織はお尻をさすっていた。
(もう……公君……手加減という物を知らないのかしら……)
「どうしたんですか? 主人さん?」
「あ……いや……別に……」
「どうも今朝から公と詩織ちゃんの様子がおかしいんだよ」
好雄が愛に言う。
「そうなんですか?」
「そ、そんなことないよ……オレはいつもと同じだよ」
「わ、私もよ……メグ」
「へんなの……」
おどおどしながらもクラスの友人をごまかしつつ公と詩織は教室に入った。
チャイムが鳴り、1限目の授業が始まった。
「それじゃ……この証明問題は……主人できるか?」
数学の吉田先生は結構難解な問題を公にやらせようとした。
「わかるところまででいいからな」
「あ、はい」
公になった詩織は前に出ると黒板に証明を書き始めた。
クラスの全員が自分の目を疑った。
「主人……やればできるじゃないか……
凄いぞ。コレは去年の一流大学の入試問題だが……受験者中できたのがわずか8人という難問だったんだがな」
「あ、はい」
しまった、と言う顔もできないので「まぐれ、まぐれ」といいながら公になった詩織は席に戻った。
「主人ができるとは思わなかったから……あ、これは主人に失礼だな。
……それじゃ次の問題を……藤崎……やってみろ。これは簡単だからすぐだな」
「あ、え? わ、私ですか?」
詩織になった公は慌てた。わかるわけがない。
「え……その……あの……」
「どうした? 藤崎?」
「すいません……わかりません」
「どうした藤崎らしくないぞ……」
「すいません……体調が……」
「そうか……大丈夫か? なんなら保健室に行け。
それじゃ……早乙女……やってみろ」
「オレにわかる分けないでしょ!」
好雄の声にクラス中が笑い声に包まれた。笑っていないのは公と詩織だけだった。
「きゃーーーー!!!!! 何考えてるのよ!!!!!」
女の子の悲鳴で詩織は自分が女子トイレに入っていることに気づいた。
「ご……ゴメン……ついうっかりして……」
慌てて飛び出す。
(そうよね……私は今、男の子だったんだ……)
慣れない手つきで男子トイレに入ると、公になった詩織は用を足した。
「どうしたんだ……公。なかなか度胸があるじゃねぇか。女子トイレに突入なんて」
「あ、好雄……」
どうしようか考えてるとトイレの入り口で騒ぎが起こっていた。
「藤崎さん……こっち入って来ちゃダメだよ!」
男子トイレに入ろうとした詩織を男子生徒が制止している。
(あ、公君……ちょっと……気をつけてよ……)
自分が間違えたことなんか棚に上げてる詩織ちゃんでした。
作品情報
作者名 | ハマムラ |
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タイトル | 転校生 |
サブタイトル | 第4話 |
タグ | ときめきメモリアル, ときめきメモリアル/転校生, 藤崎詩織, 主人公, 他 |
感想投稿数 | 100 |
感想投稿最終日時 | 2019年04月09日 16時46分55秒 |
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- [★★★★★★] こんなんで、2人の間に恋愛感情というのは生まれるのかな?裸も見られちゃってるし…
- [★★★★★☆] 面白かったです