昼休み、詩織になった公は「寝坊したのだからしかたないけど……明日から自分で作りなさい」と母親が作ってくれた弁当をバスケ部の友達の鞠川奈津江や十一夜恵と食べていた。

「どうしたの? 詩織、元気ないわね」
「やだ、奈津江ちゃん……そんなことないよ……私は……元気よ」
「詩織ちゃん……あなた……女難の相が出てるわ」
恵は詩織の顔を見ながら言った。
「恵、何言ってるのよ……詩織が女難?」
「あのね……いつもと詩織ちゃんじゃないみたいなの。
 ……なんて言うか……男の人みたいな相が出てるの。
 あ、ゴメンね、詩織ちゃん」
「あ、ううん……気にしないで」
「あ、詩織……幼なじみの彼、向こうにいるわよ」
奈津江に言われて反対側の芝生を見ると、公になった詩織が虹野沙希とお弁当を広げていた。
(やべ……詩織に、オレが虹野さんのお弁当をちょいちょい食べてるのバレちまう……)


「はい、公君……召し上がれ。この間のより美味しくできたと思うんだけど……」
「あ、ありがとう……虹野さん」
詩織は沙希のお弁当を食べ始めた。
(うわ……美味しい……公君……こんなの虹野さんに作ってもらっていたのか……)
「どうしたの? 公君。やっぱり……不味い……?」
「いや、そんなこと……お、美味しいよ……」
「よかった……沢山あるからどんどん食べてね」
詩織は深く考えるのはやめにした。
(公くんったら……ま、いいか……この味覚えておこう……)


キーンコーンカーンコーン
午後の予鈴がなった。午後の授業は水泳である……。

「詩織〜、水泳の用意しないの?」
友人にそう言われて詩織の姿になってしまった公はどうしようか迷った。
(更衣室だよな……女の子が着替えてるんだよな……いいのかな?)
詩織の姿の公がモタモタしてるとその友人が続けた。
「どうしたの、詩織? もしかしてあれだった?」
「あ、ううん、大丈夫よ。今行くわ」
そう答えると公は水着の入ったバッグを持って教室を出た。


更衣室に入ろうとした公と入れ違いに片桐彩子が出てきた。
(あれ? 片桐さんのクラスも……一緒に水泳の授業だよな)
公は詩織の姿で彩子に声をかけた。
「片桐さん……水泳の授業は?」
「ワッチュセイ? 何いってんの、シオリ〜、私はスイミングはいつもエスケイプ! サボリでしょ」
「あ……そ、そうよね……うっかりしていたわ。(何でサボりなんだろう?)」
公が首をひねっている間に、彩子は体育棟を出ていった。
首をひねりながらも公は体育棟の(きらめき高校のプールは体育棟の中にある室内プールです)更衣室に入っていった。
そこでは水泳の授業のためにたくさんの女生徒が水着に着替えていた。
(うわわわわ……天国だ〜)
ぼーっとしている詩織の姿を見た友達が心配そうに言った。
「詩織〜大丈夫? 顔が赤いわよ」
「あ、ううん……なんでもないの」
そう答えると公は着替え始めた。
隣では虹野沙希が着替えていた。
「あ、藤崎さん。今日は遅いのね」
「あ、うん……ちょっと忘れ物して……」
公は適当にごまかしながら着替えを始めた。
「やっぱり……藤崎さん……スタイルいいわ」
横で詩織をまじまじと見ていた沙希がため息をつきながら言った。
「あ……そんなに見られたら……恥ずかしいわ、虹野さん……」
そう言いながら沙希の方を見た。
(ゴクッ……)
制服を脱いで下着だけになっている沙希の姿を見て、公は思わず生唾を飲み込んだ。
(虹野さん……「私……スタイル悪いから……」って言ってたけど……そんなこと無いじゃないか……)
公が見ている前で沙希はブラジャーを外しながら、バッグから紺色のスクール水着を取り出した。
(虹野さん……胸も……結構あるじゃないか……)
「どうしたの藤崎さん? 私の体に何かついてる?」
「あ、ううん……別に……」
怪訝そうにしながらも沙希はショーツも脱いで水着を着始めた。
(うわ……虹野さんの……あそこ……え……いや……)
「きゃっ! 藤崎さん……大丈夫???」
沙希が騒いでいるはずだった。詩織の姿の公は鼻から血を流していた。


一方、公の姿になった詩織も男子更衣室で水着に着替えていた。
(なんだか……落ち着かないわね……胸を隠す物がないって言うのは……)
「おうい、公! 大丈夫か? 今日の水泳の試験?」
「あ、よ、好雄……」
隣で着替えていた好雄が公に声をかけた。
「どうしたんだよ、公。今日はおかしいぞ」
「別に……なんでもないよ」
「変な奴……」
そう言いながら好雄はパンツを脱いだ。
「きゃっ!!」
詩織は思わず両手で顔を覆った。
「公……やっぱりお前……今日はおかしいぞ……」

「では、今日は男女ともに水泳の試験を行う。
 泳ぎ方は自由。目標は各自最低百メートルは泳ぐようにがんばれ。
 泳げない者も50メートルはがんばれ」
教師の説明と共に順番に名前を呼ばれた生徒が泳いでいく。
「次の組………………主人……」
「あ、はい」
呼ばれて公は立ち上がった。
「おい、藤崎は呼んでないぞ。主人……モタモタすんな」
そう言われて詩織は自分が呼ばれていることに気がついた。
「あ、はい」
「主人は……泳げない組だったな。
 途中で無理だと思ったら立ってもいいが、50メートルの所までは立ってでも行け」
教師に言われて公の姿の詩織は他の生徒と共にスタート台に向かった。
ピッ
笛の音と共に全員が飛び込んだ。
「??????」
泳げない筈の公がスイスイと泳いでいる姿を見て全員が立ち上がった。
「どうしたんだ? 公の奴……」
好雄は考え込んでいた。

「次……藤崎詩織……」
詩織の名を呼ばれたので公は立ち上がった。
(やばい……おれ……泳げなかった……)
案の定、公は10メートル地点でブクブクと沈んでいった。
藤崎詩織は水泳が得意……の筈だったのだが……と全員が考え込んでいた。


「やっぱりまずいよな」
たっぷり水を飲んでしまった公は詩織の姿のまま、自分の姿をしている詩織と校舎の裏で話をしていた。
「うん……そうね」
今日一日だけでも校内に「藤崎・主人の様子がおかしい」と言う噂が広がってしまっている。
何とかごまかしてきたのだが……無理が出てきた。
「でも、公くん……楽しんでいない?」
詩織に見つめられて公はギクッとした。
「そ、そんなことないよ……」
「虹野さんのお弁当美味しかったわ」
「あ……いや……うん……」
(ばれてるんだよな……)
公はあきらめの境地だ。
「虹野さんはお料理も美味しいし……私かなわないな」
「そ、そんなことないよ。詩織の方が美味しい!」
公は必死で否定する。
「無理しなくてもいいのよ。虹野さんは綺麗な体でスタイルもいいし」
「そんなことない! 胸は詩織の方が大きい……って……あ!」
詩織の誘導尋問に引っかかってしまった公はうつむいてしまった。
「やっぱり楽しんでいたんじゃない」
「だって……」
悪戯をとがめられた子供ように公はうつむいていた。
「早く元に戻る方法を考えないとね」
詩織は話題を変えた。
「そ、そうだね」
公は話題が変わってほっとした。
「じゃ、行くか」
「あの人の所ね」
二人は科学部の部室へと向かった。

to be continued...

作品情報

作者名 ハマムラ
タイトル転校生
サブタイトル第5話
タグときめきメモリアル, ときめきメモリアル/転校生, 藤崎詩織, 主人公, 他
感想投稿数102
感想投稿最終日時2019年04月09日 23時10分35秒

旧コンテンツでの感想投稿(クリックで開閉します)

評価一覧(クリックで開閉します)

評価得票数(票率)グラフ
6: 素晴らしい。最高!23票(22.55%)
5: かなり良い。好感触!21票(20.59%)
4: 良い方だと思う。21票(20.59%)
3: まぁ、それなりにおもしろかった25票(24.51%)
2: 可もなく不可もなし7票(6.86%)
1: やや不満もあるが……3票(2.94%)
0: 不満だらけ2票(1.96%)
平均評価4.11

要望一覧(クリックで開閉します)

要望得票数(比率)
読みたい!99(97.06%)
この作品の直接の続編0(0.0%)
同じシリーズで次の話0(0.0%)
同じ世界観・原作での別の作品0(0.0%)
この作者の作品なら何でも99(97.06%)
ここで完結すべき0(0.0%)
読む気が起きない0(0.0%)
特に意見無し3(2.94%)
(注) 要望は各投票において「要望無し」あり、「複数要望」ありで入力してもらっているので、合計値は一致しません。

コメント一覧(クリックで開閉します)

  • [★★★★★★] 何か変態度増してますね。公、羨ましいぞ!詩織ちゃん、大丈夫?本当に元に戻った時、2人の関係がどうなるのかな〜〜
  • [★★★★★★] なんとも奇想天外なお話ではあるもののキャラクターのイメージも崩されていないし、ストーリーとしても良かった(^-^)。今度は詩織ちゃんと沙希ちゃんが入れ替わってしまうお話を書いて頂きたいものである。
  • [★★★★★★] 詩織ちゃん萌え~。続きが読みたいです。
  • [★★★★★☆] 続きを早くみたい一日でも早く待ってます(^_^)