筆者 ＫＮＰ の作品一覧 [語り部の館]

「うん……たぶん大丈夫かな？」
未夢(みゆ)は、ほ乳瓶を逆さにして自分の腕に作ったミルクを数滴かけた。
何故、彼女がそのようなことをしているかというと、ミルクの温度を肌で確かめるためだ。
だいたいの温度は人肌ぐらい。以前に買ってきた育児本の内容を思い出しながら、未夢はもう一度、自分の腕にミルクをかけた。
(初掲載：2000年04月28日)

芳彦が香奈と初めてキスを交わした、あの日から４ヵ月が経っていた。
大学とバイトとの板挟みの生活で疲労が蓄積されていくばかりの芳彦。香奈のほうもそんな芳彦のことを思ってか、自然と電話を控えるようになっていた。
思えば、別れたあの日から香奈に逢っていない。いや、最近はろくに声も聞いていなかったのではないだろうか？
香奈に会いたい、その思いだけが芳彦の心の中に膨れ上がっていく‥‥
(初掲載：1999年02月05日)

芳彦がリビングに足を運んでみると、香奈が笹の前で何かしているのを見かけた。
声をかけると香奈はびくりと反応し、なぜか顔を赤らめながら、芳彦に視線を向ける。
ふと、彼の頭に疑問が浮かぶ。短冊は、昨晩織倉家全員で付けたはず‥‥
今さら、一体？ 首を傾げながら、芳彦は香奈に問いかける‥‥
(初掲載：1999年07月07日)

「メリークリスマス！！」


掛け声とともにグラスのカチンという澄み切った音が響き渡る。
今宵はクリスマス。芳彦は織倉家に訪れていた。大学のほうはすでに冬休みに入っており、それでここ、織倉家にいるのだ。
(初掲載：1999年12月26日)

その日、芳彦は珍しく早起きをした。
早起きは三文の得というわけではないが、何かいいことがあるかもしれない。
そう思った芳彦だが、彼を待っていたのは、香奈の突拍子もないセリフだった。
(初掲載：1999年04月11日)

その日の朝食の雰囲気は何とも言えない、張り詰めたもので包まれていた。
芳彦はさっきまで秘めているような、真奈美と弥生の視線に耐えられず、俯いて朝食を取っていた。
「蛇に睨まれた蛙」というのは、こういう感じなのか……と思わずにはいられない。
早起きは三文の得ではなかったのか？　そんな疑問まで湧き起こる。この状況は、どう考えても得しているとは思えない……
(初掲載：1999年06月25日)

始業前の教室は賑やかなものだ。
生徒達は、お互い昨日あった出来事についての話題に花を咲かせている。
テレビで放映されているドラマの展開、発売された雑誌のこと。稀にではあるが、今日の授業についてなど、さまざまな会話が繰り広げられていた。

「おっす！ 杉崎！」

その喧騒溢れている教室に、低く通る声が響いた……
(初掲載：2000年01月01日)

部室にパソコンのキーボードを叩く音が響く。
少女は画面と原稿を交互に見ながら、黙々とパソコンに記事を入力していた。そんな彼女の雰囲気は、どこかやり手のキャリア・ウーマンといった印象を受けさせる。
また、ショートボブという髪型から、彼女が快活な雰囲気を持っていることを感じさせた……
(初掲載：1999年12月04日)

雨。
しとしとと降り続けるそれは、俺に否応無しにあの出来事を思い出させる。
彩花……
俺は教室の窓から見える景色を眺めていた……
(初掲載：2000年07月10日)

ヒビキの乗る蛮型と、メイアの乗るドレッドが融合合体を遂げてから約一日が経とうとしていた。
監房に自室をあてがわれていたヒビキは、ベッドに横たわっていた。
なにすることなく、ただぼうっと天井を見つめるだけのヒビキ。
今、彼はある一人の人物に対して考えを巡らせていた……
(初掲載：2000年10月31日)