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作品一覧
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夏と翼 [Air][2005年10月26日]
原作:Air, キーワード:神尾観鈴, 国崎往人
眼下に広がる蒼。
頭上に広がる蒼。
肺の中一杯に吸い込んだ大気。混じった、焼け付いた匂いも、潮の香りも、全部俺の中にある。
夏はいまここにあった……
(初掲載:2000年09月24日)
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01:伝説に向かって [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
詩織は、ふと思う。
あの樹の事を。
あの時の事を。
今、二人はあの時から伝説にむかって歩いている……
(初掲載:2000年07月10日)
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02:卒業の朝に… [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
春の匂いが風に乗っていた。
桜咲く3月。
高校生活最後の朝。
机の上には、フォトスタンド。
入っている写真は‥‥‥
(初掲載:2000年07月10日)
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03:二人の写真 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
校門を出る時に、二人できらめき高校の校舎を眺めていた。いずれ、切なさを覚え胸を痛めるであろう過去に変わる場所を。
そんな場所と時間には、もう二度と戻れないのを、俺は実感していた。
手に持っている卒業証書が、学校との決別を促しているような気がして少し憎らしくさえ思えた。
(初掲載:2000年07月10日)
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04:眠れぬときは、羊を数えて [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
目をつぶると、ある風景が浮かんでくる。
そこには詩織が居た。
その場所で、初めて俺達はお互いの気持ちを確かめあった。
思い出す度に目を開けてしまう。
それこそが、なかなか寝付けない理由でもあった……
(初掲載:2000年07月10日)
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05:一緒に行こう [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
高校生活もあと残り2ヶ月という、冬休み。
受験対策に追われているのが常だろうけど、高校三年間努力した甲斐あって、それほどあわてる必要はなかった。先生からの太鼓判ももらった。
でも、安心している訳じゃない。俺の心配はもっとよそにあるのだから。
(初掲載:2000年07月10日)
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06:二人の不安 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
大学生活になじんでから、もう半年が経った。
しかし、今でも高校時代が昨日の事のように思える。
朝起きたら、高校の通学路を思い出してしまう事もしばしばあった。
心の中の風景の色は褪せていないのに、なぜか褪せて見えていた……
(初掲載:2000年07月15日)
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07:冬の海と誕生日 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
吐く息が白く変わり、空へと帰っていく12月。
布団の中で、温もりを感じつつぼうっといろいろ事を考えていた。休日の朝、がらにもなく早くに眼が覚めてしまったおかげでたくさんの事を考えることができた。学校の事、勉強の事、遊びの事、趣味の事、体調の事、そして詩織の事‥‥
(初掲載:2000年07月15日)
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08:夏の海と、二つの誕生日プレゼント [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
終業の鐘が鳴り響いたとたん、教室には緊張の糸が切れ、安堵のざわめきが戻ってきていた。
窓の外は、まだ夏の太陽が西に傾いたとはいえ、強い陽射しが照りつけていた。
伝説の樹も、青々とした葉をつけている。
その美しさだけでも、十分に伝説になるような気がした……
(初掲載:2000年07月15日)
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09:昨日と違う夢、昨日と違う何か [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
朝になった。
部屋に充満するゆるやかな陽の光で目をさました俺は、天井をみつめていた。
カーテンにあたる光の強さでわかる。今日はものすごく良い天気だ。
今日は学校へ行く必要はなかった。
高校には二度と通う必要はなかった。
俺は昨日、きらめき高校を卒業したんだ‥‥‥
(初掲載:2000年07月15日)
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10:紐緒香織 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
詩織は結構本気で感心しているようだったが、なんかこの場にいたたまれなくなった俺は、詩織を促して電脳部を出ていった。
紐緒さんが、この時ニヤリと笑っていたのを俺は知らない。
どこから調達したのか、二本の髪の毛を持っていた事を俺は知らない。
知っていたら、あんな問題にはならなかっただろう。
俺と詩織の髪の毛であるという事を‥‥
(初掲載:2000年07月27日)
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11:- 嘘 - [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「あの‥‥‥詩織ちゃん」
「あ、メグ。どうしたの?」
美樹原愛の呼び止めに、藤崎詩織は振り向いた。
詩織は愛の恥ずかしがり屋であることを良く知っている。
その彼女が、自分にすら顔を赤らめながら話しかけてくるとなると、それなりの事があるのだろう……
(初掲載:2000年07月27日)
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12:小さな指輪 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「そういえば、もうそろそろ詩織の誕生日だよね」
きらめき高校卒業から2年。誕生日の事をこちらから言うと、いつも詩織は嬉しそうにほほえむ。
「何がいい?」俺は、初めてそう聞いた。
今までこんなことを聞いたことはなかったが、今年で二十歳になる。特別な節目だから、何か特別なものをプレゼントしたかったのだ……
(初掲載:2000年07月27日)
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13:修学旅行 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
京都。
9月の夜風は、まだ暖かさをとどめ、心地よい古都の息吹を運んでいた。
修学旅行の3日目の夜の事であった。
ロビーのソファに座って、何気なく本を読んでいた俺に、「ねえ‥‥ちょっと庭園歩かない?」と言ってきたのは詩織だった……
(前編より)
(初掲載:2000年07月27日)
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14:おやすみなさい… [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
ピンポーン。
「あ、…。こんばんわぁ」
エプロン姿の詩織が出迎えてくれた。
髪を後ろで束ねて、邪魔にならないようにしているところをみると料理の手伝いをしていたのだろう。
「外は寒かったでしょ‥‥さ、早く入って」
薦めに従って、玄関をくぐる。今日は詩織の家の夕飯に呼ばれているのだ……
(初掲載:2000年08月09日)
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15:詩織をさがして… [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
寒さが段々と強くなる十二月三十日。
高校生活最後の年末を迎えていた。
街の中を、時は駆け足で過ぎて行く。
俺は、そんな時に追われるように、ひとり、部屋の大掃除をしていた……
(初掲載:2000年08月09日)
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16:金魚 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
ニュースでは、今年は猛暑だと告げていた。
言われなくても十分暑い。
午後0時。気温三十度。
うだるような暑さの中、俺は部屋でゴロゴロとしていた……
(初掲載:2000年08月09日)
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17:インターハイに向けて [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「はっ!」
鋭い叫びとともに、コートに黄色い弾丸が跳ね返った。
インターハイが近い十二月の冬休み直前の部活での事であった。
三年最後の大試合だけに、詩織だけでなく、俺達出場候補の部員も気合いが入るという物だ。
俺は青空に向かって球を投げ上げた……
(前編より)
(初掲載:2000年08月29日)
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18:思い出を信じて [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
学校の屋上の金網越しから、俺と詩織は校門を見下ろしていた。
春の手を引いてきた冬の風が、まだひんやりと冷たい。
それでも、日差しだけは確実に春の予感を感じさせていた。
見下ろす街は、春の準備をしているのだろうか……?
(初掲載:2000年08月18日)
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19:貝殻のプレゼント [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
波の音が、心地よく響く。
真っ青な空には雲一つ無いが、水平線の向こうには綿で出来た山の連なりのような入道雲がある。
陽の光は容赦なく照りつけて、肌がチリチリするくらいだ。
砂浜には、色とりどりのビーチパラソルが咲き乱れ、人がその間を流れていた……
(初掲載:2000年08月18日)
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20:借り物競争 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
パン! とスタートの合図がなると同時に、身体が動いた。
体育祭の、借り物競争で、今俺は走っている。
高校最後の体育祭、悔いの無いように体調は万全だ。
俺はすぐに後続を引き離し、封筒の中から折り畳まれた紙を取り出して広げた……
(初掲載:2000年08月23日)
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21:いつかの相合い傘 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
雨が降ってきたのは、仕事の打ち合わせから帰ってくる時だった。
歩いていた俺は、ふと店の軒先で雨宿りをしている女の子を見て、一瞬心臓が跳ね上がる。
「‥‥‥詩織?」
その姿で居る筈が無いだけに、俺は一瞬茫然となってしまった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥紗織?」
雨で霞む先に見えたのは、紗織だった……
(初掲載:2000年08月23日)
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22:風呂上がりのフルーツ牛乳 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
ドアを開けた瞬間、冬の色が濃い秋の空気がすうっと流れ込んできた。
星がきれいに出ている。
夜食をコンビニに買い出しに行くには、十分過ぎる雰囲気だ。
静かな夜の街。昼とは違う世界を歩く楽しさ。
そんな、いつもとは違う時間に踏み込める楽しさがある。
(初掲載:2000年08月23日)
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23:気になるアイツ [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「ねえ、なにしてるの?」
休み時間になって、教室の窓から外を見ていた俺は、呼ばれて振り返った。
「どうしたの? こんなところでボーっとしちゃって」
窓から入ってくる夏の匂いの濃い空気の心地よさのせいだろうか、詩織は柔らかな微笑みを浮かべている。窓から差し込む光が、詩織の夏服の白さを輝かせていた……
(初掲載:2000年08月23日)
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24:知子ちゃんといっしょ [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
冬の空気が、昼になっても冷たさを失わないでいた。
卒業が近い。
───高校最後の冬休み
「あれ? その子は?」
俺が家の門を出た時、小さな女の子の手を引いた詩織とばったり出くわした……
(前編より)
(初掲載:2000年08月29日)
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25:温泉旅行 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「え? なんだって?」
俺はもう一度聞き返した。
「だから、藤崎さんのご家族と一緒に温泉に行く事になったのよ。行くでしょ?」
朝食を食べている時に、母さんがいきなり言ってきた……
(初掲載:2000年09月03日)
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26:また明日‥‥ [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「さよなら・ばいばい・またね」
手を振る時に、そう何度も心の中で繰り返した。
それはまた会うための、内緒のおまじない。
(初掲載:2000年09月03日)
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27:変わらぬもの [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「なんだ‥‥好雄の奴遅いなぁ‥‥‥」
俺は腕時計を見た。
約束の時間をもうとっくに過ぎている。
まあ、別に待つのも、今は全然苦にならない。今は一人で待っている訳でもないし……
(初掲載:2000年09月03日)
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28:土曜日の夜 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
夜というのは、どうにも不思議な時間だという気がしてならない。
昼間とは違う色。違う温度。違う音。
夜はそんな、いつもと違う時間。
空気には、いまだ夏の名残があった。
そんな空気を追い出そうと、カーテンを開けて窓に手をかけた時、詩織の部屋に人影が見えた……
(初掲載:2000年09月30日)
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29:最後のあいさつ [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「おはよう」
門を出ると、いきなりそう声がした。
特別な朝。特別な日。そんな日に、少し早起きできたのは、昨日の夜に詩織と約束したからだった。
三月一日。
俺達がきらめき高校を巣立つ最後の日…………
(初掲載:2000年09月30日)
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30:私のメモリアル [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
わたしはそう思ってない。
思ってないと思っていた。
親しい友達。小さい時からの幼なじみ。
気が付けば近くに居る人……
(初掲載:2000年09月30日)
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31:はい、チーズ [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
この制服姿を見るのは、もう再び無いかもしれない。
手に持っている卒業証書と、胸につけた卒業生の証が嘘のように思える。
ただ、目のあたりに残る、うっすらとした赤みが、あの樹の下であった事を実感させてくれた。
ふと、あの言葉‥‥いまだに信じられない気持ちが、心のどこかに湧きだした……
(初掲載:2000年10月18日)
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32:秋風の小悪魔 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
女の子が俺の横を通りすがったのは分かった。
しかし、別に人の顔をいちいち観察して見て歩いている訳じゃない。
ただ、女の子が通りすがった。それだけしか思わなかった。
「‥‥‥もしかして…君?」
すれ違い様に俺は名前を呼ばれて、ハっとしてそっちを向くと、女の子が立ち止まってずっとこっちを見ていた。
(初掲載:2000年10月18日)
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33:祭りの後に [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「わぁ」
驚きの声が隣であがった。嬉しそうな響きが十分にこもった声だ。
チラリと横目で声の主の目を見ると、瞳に花火がキラキラと映っているのが見える。
その瞳から俺が目を逸らすまで、気づかれるんじゃないかとヒヤヒヤした……
(初掲載:2000年10月18日)
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34:風鈴 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
まるで刺そうとしているかのように照りつける陽の光。
その光に、身体の血がどうにも騒いで仕方がない。
夏。
七月の終わり。
高校最後の夏休み……
(初掲載:2000年10月21日)
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35:嫉妬 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
ある意味で、わかっていた答えが返ってきた。
電話の向こうで、詩織がどんな顔をしているのか、俺にはわからない。
嘘の言葉。いつわりの笑顔。自分でも情けなくなるほどの笑顔。
今度っていつだろう。今度があるのだろうか。今度という言葉は、もしかして無理して使っているんじゃないだろうか……
(初掲載:2000年10月28日)
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36:大人の赤ちゃん [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
玄関のドアを開けても、詩織は出てこなかった。代わりに奥から声がする。
「おい、なにや‥‥」
そこまで言って部屋に顔を出した時、詩織が人指し指を手にあてている。
すぐに納得した。
ベビーベットには、香織が寝ている。紗織は、今詩織のおっぱいを飲んでいる最中だ……
(初掲載:2000年11月23日)
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37:3通の年賀状 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
年が明けてから、三日が過ぎた。
三が日も終わりを迎えたが、まだ世間は正月気分は抜けていないようだ。
今年の正月には、特別な意味は一応あった。
なにしろ、高校最後の正月だ。今年の三月で俺は三年間を過ごしてきたきらめき高校とも別れる事になる年だからだ……
(初掲載:2000年11月23日)
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38:春 〜卒業まであと2日〜 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
詩織と河川敷きの芝生の上。
ゆるやかな春の陽射しに身を任せた詩織を眺めながら……
(初掲載:2000年11月23日)
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39:夏 〜朝顔模様の浴衣〜 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
8月3日
今日は夜になってから詩織と待ち合わせて神社へ行く事になった。
高校最後の夏休み。
玄関のチャイムの音でドアを開けると、詩織がいた……
(初掲載:2000年12月28日)
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40:二人三脚 〜体育祭〜 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
緊張と不安と期待の中で、俺は呼吸を落ち着かせた。
「二人三脚に出場する選手は、昼までに相手選手の名前と一緒に届け出てください」
参加するのは、ペアで五組だけであった。
無作為に選出されたメンバーの中に、俺の名前と詩織の名前が上がっていた……
(初掲載:2000年12月28日)
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41:テレフォンナンバー [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
短縮ダイヤルを使わずに、自分でひとつずつボタンを押した。
些細な用事を、頭のなかで何度も何度も復唱しながら、受話器を耳に当てた。
用もなくかける事はほとんど無かったが、無理に用事らしい用事を作る事でしか電話をかけられない自分が、少しだけ恨めしい……
(初掲載:2000年12月28日)
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42:夕立 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
北の空に、薄暗い雲があるな。
そう思っていたのは五分前の事だった。
夏の蒸し暑い空気の中になんとなく予感みたいな臭いが混ざっているのに、もっと早く気づいておけば良かったのかもしれない。
(初掲載:2001年02月12日)
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43:告白 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
青空を隠すように広がった樹の葉が、小さな風にざわめいている。
その下には俺が居た。
目の前には詩織が居る。
胸には、赤い花。
俺の胸にも赤い花。
第四十五回。きらめき高校卒業生の証。
この学校との‥‥‥別れの証。
(初掲載:2001年02月12日)
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44:詩織と愛 [あの時の詩][2006年10月10日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「‥‥詩織ちゃん?」
「ん? なに?」
愛の声に、詩織は不思議そうな顔をしながら、ベットに座りこんだ。
つい最近導入したコードレス電話のせいで、若干長話が過ぎるのを詩織自身は多少気にはしているものの、どうしても話し込んでしまう。
(初掲載:2001年02月12日)
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45:香織と沙織 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「二人とも、ちょっといらっしゃい」
ブランコに乗っている香織と紗織に声をかけた。
すると、二人ともすぐにブランコを漕ぐのをやめた。
跳ねるようにブランコから降りる香織と、ゆっくりと立ち上がる紗織。
二人の性格、おもしろいほどに反対。だから、わたしも飽きないんだけど。
(初掲載:2001年02月24日)
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46:中央公園 〜芝生の上〜 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「池に落ちそうになった事とかあったよね」
「あ、それ思い出した。俺だ」
「そう、よく覚えてたね」
ニッコリと微笑んだ。俺が覚えていた事が、嬉しいかったのだろうか?
まさか‥‥な。
(初掲載:2001年02月24日)
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47:雨 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
公園は、いつも見るほど明るくは無かった。
遊ぶ子供もいない。
降り注ぐ陽の光もない。
ただ、植えられている木々達が夏を前にして降った雨を、嬉しそうにその身に受けているような気がした。
地面に大きく広がった水たまりには、小さな波紋が絶え間なく出来ては消えている……
(初掲載:2001年02月24日)
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48:6年 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
今までの時間からくらべればたったの四分の一程度だが、そのほとんどの年月を身近で一緒に過ごして来た人が居る事を考えたら、長い短いというより不思議な感じがする。
六年前───
それまでとは違う時間が始まった事は、今も忘れてはいない。
(初掲載:2001年02月24日)
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49:青い空 [あの時の詩][2007年06月17日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「あ、信号変わったわ。わたりましょう」
話をはぐらかすように、詩織はすぐに横断歩道へと歩き出していた。
俺も仕方なくついて行こうとした時、耳にイヤな音が響いてくるのが聞こえた。
首をそっちの方に向けると同時に、俺は自分でも信じられないくらいの反応をした……
(初掲載:2001年02月24日)
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50:天と地の星達 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
刺すように冷たい空気。
澄んだ空気は、氷が水を通り越して、いきなり空気に昇華したかのようだ。
それを一層強調しているのは、夜という世界。
一月。最後の冬休みを飾るには最高の夜かもしれなかった。
なぜなら、今、隣で一緒にベンチに座りながら、
夜空へ消えていく白い息を重ねているのは────
(初掲載:2001年04月02日)
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51:秘密の計画 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
秘密の計画。
これがどれほど楽しいか、どれほどスリルがあるか。
小さい時は、すくなくともそうだった。
それが今も変わっていない事は、不思議としか言い様がない……
(初掲載:2001年06月30日)
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52:白い贈り物 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
十二月二十九日。
高校生活最後の冬休み。
特に感慨深いという事はなかった。
そんな事を毎日思ってもいられないし、思った所で、高校生活が伸びる訳でもない。
ただ‥‥
(初掲載:2001年06月30日)
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53:ミャン助の尻尾 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
街を行けば、聞こえてくるのは、ジングルベル。
目にはいる物は、ショーウィンドウの中の、赤と緑。銀の星(シルバースター)。
感じるのは、クリスマスの影に隠れた年末という名の冷えきった空気。
思いっきり吸い込めば、明日が見えてくるかもしれない……
(初掲載:2001年06月30日)
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54:ふたりの歩み [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
いつの頃からだろう。
俺の身長が伸びた頃からだろうか。
一歩踏み出せば、その歩幅は小さかった頃とは比較にならないくらい前に進んでいく。
速く。速く。速く……
(初掲載:2001年11月04日)
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55:いつかきっと [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「詩織‥‥詩織」
そう呼ぶ声が聞こえてきた。
聞き覚えのある声。懐かしい気持ちになるその声がだんだん強くなってきたとき明るい光がとたんにやってきて、わたしは目を覚ました……
(初掲載:2001年11月04日)
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56:恋の終わり [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
詩織から告げられた想いに応えた日から、どれくらい年月が経っただろう。
どれくらい、一緒の時を過ごしただろうか‥‥
この海に来る度に、そんな事をふと思い出す。
ずっと続いていた恋が、終わったこの場所だからだ‥‥
(初掲載:2001年11月04日)
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57:終わらない事 [あの時の詩][2005年10月01日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
赤い光が、まるで川の流れのように、遠くに見える町の中へ流れ込んでいく。
夜空に足りない星を、必死に補おうとしているような、夜の町の中へ。
逆に、町から向かって来るのは、白い光の川……
(初掲載:2001年11月04日)
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涙はやがて二人を育てる水のように [おジャ魔女どれみ][2005年10月26日]
原作:おジャ魔女どれみ, キーワード:瀬川おんぷ, 春風どれみ, 藤原はづき, 妹尾あいこ
どれみのドジが原因でのささいなケンカをしたどれみとおんぷ。
本当は仲直りしたい二人だったが、どれみがよかれと思ってした事がうまくいかずに、気持がすれ違っていく。
やがておんぷは、どれみの行動に我慢出来ず、つい口を滑らせる……
(初掲載:2001年11月04日)
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Black Moon [Gunparade March][2005年10月26日]
原作:ガンパレードマーチ, キーワード:芝村舞, 速水厚志
幻獣が現れてからというもの、皮肉にも、世界の空気は、文明の絞りカスである排気ガスや汚水からは開放されつつあった。
このままの状態が続けば地球は太古の状態へと戻っていくに違いない。
幻獣が人を滅ぼすのは、人の奢りを粛正する為だという人が居た。
そうだとは思えないけど、そうかもしれないと思う事は、ごくたまにある。
今がそんな時だった……
(初掲載:2000年12月17日)
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ずっと一緒 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
同じ所に住んでいれば、知らなくてもいい事を知る事がある。
まして、それがつい一ヶ月前までは、この世にそんな子が居るなんてさえ思わなかった子ならば、なおさらの事だ‥‥
(初掲載:1998年04月11日)
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石塚美樹 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
美樹ちゃんの態度が、どこか出会った頃に戻っているような気がするのは気のせいではないのかもしれない。
いや、戻ったというより、近づこうとしているのに、近づけない。そんな感じだ。
(初掲載:1998年04月11日)
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わからずや [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
「…さんのわからずや!」
「わからずやはどっちだよ!」
美樹ちゃんの険しい声に負けずに、俺も声をあらげた。にらみ合う瞳。こうなったら違いに後には引けない。
どうしてこんな事になったんだ?‥‥
(初掲載:1998年08月02日)
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一人よりも二人 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
今苦しんでいるのは、もしかしたら僕一人なんじゃないか。
熱っぽい頭のせいだと解っていても、妙な孤独感だけは拭えない。
昨日から引きはじめた風邪は、僕をベットへ縛り付けているようだった‥‥
(初掲載:1999年10月04日)
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男のスタイル [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
最初は、女の子と同居なんていう、夢のようなシチュエーションだと思った。
しかし、それは一瞬も同然の喜びだった‥‥
(初掲載:1998年08月02日)
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お兄ちゃん [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
「お兄ちゃん」
玄関から、そう「僕」を呼ぶ声が聞こえてきた。
僕は慌てて、部屋のドアを開けて玄関を伺うと、見慣れない宅配便会社の配達員の格好をした男と、美樹ちゃんが両方とも僕の方を見て来た‥‥
(初掲載:1998年08月02日)
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破滅のプログラム [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
処分場からの汚水による汚染問題。
それが、今見ているTVで流れている特集番組の内容だった。
僕の部屋のTVの前には、僕の他に、美樹ちゃんが居る。
部屋着のまま、自分の部屋から持参したクッションを抱きしめながらそれを見ていた‥‥
(初掲載:1998年08月02日)
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二人のクリスマス [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
学生の短い休み。冬休み突入まで、もう間もなくという時期。
今年は、暖冬だと騒いでいたが、いざ蓋を開けてみると、そんな噂さえも凍りついてしまうのではないかというくらい、厳しい冬がやってきていた。
(初掲載:1998年11月03日)
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一歩を踏み出す勇気 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
冬休みという短い休みの間だけでも、休み明けにクラスの連中と顔を会わすだけで、久しぶりと感じてしまう。
これが、同じクラスでもこうなのだから、僕と学年が違っていたら、それ以上の存在になるに違いない。
もっとも、一緒に住んででもいれば別かもしれない。
(初掲載:1998年11月03日)
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二人でつくった匂い [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
ドアを開けて玄関に入ると、どこのうちにも必ずある物。
靴。下駄箱。サンダル。そんな当たり前の物より、もっと確実な物。
家の匂いだ。
考えてみれば、二人でこの空気を作ったのかもしれない。一年近くかけて。
(初掲載:1998年11月03日)
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ある雨の日 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
罪を犯した囚人が閉じ込められるのは、鉄の格子ならば、今の僕を閉じ込めているのは、雨という名前の格子だった。
しかし、決して外に出られない訳じゃない。
それでも出る気持ちにならないのは、雨が囲うのは心だからかもしれない‥‥
(初掲載:1998年11月03日)
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赤ん坊 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
もしかしたら、私は気がおかしくなってしまったのかもしれない。
昨日の夜あたりから、そう思うようになった。
私という中で、もう一人の私が、ある事をそっと囁く。私は、それを違和感とは思わない。納得して聞いてる。
そんな感じだった。
(初掲載:1999年01月16日)
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春 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
新しい生活が始まり。そして終わる。しかし、それはまた新しい生活への始まりでもあった。
春‥‥それは、終わりの季節。
春‥‥それは、始まりの季節。
(初掲載:1999年04月01日)
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いつでもいっしょ [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
「…さん。わたしもポッケステ買ってきました」
美樹ちゃんが、学校から帰ってくるなり、僕の部屋に来てそう言った。
僕がポッケステで遊んでいるのを見た美樹ちゃんが、林檎ちゃんもやってるし、面白そうだからどうしてもやりたいと言ってから、まだ丸一日経っていない。
(初掲載:1999年10月12日)
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一緒の証し [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
ずっと一緒。今、美樹の胸の中に居るのが、その言葉だった。
信じられないくらい小さな手合い。自由に動く事もままならない身体。
そんな不自由な身体でも、その身体の中には、ずっと一緒が込められている。
(初掲載:1999年10月04日)
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美樹と僕 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
僕が眠りについてから、どれくらい経っただろう‥‥
僕は女の子に出会った。いつも夢の中で出会う天使の女の子。
目を覚ますと夢での中の事はもとより、夢を見たという事さえも覚えてないのに、夢の中で逢うと、夢の中で話した事も、起きると忘れてしまう事さえも思い出せた。
そんな『彼女』への願い事に、彼女はこう答えた‥‥
(初掲載:1999年10月23日)
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夜 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
美樹は、寝ている少年の傍らにぺたんと座り、呆然としていた。
パジャマ姿の少年には、布団も何もかかっていない。真っ直ぐに寝ているだけだった。しかし、美樹は、そんな少年を見たまま、ハッキリとそれを知っていた。
‥‥もう少年は二度と目を開かないのだと‥‥
(初掲載:1999年10月23日)
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Night on Saturday [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
土曜の夜。
普段なら特別な土曜日という日も、連休の中の一日では幾分霞んでしまうが、それでも十分特別感があった。
学生にとって、土曜日ほど特別な日は無いんじゃないかと僕は思う。
そんな中、時計の秒針だけが動いて、夜を刻んでいた。
時折、紙のめくれる音と、布がこすれ合う音が微かに聞こえてくる‥‥
(初掲載:1999年11月06日)
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歩きだす二人 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
「う……ん」
寝返りを打ったついでに目を開けると、壁掛けの時計と目が合った。昼飯時をとっくに過ぎている。
春休みとは言え、こんな時間まで寝ていたのは始めてかもしれない。
例え休みだろうと、美希ちゃんの「いいかげんに起きてください」と言う声が長く寝かせてくれる事など無かったからだ。
だが……それも今はもう、無い。
(初掲載:1999年11月25日)
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そして… [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
別に、僕は美樹ちゃんと付き合っている訳でもないし、同居だって好きで始めた訳じゃない。
そりゃ、いくらか同じ所に住んでいれば気心だって知れてくるし、良く二人で色んな所へも出かけるようにもなった。
気持ちだって同居したての頃とはまったく違うようになったし、情だって移って来ないと言ったら嘘になる。
そして、お互いの、知らなくてもいい事さえも知る事になっている。
……でも、ただ、それだけだ……
(初掲載:2000年02月17日)
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夏休み。その終わり。 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
ベランダに立って、空を見上げて見た。
雲ひとつ無い青い空が広がっている。
怖いくらいに澄んでいた。
地球がひっくり返ったら、あの空に向かって落ちていくのだろうか。
(初掲載:2000年05月29日)
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X−1=1 [ふたりぼっち][2005年10月11日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:石塚美樹, 青葉林檎
入り口にある自分達の部屋宛のポストの前に立った美樹は、手を伸ばしてポストに伸ばし、途中でやめて胸に引き戻した。
胸に手を当てながら、一度だけ大きく深呼吸。
今度は止める事もなくポストの扉に手をかけた。
こんな事をするようになって、すでに三日が経っていた……
(初掲載:2001年02月12日)
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朝食 [Meal with ...][2005年10月18日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:小野寺桜子, 並木智香, 石塚美樹
「なぁに? あなた正気なの?!」
僕は、そう言われて、思わず固まってしまった。
何かとんでもない事をやらかしている気分になる程の声だったからだ。
(初掲載:1999年09月22日)
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昼食 [Meal with ...][2005年10月18日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:小野寺桜子, 並木智香, 石塚美樹
「今日の昼食、ボクが作ってあげるよ」
土曜の午後、学校から帰った僕を待っていたのは、並木智香のこんな言葉だった。
(初掲載:1999年09月22日)
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夕食 [Meal with ...][2005年10月18日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:小野寺桜子, 並木智香, 石塚美樹
事の始まりは、学校から帰ってきたばかりの美樹ちゃんの何気ない一言だった。
「…さん、今日は外で食べませんか?」
(初掲載:1999年09月22日)
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Q&A [Meal with ...][2005年10月18日]
原作:ずっといっしょ, キーワード:小野寺桜子, 並木智香, 石塚美樹
あなたは誰?
わたしはわたし。
あなたは私?
わたしはわたし。
あなたは・・・・・
わたしは・・・・・
夢の中なら、聞けるかもしれない。
夢の中なら、答えられるかもしれない。
(初掲載:2000年03月13日)
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君がしてくれること。僕が出来ること [Kanon][2005年10月26日]
原作:Kanon, キーワード:川澄舞, 沢渡真琴, 梅宮辰夫
こうも味気ない場所なのか。
人が居ないだけで。光が無いだけで。
舞に付き合うようになってからという物、何度見ても、この光景にだけは馴染めない。
真っ直ぐに伸びる廊下は、どこか果てしない所に続いてる気がする。昼間なら、あの向こうには教室がある筈だ。
今は……
(初掲載:2000年01月18日)
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きっとだよ。約束だからね。一緒に居ようね。ずっとずっと一緒に [Kanon][2005年10月26日]
原作:Kanon, キーワード:川澄舞, 沢渡真琴, 梅宮辰夫
笑っていた。
嬉しそうな笑顔で。
楽しそうな笑顔で。
俺の答えに、何度も何度も答えてくれた。
聞かなくてもいい事だったかもしれない。
でも、名前を呼びたかった。答えを聞きたかった。
(初掲載:2000年01月18日)
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第1話 [たとえばこんな物語][2005年10月26日]
原作:Kanon, キーワード:相沢祐一, 水瀬名雪, 月宮あゆ, 美坂香里
あれは一体なんだったのだろう。
今でも、ふと思う事がある。
夢か幻か。
どちらにしても、もうわからない事だった。
もう会えないのだろうか。
あの季節に。
二度と無いあの季節に。
(初掲載:2000年08月18日)
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予感 〜憧れの入学式〜 [これからの詩][2005年10月02日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「香織、今日は入学式でしょ。早く起きなさい」
ううん‥‥‥あたしを揺するのは誰‥‥むにゃ
「いい加減に‥‥‥しなさいっ!」
包んでいてくれたあったかい物が無くなる感じに目を覚ました。
びっくりして見回すと、かけ布団をもったお母さんが、ちょっとコワイ顔をしてあたしを見ていた……
(初掲載:2000年08月18日)
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出会い 〜彩・ウェイストン〜 [これからの詩][2005年10月02日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
あたしはあこがれの高校の門に立っている。
私立きらめき高校。
桜が風に乗って、あたしの肩にひらりと落ちた。
「きらめき高校‥‥新しい学校‥‥‥」
なにかまぶしく感じられるのは、きっとあたしの気のせいなんかじゃない‥‥
(初掲載:2000年08月18日)
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朝食 〜早起きは三文の徳〜 [これからの詩][2005年10月02日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「ふあぁ‥‥」
大きいあくびが一つ出た。
それでも、まだ頭がはっきりしない。
寝たまま部屋を見ると、カーテンを通った柔らかい日の光でやわらかい色に染まっている。
今日もいい天気みたい。
(初掲載:2000年08月29日)
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運動会 〜徒競走・二人三脚〜 [これからの詩][2005年10月02日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「お母さんお母さん、お弁当何?」
弁当を作っている詩織のエプロンを腰の当たりで引っ張りながら香織が聞いている。
もう片方のエプロンは、紗織が握りながらじっと詩織を見つめている。
体操服姿の二人。
今日は香織たちの学校の体育祭‥‥いや、運動会だった‥‥
(初掲載:2000年10月28日)
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お風呂 〜二人だけの夜〜 [これからの詩][2005年10月02日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
「お姉ちゃん。香織お姉ちゃん」
あたしの部屋のドアを開けるなり、紗織があたしの事を「香織おねえちゃん」と呼んだ時、あたしは「は?」と間の抜けた返事をした。
なにしろ、紗織があたしの事をそう呼ぶのは、何年も聞いていなかったからだ……
(初掲載:2000年10月28日)
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制服 〜ある雨の日〜 [これからの詩][2005年10月02日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
秋雨。それが今降っている雨の名前。
この雨のせいで、せっかくの日曜日が台無しになっていた。
彩と遊びに行く約束だったのに、この雨のせいでパー。
という訳で、今日はずっと家に居る事になった……
(初掲載:2000年11月23日)
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深夜 〜眠れぬ夜のドリンクパーティ〜 [これからの詩][2005年10月02日]
原作:ときめきメモリアル, キーワード:藤崎詩織
ふと夜中に目を覚ました。
目を覚ました時は、別に眠くもなかった。
なぜ眠くないのか、不思議でしょうがない。なんでだろう?
なんか夢を見ていた気がする。
なんの夢だっけ‥‥
(初掲載:2001年11月04日)
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屋上に吹く風は、秋から冬へ。 [Lの季節][2005年10月18日]
原作:Lの季節, キーワード:星原百合, 天羽碧
記憶にある音。
一つ一つの音が繋がると、音楽になる。
どうして、音が繋がると、音楽になるのだろう?
それが、星原百合がピアノの鍵盤を「押す」時に、いつも思う事だった……
(初掲載:1999年11月15日)
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プリンセスシスターズ [プリンセスクラウン][2005年10月02日]
原作:プリンセスクラウン, キーワード:グラドリエル, シドラエル, エリエル, ジェストナイ
「お姉様」
グラドリエルは、辺りを二、三度伺ってから、シドラエルに向かって囁いた。それでも石の壁の城内には良く響いて、思わずグラドリエルは口を抑えた。
呼ばれたシドラエルは、自らも辺りを伺ってから、そそくさと、柱の影に隠れているグラドリエルの元に駆け寄った。足音を殺す事に慣れていないのか、トトっと小さな靴音が響くが、グラドリエルの声ほど大きな物ではなかった。
(初掲載:1999年12月04日)
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エターナルウィンド 〜 digests 〜 [プリンセスクラウン][2005年12月06日]
原作:プリンセスクラウン, キーワード:グラドリエル, シドラエル, エリエル, ジェストナイ
潮を含んだ風が、船の上を吹き抜けた。
空に帰った風は、仲間にこんな事をいうかもしれない。
綺麗に輝く金色の髪を揺らしたと。
誇らしげに。
海の様に碧い瞳に見送られたと。
切なげに。
誰もがそう思える程、少女は美しかった。
(初掲載:2000年02月02日)
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受け継いだもの [プリンセスクラウン][2005年12月06日]
原作:プリンセスクラウン, キーワード:グラドリエル, シドラエル, エリエル, ジェストナイ
ラベンダーのような色をした髪が、窓から入ってきた風にかすかに揺れた。
グラドリエルの知らない母を知る姉達は、その髪を母親譲りだと言う。
グラドリエルは、姉達に、自分の知らない母親の姿を重ねていたのかもしれない。
わたしは、お母様のようになれるだろうか。
そんな事ばかりが、いつもグラドリエルの頭の中にあった。
(初掲載:2000年02月17日)
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海水浴狂詩曲 [プリンセスクラウン][2005年12月06日]
原作:プリンセスクラウン, キーワード:グラドリエル, シドラエル, エリエル, ジェストナイ
「旅に出ます。探さないでください」
綺麗な文字でそう書かれていた手紙を読んだジェストナイの頬に、血管が浮かんだ。
いつぷちっと切れて、血が噴水のように噴出すかわからないほどに。
その文字を読む事なく手紙を握り潰してから、身代わりとして置かれていた人形を脇に抱え、彼はグラドリエルの部屋を後にした。
この後、エリエルとシドラエルの部屋で、それぞれ姉人形と妹人形を発見したジェストナイの身体からは白いもやもやとした物が天に向けて飛び立ちそうだったのだが、かろうじそれをこらえたのは彼の並々ならぬ精神力ならではだったのだろう……
(初掲載:2000年09月24日)
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Power! [プリンセスクラウン][2005年12月06日]
原作:プリンセスクラウン, キーワード:グラドリエル, シドラエル, エリエル, ジェストナイ
耳を立ててみる。何も聞こえない。
雪が、全ての音を吸い取ってしまったからだろうか。
空を見上げて、大きくゆっくりと息を吐く。
白く変わって、すぐに空気に溶け込んでしまう。
さっきまで、ちらちらと雪を降らせていた雲が、ゆっくりと東の空に流れていく。
それでもまだ春は遠い……
(初掲載:2001年11月04日)
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TUWAMONO [プリンセスクラウン][2005年10月02日]
原作:プリンセスクラウン, キーワード:グラドリエル, シドラエル, エリエル, ジェストナイ
コロシアムの観客の鼓動が一つになって、空気を大きく震わせた。
ただ興奮と熱狂の渦だけが支配する。平和であればあるほど、それは増大する。
一年に一度、日常という膨らみすぎた風船の空気を抜く為に必要な場であったのかもしれない。
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プリンセス・ブラジャー [プリンセスクラウン][2005年10月02日]
原作:プリンセスクラウン, キーワード:グラドリエル, シドラエル, エリエル, ジェストナイ
グラドリエルの自室で、エリエルがベットに腰掛けたグラドリエルにずいっと迫った。
その迫力に気圧されて、グラドリエルは思わず腰を引いてしまう。
シドラエルも、グラドリエルに迫った。
勢いこそエリエルには及ばないが、青い炎を思わせる熱さがある。
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みさきR [トゥルーラブストーリー][2005年10月18日]
原作:True Love Story R, キーワード:みさき, のぞみ, 南弥生, 七瀬かすみ, 波多野葵, 瑞木あゆみほか
「だいたいお兄ちゃんはね・・・」
みさきの口癖は決まって、そういう出だしだった。
「わかったわかった」
俺の対応も、みさきの口癖同様、そうやっていなすのが当たり前になるのも仕方無いと言えば仕方無い。
妹なんて、まるで母さんの分身じゃないかと思うくらい、口やかましいと感じる事が何度あっただろう。もっとも、みさきから見れば、一つ上の兄なんて、そこらに居る男よりだらしないと思えるのだろう。むしろ、手のかかる弟のようにさえ思われているかもしれない……
(初掲載:1999年11月25日)
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かすみ [トゥルーラブストーリー][2005年10月18日]
原作:True Love Story R, キーワード:みさき, のぞみ, 南弥生, 七瀬かすみ, 波多野葵, 瑞木あゆみほか
かすみにはいくつかの日課があった。
行ってきますの挨拶。寝る前の読書。三度のご飯や食器洗い。
しかし、大概はもうずっと続けていた事であって、今に始まった事ではなかった。かすみ自身もそれを日課と思う事さえない。
しかし、ある時期から、彼女に日課という事が出来た。
丁度、彼女の幼馴染が、彼女の側から居なくなった時からだろうか。
(初掲載:2000年02月02日)
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瑞木あゆみ [トゥルーラブストーリー][2005年10月18日]
原作:True Love Story R, キーワード:みさき, のぞみ, 南弥生, 七瀬かすみ, 波多野葵, 瑞木あゆみほか
起きてから・・・いや・・・起きる前から、こんなに鼓動が高鳴ったのは、生まれて初めてだった。
小学校の遠足の時や運動会の時、青葉台高校の受験発表の時も、こんな風じゃなかった。唯一近い事といえば、陸上部の大会の時くらいだけど、それでも今日ほどの高鳴りは初めて。
自分で鼓動を数えられるくらい。
……今日、いよいよ今日。
カレンダーの印の日。
(初掲載:2000年03月30日)
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今は眠るあの頃の気持ち [トゥルーラブストーリー][2005年10月18日]
原作:True Love Story R, キーワード:みさき, のぞみ, 南弥生, 七瀬かすみ, 波多野葵, 瑞木あゆみほか
高校生になっても、何も変わっていない。
流れていく雲。
眩しい日差し。
授業と授業の合間の、短い休み時間のひと時。
(初掲載:2001年11月04日)
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神岸あかり [To Heart系のアレ][2005年10月11日]
原作:ToHeart, キーワード:神岸あかり, 保科智子, 来須川綾香, 長岡志保, 藤田浩之
新緑の匂いが、微かにゆるやかな風に乗っていた。
春から夏に移り変わる季節。まだ幼い夏を、母親のように春が包んでいる季節。
そんな季節の夜。
(初掲載:1998年04月28日)
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委員長 [To Heart系のアレ][2005年10月11日]
原作:ToHeart, キーワード:神岸あかり, 保科智子, 来須川綾香, 長岡志保, 藤田浩之
土曜日。
学生にとっては、この曜日は他の曜日と圧倒的に感覚が違う。
月曜日に学校が始まって、そして迎える土曜日。
次の日曜日という、輝かしい日を飾る曜日。
(初掲載:1998年04月28日)
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保科智子 [To Heart系のアレ][2005年10月11日]
原作:ToHeart, キーワード:神岸あかり, 保科智子, 来須川綾香, 長岡志保, 藤田浩之
「委員長」
俺は、すでに呼ばなくなって久しい呼び方で智子を呼んだ。
智子も、唐突にその名前で呼ばれた事に戸惑っているようだ。怪訝な表情をしている。
その表情がさらに不審さに歪むのに、そう時間は掛からなかった‥‥
(初掲載:1999年10月12日)
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綾香 [To Heart系のアレ][2005年10月11日]
原作:ToHeart, キーワード:神岸あかり, 保科智子, 来須川綾香, 長岡志保, 藤田浩之
「ねえ、ここんとこ。凄い痣になっちゃってるわよ?」
綾香が、俺のわき腹の少し上の方を、つんつんと突つきながら言った。
俺のすぐ隣り。布団に隠れるようにして、口元を布団で隠しながらのその攻撃は、指先ながらもかなり効く。
(初掲載:1999年10月12日)
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髪型 [To Heart系のアレ][2005年10月11日]
原作:ToHeart, キーワード:神岸あかり, 保科智子, 来須川綾香, 長岡志保, 藤田浩之
女の子にとって、髪型を大幅に変えるのは一大イベントのひとつ。
本人にしてみたら、別段なんていう事がなくても、周囲がそれを放っておかない。
どうしたの? なんかったの? 良い事悪い事? 似合うじゃん。前の方が良かったよ。なんていう言葉が、イベントを形作っていく。
神岸あかりの場合も、それは例外ではなかった。
お下げを下ろし、少し短く切る。黄色いリボンで、アクセントをつける。
たったそれだけの事でも。
(初掲載:2000年02月27日)
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保科智子 Today1 [To Heart系のアレ][2005年10月11日]
原作:ToHeart, キーワード:神岸あかり, 保科智子, 来須川綾香, 長岡志保, 藤田浩之
「そやなあ・・・・」
保科智子は、視線を下に落として、ストローから口を離した。
ヤクドナルドの二階席、窓際の席からは、夏の日差しが、街を白く染めかねない勢いの光が溢れていた。
外に出れば、思わず眉を寄せてしまう程の熱さが待っているだろう。
ここは、放課後の学生達の避暑地には最適な場所だった。
(初掲載:2000年04月28日)
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保科智子 Today2 [To Heart系のアレ][2005年10月11日]
原作:ToHeart, キーワード:神岸あかり, 保科智子, 来須川綾香, 長岡志保, 藤田浩之
高台に新しく出来た公園に吹く風には、春の匂いがたっぷりと乗っかっていた。
新しい匂いがする。何か物を買って、わくわくしながら梱包を解いた時にする、新製品の匂いを嗅いだ時と同じ気持ちになる。
何かが始まる。始めたくなる。そんな気持ちにさせてくれるような風だった。
日も長くなってきて、放課後に少し寄り道をした最後に辿り着く場所でも、まだ陽は落ちていなかったが、地面に長い影を落としていた。
(初掲載:2000年04月28日)
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繋いだ、手 [ときめきメモリアル2][2005年10月26日]
原作:ときめきメモリアル2, キーワード:陽ノ下光, 麻生華澄
舞い落ちる枯れ葉。
黄色い絨毯。
どこまでも伸びる並木道。
あのずっと先には、冬の入り口があるんじゃないかと思えた。
一人で歩いていたならば・・・だ。
でも、今俺の横には、まだ夏が居た。いや、彼女が居れば、どこでも夏があるのかもしれなかった。
(初掲載:2000年01月01日)
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I needs ... [ときめきメモリアル2][2005年10月26日]
原作:ときめきメモリアル2, キーワード:陽ノ下光, 麻生華澄
「空気」
「わからない」
「じゃあ・・・水」
「うーん・・・・」
「ご飯」
「ますますわからん」
「今のはちょっと遠すぎたね。えっと・・・靴」
俺は首を振った。もちろん横にだ。
(初掲載:2000年01月01日)
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卒業 [ときめきメモリアル2][2005年10月26日]
原作:ときめきメモリアル2, キーワード:陽ノ下光, 麻生華澄
青い空が広がる。
鳥が巣立とうとする時は、こんな空にと思うだろう。
まだ肌寒い風が吹いても、上を向いていられる。
もうじき、新しい季節がやってくる。
そんな匂いがまざっていれば。
(初掲載:2000年01月12日)
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祭りの夜 [ときめきメモリアル2][2005年10月26日]
原作:ときめきメモリアル2, キーワード:陽ノ下光, 麻生華澄
昼間の暑さが嘘のように……と言ったらそれこそ嘘にはなるけれど、昼間あんなに暑かったのになと言えるくらいの風が吹いた。
いつも歩きなれた道が、暗く塗られている。
日常が非日常になる世界。
夜。
ただ、今日の夜はとびきりの非日常だった……
(初掲載:2000年11月23日)